京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2012年10月号 掲載)
新出生前診断について

島嵜明子

 8月29日、新聞各紙がいっせいに「妊婦血液でダウン症診断」と報じました。妊婦の血液を調べるだけで、高い確率でダウン症かどうかが分かる。アメリカで開発・実施されているその検査を、日本でも9月以降、共同臨床研究として、約10施設で、35才以上等、1000人を対象に行なう。費用は約21万円とのことでした。

 私はこの検査がひろまることに反対です。

私たちのほとんどはダウン症をはじめ、染色体異常を持つ子を、知らずに授かりました。
はじめはとまどい、心配しましたが、先輩のお母さんたちに相談し、まわりの人たちに助けてもらって育ててきました。そして今、成長した子どもは、自分らしく、「今」をゆっくり、ていねいに生きています。
子どもと共に生きることでたくさんの人と出会い、何が本当に大切なことなのかを教えられてきた気がします。そして、おだやかな子どもの笑顔にどんなにいやされ、元気をもらってきたか。「この子と共に生きてきて楽しかった」・・・育ててみて初めて、そう思えるのです。生む前には知りませんでした。

 生物の歴史は遺伝と突然変異をくり返しながら、進歩してきました。障がいを持つ子が生まれてくることも自然のことなのです。

 今、日本中が経済の論理を最優先に動いています。原発の再稼働も、TPPも、不妊治療も、出生前診断も、です。「臨床研究」という名目がついてさえ、21万円×1000人=2億1千万円の市場です。

この新しい検査が「もうかる検査」としてひろまることに反対です。
 検査がひろまれば、検査を受けずにダウン症の赤ちゃんを授かったお母さんは、「どうして、ちゃんと検査しなかったのか」と責められるでしょう。「検査することがあたりまえ」そんな社会が豊かな社会だとは思えません。

ダウン症の赤ちゃんが生まれなくなる社会ではなく、ダウン症の赤ちゃんが生まれたら、必要な支援をうけて、みんなの中であたりまえに暮してゆける社会をめざして、これからも活動を続けてゆきたいと思っています。


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