島嵜明子 8月29日、新聞各紙がいっせいに「妊婦血液でダウン症診断」と報じました。妊婦の血液を調べるだけで、高い確率でダウン症かどうかが分かる。アメリカで開発・実施されているその検査を、日本でも9月以降、共同臨床研究として、約10施設で、35才以上等、1000人を対象に行なう。費用は約21万円とのことでした。私はこの検査がひろまることに反対です。 私たちのほとんどはダウン症をはじめ、染色体異常を持つ子を、知らずに授かりました。 はじめはとまどい、心配しましたが、先輩のお母さんたちに相談し、まわりの人たちに助けてもらって育ててきました。そして今、成長した子どもは、自分らしく、「今」をゆっくり、ていねいに生きています。 子どもと共に生きることでたくさんの人と出会い、何が本当に大切なことなのかを教えられてきた気がします。そして、おだやかな子どもの笑顔にどんなにいやされ、元気をもらってきたか。「この子と共に生きてきて楽しかった」・・・育ててみて初めて、そう思えるのです。生む前には知りませんでした。 生物の歴史は遺伝と突然変異をくり返しながら、進歩してきました。障がいを持つ子が生まれてくることも自然のことなのです。 今、日本中が経済の論理を最優先に動いています。原発の再稼働も、TPPも、不妊治療も、出生前診断も、です。「臨床研究」という名目がついてさえ、21万円×1000人=2億1千万円の市場です。 この新しい検査が「もうかる検査」としてひろまることに反対です。 検査がひろまれば、検査を受けずにダウン症の赤ちゃんを授かったお母さんは、「どうして、ちゃんと検査しなかったのか」と責められるでしょう。「検査することがあたりまえ」そんな社会が豊かな社会だとは思えません。 ダウン症の赤ちゃんが生まれなくなる社会ではなく、ダウン症の赤ちゃんが生まれたら、必要な支援をうけて、みんなの中であたりまえに暮してゆける社会をめざして、これからも活動を続けてゆきたいと思っています。 |