巽 純子 <「いでんいんふぉめーしょんUP SHOP」の名前の由来> 「いでんいんふぉめーしょんUP SHOP」というのは、なんだか意味不明の名前だなんて思われる方も多いと思います。 最初に日本ダウン症ネットワーク(JDSN)委員会の設立の経緯を簡単に説明して本題に入ろうと思います。JDSNホームページ(http://jdsn.gr.jp)は、ダウン症に関する情報の提供を目的に、 1995年7月にインターネット上に開設されました。さらに、親や兄弟姉妹と各領域のダウン症に関連する専門家(小児科医や療育の専門家、言語療法士や心理指導員、障害児教育者など)が学際的に協カし、1996年12月に日本ダウン症ネットワーク(JDSN)委員会(委員長:武部啓(当時は京都大学医学部教授))を設立しました。現在、JDSN委員会(2000年9月現在のメンバー数:161名)はJDSNホームページの企画、編集を行い、国内の親、親の会、専門家、機関の情報ネットワーク化を行っています。この委員会は、また一般の人々に対してダウン症に関する正確な情報の提供と社会啓発をすることも目的としています。 その1つとして毎年1回日本ダウン症フォーラムを各地で開催しています。フォーラムはどちらかというとダウン症を持つ当事者を前面に出した取り組みですが、さらに多くの人々に、障害を持ってうまれてくることが特別異常なことではないことを生物学的な知識を元に理解してもらおうと言う取り組みが、「いでんいんふぉめーしょんUP SHOP」の展示です。「いでんいんふぉめーしょんUP SHOP」は、主に遺伝や染色体の変化に関する知識の普及と啓発広報を進める情報センターの役割を持っています。 私は、JDSNの活動を通して、はじめてダウン症のお子さんを持った方からダウン症って何?原因は?と聞かれることがよくあります。説明をするたびに染色体や遺伝子について、一般の人がいかに知らないか、また、知らないことによる、偏見や差別があること痛感してきました。そこで、そのような情報を必要としているより多くの人や一般の人々(コンピュータを使える環境にないごく普通の人)にも気軽に情報が手に入る「店」を開設したいと考えました。その発想の元となったのは、イギリスのマンチェスター空港内に人々が気軽に立ち寄れる「ジン・ショップ(gene shop :遺伝子の店という意味)」です。そこでは、遺伝子や遺伝性疾患に関する情報(遺伝学についてのみでなく、その背後にある人権や倫理問題、福祉サービス、遺伝相談できる場の紹介などを含む)を提供する「店」が、EUの出資のもと運営されていました(武部啓JDSN委員長の報告)。近い将来、出生前診断が簡便に精度よく行われたり、個人の遺伝情報が簡単にわかる時代が来ることが想定されています。そうなると、遺伝子による人権侵害、差別が行われないとも限りません。そのような倫理的な問題はすでにダウン症など、出生前診断でわかる染色体の異常の疾患について論議されていますが、なかなか一般の人々には身近な問題とは考えられていません。しかし、実は根本的な問題は同じです。 そこで、ダウン症をはじめとする染色体の変化による障害や遺伝性の疾患について、また一般的に遺伝とは何か、遺伝子とは何か、生命とは何か、遺伝学的な諸問題、だれもが遺伝子の変異を持っている、遺伝をタブー視しないようにPRするための、しかし難しくなく、平易なもので気軽に見てもらえる展示スペースを「店」として開設しました。その名前はダウン症ネットワークの運営する店ではありますが、一般の人々の遺伝に関する意識がUPする期待を込めて「UP SHOP」と名付けました。 <お店での展示内容> お店では、以下のような内容のパネルを用意して、オリジナルキャラクターの「キンメラーちゃん(絵は中2の長女の瑛理がコンピューターグラフィックで描いてくれました、名前は三女の5歳になる晴香がキメラをもじってつけてくれました)に進行役をしてもらっています。 この先、4)から13)までは縦の流れについてのパネルです。 この先、14)から20)までは横の流れのパネルです。 パネル21)から23)まではまとめです。 <過去二回の展示> 第一回:平成12年5月11日(木)?22日(月) 京都市左京区一乗寺「ギャラリー ホーリーランド」 第二回:平成12年8月4日(金)?6日(日) 京都市中京区丸太町七本松京都市生涯学習センターアスニー 第一回は、約100名の見学者、第二回は、約120名の見学者がありました。(なお、これらの展示に関する費用は、三菱財団より福祉研究助成金を受けて行いました。) |