京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2009年10月号 掲載)
初めての小学校運動会

小寺さちこ


 運動会の朝、いつもと違う学校の雰囲気に、泣きながら登校拒否、泣き叫ぶアキトを教室まで連れていき、先生に引っ張ってもらって、逃げるように帰ってきた。

 そして始まった入場行進、皆同じ服でわかりにくいが、きっと目立つだろうし、すぐ見つけられるだろうと思っていると、見つからない。やっぱり教室で泣いているのだろうか…と思いつつ、さがしていると、なんと!ちゃ〜んと一年のプラカードのすぐ後ろ、先頭で行進してる〜!目立たないほど、みんなの中に混じっていることに感動…(笑)

 一年生のダンスが始まる。これも列の中に混じって、踊りながら入場、めちゃくちゃ楽しそうである。時々、隣の女の子がさりげなく目で合図するように、ふたり顔を合わせていて、とてもいい感じ。

 続いて50m走。50mもの距離を、一生懸命走ってるアキトなんて、初めて見た。感動した!!

 そして玉いれ。爆笑した。朝から応援に来てくれていたアキトの保育園の先生たちと仲間たち。ものすごいアキトコールが沸き起こる。スタートの合図が鳴っても、玉を投げない、拾いもしないアキトに、みんなが叫ぶ。「アキト〜!なげろお〜っ!」すると、のっそのっそと動き出し、やっと投げたら、拍手喝采(笑)。そして、また拾わないアキトに、保育園の先生が飛び出していき、玉をアキトの足元に転がす。知らない人には、ものすごい親ばかパパに見られただろうか(笑)。やっと玉を拾ったと思ったら、ゆっくり砂を払っている…。アキトらしくて大笑い。そして、投げるときには「せ〜の〜で〜、よいしょ〜」。そのうち、支援員の先生が、アキトの横に座り、投げるよう指示。先生が横に座ったもんだから、アキトも座り込む。ほっといても大丈夫なのに…とひそかに思っていると、保育園の先生がすかさず「おまえが立てよ〜」とつっこんでいる(笑)。もちろん言われているほうはまさか自分のこととは思わないだろう。応援に盛り上がり、大笑いした玉いれだった。

 最後はチャレンジ走(障害物競争)。見事に完走。踊るように走って、ゴール。ゴールしたらまっすぐ席に戻っている。なんだか、意外に色々ちゃんとしているアキトにおどろいた。

 アキトの他にも、普段は走り回っているのに、大きな音やいつもと違う雰囲気が苦手で動けなくなる子がいる。そうすると、すぐに支援員の先生が手を引っ張って走らせ、ゴールしている。もちろんその子は不機嫌である。手、はなしてよ〜と、本当はいいたいんじゃないだろうか…?どんなに走るのがゆっくりでも、歩いても、もうちょっと手を出すのを待ってあげられたらいいのになあ…と思わずにはいられない。アキトの担任の先生は、アキトを信じてくれていたようで、嬉しかった。ほとんどお友達のさりげない手助けだけだった。きっと何度も練習をさせて、そして本番は見守ってくれていた先生に、感謝の気持ちでいっぱいだった。みんなといっしょに運動会を楽しんでいるアキトを見ることができて感激だった。保育園で一緒だったともだち、いつもお世話になっているガイドヘルパーさんご夫妻、ひびき先生や私の職場の店長、保育園の先生や仲間たち。たくさんの人が応援してくれたことが嬉しかった。
こんなにみんなの心を動かしているアキトって本当スゴイ!!

 アキトっておもしろいなあ…しあわせだなあ…ってしみじみ思った運動会だった。

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