京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2004年6月号 掲載)

パネルディスカッション「いのちの倫理を考える」
〜生殖医療の急速な進歩の中で〜 に参加して

島崎明子   

 ほんとは私、あの日、すご〜く心配して出かけて行ったんです。
 だって、パネラーは大谷医師と彼を弁護する遠藤弁護士、それと佐々木さんの3人。着床前診断推進派2人対反対派1人という、はじめからアンフェアな戦いじゃないですか。そのキャスティングに怒りながらも「大丈夫かな、佐々木さん」って思っていたんです。

 でも、大谷医師も遠藤弁護士も結局、なんにもたいしたこと言わなかったんですよ。
 大谷医師は「卵の段階で選別する方が、胎児となってから中絶するより倫理的」なんて、訳のワカラン理屈を何度も繰り返していました。
 どっちもあかんのや!! 殺す前に、罪の意識を感じながら殺す胎児の中絶と、罪の意識も持たんと選別する着床前診断やったら、罪の意識を感じる分だけ、胎児の中絶の方がまだ、人間的なぐらいやんか!!

 遠藤弁護士は「患者のニーズ」と「自己決定」、こればっかり。これで済むなら、何でも許されるやないか。
 一人は今、世間を騒がせている有名人。も一人はしゃべって勝つことが仕事の弁護士。ほんまにもっとすごいこと言うんかと思っていたのに、色々、いっぱいしゃべらはったけど同じことを繰り返したはっただけ。

 佐々木さんは、自分が沢山の人に支えられてきたこと、ダウン症の元治君があるがままに豊かに生きていることを話した。障害のある胎児や受精卵を排除するより、障害がある子が生まれてきても、不妊の夫婦に対しても「ダイジョウブだよ。ちゃんとやっていけるよ」って言ってあげられるほうが豊かな生き方だとも話した。

 私はパネラー3人が話し終えて休憩に入った時も、まだ、心配していた。
 ところが、全然大丈夫だった。フロア全員、佐々木さんの味方についた。着床前診断推進の2人に一斉に異論をとなえ出した。車イスの人たちが、弁護士さんたちが、お医者さんが・・・。(私はヤジっただけやったけど)

 やったぜ〜〜。佐々木さんを先頭に京都の良心が、2人をむかえ討った。そして、勝った、と思った。

 イラク戦争だ、人質バッシングだ、年金問題だと、世の中がいやな方向へ、いやな方向へと流れていき「あたしらが何言うてもあかんのかなア」って気分にどっぷりとつかりかけてた中で、久々にめちゃめちゃ気持ちのええ日やった。
佐々木さん、カッコよかったよ!


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