京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(1999年6月号 掲載)

トライアングルのみなさんへ

伊藤美恵   

 はじめまして、合宿やクリスマス会の音楽療法でお目にかかっています伊藤です。「はじめまして」というのは、実はトライアングルの通信に原稿を書かせていただくのは初めてのように思うからです。(ビックリ!!)

 私は音楽療法の勉強を始めてもうすく15年になります。そのきっかけをつくってくれたのがこのトライアングルなのです。実は15年前、トライアングルが発足した頃に京都で『加賀谷集団音楽療法』(今は『ミュージック・ケア』と呼んでいます)の全国セミナーが開催され、私はなんのことかわからずにちょこっとお手伝いにいきました。

 その後、トライアングルの月例会でこの音楽療法をずっと続けていきたいから・・・と誘っていただいて、その当時一緒に勉強していた仲間とトライアングルのお母さんや子どもたちと毎月音楽療法を続けることになりました。講習を受けるだけでなく、実際に子どもたちと実践をする場所を与えていただいたことが、その後私をこの音楽療法にのめり込ませるきっかけになりました。

 ここ数年は合宿とクリスマス会だけになっていた音楽療法ですが、今年はまた一緒にできる機会を作ってもらってとても喜んでいます。
そして、なんと「⊃うしん」初登場の機会をいただきました。


さて、ここからが本題です。

○ミュージック・ケアってなあんだ?

 最近テレビや新聞などでも音楽療法の話題がとりあげられることが増えてきました。  特に自閉症やお年寄りの実践例が多いようですが、本当は音楽療法にはいろんな方法がありますし、いろんな方たちと実践されています。どこまでがレクリエーションで、どこからが音楽療法なのかと区別がつきにくいところもあります。

 全国的には、4年前に日本音楽療法連盟というのが結成され、3年前から音楽療法士の認定資格を出しはじめていますし、たくさんの講習会や研究会も開かれています。私が実践している方法は、故加賀谷哲朗氏が子どもたちとの40年にわたる実践の中から創りあげてこられたものを引き継いで、実践・研究を続けてこられたものです。今は「ミュージック・ケア」として全国各地で講習会や研究会が行われており、京都の各施設ではこの曲や動きを取り入れているところがたくさんあるので、馴染みのある方が多いのではないかと思います。


○トライアングルではどんなことをするのかな?

 まず、皆と一緒に楽しく参加することから始めます。(これはダウンちゃんは比較的得意ですね)子どもたちに動きを覚えさせたり、訓練をすることを第一の目的にしているのではありません。基本的には動きをまねることが中心なのですが、全部をきっちりできなくても、雰囲気を楽しんで、なんとなく真似ている⊃もり・・・でもOKです。

  1. 小さい子どもたちは、お母さんやお父さんに触れてもらうことから始めます。気持ちの良い体験の中で、リズム感や身体感覚を養い、人への信頼感を育てます。

  2. その次に大切なことは“見る”ことです。「こうしなさい」と教えるのではなく、子どもたちがじっくり見て、自分から動きはじめるのを待ちます。おとなは子どものちょっとした動きを見のがさないようにすることと、子どもたちが思わずまねてみたくなるように、しっかり動いてあげることが大切です。

  3. 大きな人たちには、全身を使って動きながら、みんなで一緒にダイナミックな体験をしてほしいと思っています。音楽に合わせて楽しく動いているうちに集中力、協調性、社会性、自己調整カなどが育つように考えてプログラムを作っています。
     身体全体のことを考え、運動的な要素もたくさん採り入れようと思っています。バランス感覚や体力(筋力・筋持久力・柔軟性)をつけることは、日常生活をより決適にすごし、自分自身の可能性に挑戦する意欲の源となります。

  4. もう一つ大切なことは、つかず離れずの親子関係をつくるためのお母さん、お父さんのトレーニングの場でもあるということです。
     教え込むのではなく、無視するのでもなく、一緒に楽しみながら、大切なことを態度で伝える。そんなことができるお母さん、お父さんになって欲しいと思っています。

 子どもたちは、一人の人間として生を受けました。できること、できないこといろいろあるけど、一人ひとりが自分の人生を自分で考えて、決める権利があります。
 もちろん、保護者が決めるしかないこともありますが、それぞれの能力(これは障害児に限りませんね)をフルに活用して、回りのひとたちと助けあいながら、自分の人生を責任をもって生きて欲しいと私は思っています。

 そのためにも、本人が自分のペースでいろんなことに挑戦するチャンスを保護者がどうつくり、見守っていくのかを考え、トレーニングしておくことが必要になると思います。ミュージック・ケアの時間はおとなにとっても、自分自身のための時間になることと思います。  書きはじめるといっぱい書きたいことが出てくるのですが、又次回に、子どもたちの姿を交えながら書かせていただくことにして、今回は概略のお話だけにします。

 みなさんのご参加をお待ちしています。


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