京都ダウン症児を育てる親の会(トライアングル)会報


(2016年10月号 掲載)

青年期を考える bQ
 

佐々木和子

 今年のダウン症協会の相談員研修会は相談員の「相談の技術」〜相談を受けるにあたっての心構〜(大正大学心理社会学部臨床心理学科教授、公益財団法人日本ダウン症協会玉井邦夫代表理事)でしたが、その中に「ダウン症の子どもを育てるにあたっての心構え」と共通する内容がありましたので、参考にしてください。 トライアングルでも子どもたちが、青年期、成人期を迎え、様々な問題が起こってきています。問題には必ず原因があることは菅野敦先生も講演で繰り返し述べられています。(9月24日「今一度見つめよう、ダウン症ってどんな障害?」:菅野先生の講演会より。来年3月ごろ、京都で講演予定。)
 
*「こころ」と「ことば」
私たちは、思いや感情などを人に伝えるのに言葉を使いますが、すべてを言葉にすることはできません。こころは複雑で、また、うつろいやすいものです。
でも、とりあえずは言葉という手段は持っています。
その手段が、あまり上手でないダウン症の人たちのことをどれほど理解し、本人の伝えきれていないもどかしい思いをくむ努力がたりなかったかも、と、思い当たりませんか?
 忙しく過ぎていく日常や、思いがけないできごとを、こなしていかなければならない私たちは、気づかないうちに、「子どもに真剣に伝える」ことをしていないのだと思います。ダウン症の子どもが理解できることばを探す、のではなく、「あなたに伝えたい」と思っている気持ちを言葉にして、真剣に言ってみてください。それは、とりもなおさず「あなたを愛している」ということだから。
 
*「認知の地図」という考え方
 認知の地図とは、人が頭の中でイメージしている空間(情報)を地図化したもの。
そのイメージをどんな要素が構成しているか、その要素間の距離、方向を手掛かりに地図化される。同じ空間でも、人によって住む場所や日常の行動、が異なるので、当然、その空間の認知の様子は異なり、結果として、個々人の「認知地図」は異なる。一人ひとりの地図ができあがっていくときには、ある程度共通した「でき方」があり、それが、私たちに「考えなくともわかる」コミュニケーションの基礎を提供している。人間はいつでも自分の地図の上で困る。子どもの地図が理解できなければ、保護者は苦しみ、子どもは不安を募らせ、動けなくなる。
 ダウン症の人たちは「空間と時間をイメージする」ことはとても難しい。でも、社会はほとんど、これで動いています。このギャップをしっかりと頭の真ん中に置き、対応してほしいと思います。
 

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