京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1997年6月号 掲載)

厚生省へ行ってきました


 4月7日(月)厚生省に行って来ました。厚生省側からは、児童家庭局母子保健課から2名と、障害福祉課から1名で対応され、私達は京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)から佐々木と巽、静岡から河内、広島から石黒、ダウン症協会から神山と名児耶、以上6名の出席と要望書を4通(愛媛・知的障害児の家族と理解者の連絡会、広島・エレジェルフイッシュ、名古屋・大森美佐子、名古屋・重松ひとみ他2名)で話し会いをしました。始めに、この日のために前もって送っていたトライアングルの質問状に対する回答がありました。以下はその質間と回答です。

質間1)
「出生前診断」及び「母体血清によるスクリーニング検査」についての厚生省の見解。
回答)
「出生前診断」に関しては、厚生省としては1993年、一年間で4113件行われたという調査結果を持っている。「母体血清によるスクリーニング検査」については、この検査は自費診療となっているが、効果については有効性が確認されていないと保険適用にならない。

  
質問1)
「母体血清によるスクリーニング検査」について、厚生省の裁量。
回答)
検査については、保険適用の審査の裁量があり、検査が有効と確認できれば認可する。

質開1)
カウンセリング部門の診療としての位置づけについて。
回答)
カウンセリングは重要であると認識している。
児童福祉法、第二章福祉の借置及び保障の第十九条で保健所長は、身体に障害のある児童につき、審査を行い、又は相談に応じ、必要な療育の指導を行わなければならないと定められている。又、その指導料については、〔小児科療養指導料について〕で小児科療養指導料の対象となる疾患は脳性麻卑、先天性心疾患、ネフローゼ症候群、ダウン症等の染色体異常、出生体重1,500g未満の児、川崎病で冠動脈瘤のあるもの及び脂質代謝障害であり、対象となる患者は、12歳未満の入院中の患者以外の患者である、となっていて、保険適用となっている。

質間1)
トライアングルのアンケート結果についての厚生省の見解。
回答)
これだけ数を集めたアンケートを集計したことに感謝している。なかでもP43の質間29)で「母体血清によるスクリーニング検査」を保険適用することに、44%の人が反対しているということを重く受け止めている。

質間1)
障害者福祉について。
回答)
平成7年に打ち出したエンジェルプランや障害者プランにのっとり施行の充実を計っている。

以上の回答に対し、重ねて、質問および要望を行いました。

質問)
質問1)の回答より、厚生省は「出生前診断」について調査を行っているようですが、今「母体血清によるスクリーニング検査」によって「羊水検査」が膨大な数に膨れ上がり、その結果、胎児がダウン症と診断された場合、ほぼ100%の妊婦が中絶をしている事実がある。私たちダウン症児を育てる親は決してダウン症の子どもが生まれなかったら良かったとは思っておらず、子どもとの生活をとても楽しみ、生まれてよかったと思っているにもかかわらず、胎児がダウン症というだけて中絶している事実を非常に危惧している。厚生省として具体的に何が出来るのか。

回答)
最近、この検査についての電話がよくかかってくる。産院で「トリプルマーカーテスト」をすすめられたが、どうしたらよいかという電話には「検査を受けて、どうずるのか、ダウン症とわかったら中絶するのか。ダウン症という理由で中絶すれば、罰せられますよ」と答えている。
基本的には堕胎罪が生きている。母体保護法では「障害」を理由にした中絶は認めていない。

質問)
9000人の妊婦がトリプルマーカーテストを受けて、1300人が陽性と出て、その内1000人が羊水検査を受け、22人の妊婦の胎児がダウン症と診断され、22人全員が中絶しているという事実があるが、誰が、中絶について、きちっと法律に則った中絶であるかを確認しているのか。

回答)
各、県の医師会が審査しているはずだから、今のところ、法に則った中絶(経済的理由及び母体の安全のため)であると認識している。

質間)
私達は、こどもが欲しいと思っているにもかかわらず、胎児を選択していくことを間題にしている。22人全員が経済的理由があったり、母体の安全のための中絶とは考えにくい。「障害」を理由にした中絶は堕胎罪であるということてすね。
回答)
そうです。

質問)
最近、母体保護法に「胎児条項」を導入する話があるが、これは「障害」のある胎児の中絶を合法化するためと私達は理解しており、とんでもないことだと思っている。厚生省はこのことについてはどのように考えているか。
回答)
「胎児条項」については考えていない。国民のコンセンサスが得られなければ、できないと考えている。今はそれが得られていない。但し、国会が決めてしまえば、厚生省としては何もできない。

質間)
それはこまる。私達は、国家が管理するような法律ではなく、胎児の人権も考えた、法律の抜本的な改正を求めている。今までのような、専門家だけでなく、当事者を交えた話し合いをしながら、やってほしい。
回答)
もちろん、国も国民のコンセンサスが得られていないことを簡単にはしないと思う。
 以下は要望として言ったものです。
 私達はダウン症の子どもを大変、可愛いと思っている(繰り返し伝えた)。しかし、出産直後からそう思ったわけではなく、育てていく中でこの子達がどんなにすばらしい感性を持ち、一人の人間として、立派に生きていることを知っていった。これは短期間のカウンセリングで不安を持っている妊婦に伝えることはできないと思っている。その上、この「母体血清によるスクリーニング検査」は「診断」ではなく「確率」という、一般の人には非常に分かりにくい検査結果が出てくる。それゆえにこの検査をマススクリーニングしないように強く要望する。

 また、トライアングルのアンケート結果を見てもわかるように、今もってカウンセリングについても、障害者福祉についても、地域的にかなり差があり、エンジェルプランも障害者プランも十分とは言えない。出産後のカウンセリングは十分とは言えなくてもあるが、出産前のカウンセリングも必要な時期にきている。早急に対策をとって欲しい。「胎児条項」の導入の話についても、「受精卵診断」の話についても、生命倫理の扱われ方についても、国民的コンセンサスを得る討論があまりにもされていないなど間題があると思っている。


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