看護学生のための自然科学入門

〜看護師になるために必要な基礎概念〜

 

目次

はじめに あなたは本当に人体のことを理解していますか? 〜人体の究極の姿〜

1章 物質の姿と成り立ち

(1)すべてのものは太陽系? 〜原子〜

(2)原子、まとめてドン。それが分子。

2章 水溶液の性質

(1)食塩を水に溶かすと“食”と“塩” 〜電離とイオン〜

(2) 〜溶液の性質〜

(3)絶妙のバランス感覚 〜酸と塩基〜

3章 生命の化学

(1)炭素が織り成す世界 〜有機化学入門〜

(2)体は何でできてるの? 〜生体を構成する物質〜

4章 分子から見た生体

(1)ファイト!一発! 〜エネルギー代謝〜

(2)カエルの子はカエル 〜遺伝〜

第5章 医療と放射線

第6章 薬と毒

 

おわりに 科学的な判断力のある看護師に!

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに あなたは本当に人体のことを理解していますか? 

〜人体の究極の姿〜

目標:病気の症状、看護は現象面から人体や生命活動を捉え、それに対応することであるが、自然科学的には人体は化学物質からできており、生命とは化学変化によって維持されているというものであるという概念を築く。

    生命の化学組成

    生命の起源(オパーリン、ミラー、生命の条件)

     生命における化学エネルギー(ATP)

 

○自然科学的に人体を見る

 

○生命の起源

生命の起源は,長く 自然発生説 で説明されていたが,1861年のパストゥールの実験が自然発生説を否定した。それ以後,生命起源論は,科学者の関心を引くテーマになった。

アレニウスは, “生命が宇宙から飛来した” というパンスペルミア説を唱え,オパーリンは, “原始の海のスープの中で生命を作る材料が形成された” と主張した。しかし,これらの起源論はまだ,実験や観察に基づいたものではなかった。

生命起源論を科学的研究にまで高めたのが,1953年のユーレイとミラーの実験だ。彼らは,生命誕生を再現するため,原始大気を水素・メタン・アンモニア・一酸化炭素・二酸化炭素などでつくり,化学反応のエネルギー源として紫外線照射や放電を起こした。そして,実験でできた溶液の中に,生命に不可欠な有機物を多数確認した。彼らの後にも,多くの研究者が似た実験をした。                                                                                                                                                   

 

 

生命は生きている状態を維持するため,外界から物質を取り込んで,エネルギーを獲得したり,必要な化合物を合成したりする。これを代謝という。生物の代謝反応は酵素による反応で,酵素は多くのアミノ酸が結合したたんぱく質である。そして,アミノ酸からたんぱく質を合成するための情報は,遺伝子に記録されている。遺伝子はDNAでできており,RNAを介してたんぱく質が合成される。さらに,生命は細胞からできている。一つひとつの細胞の中に遺伝子があり,代謝がされている。細胞は細胞膜で包まれていて,それは脂質できている。したがって,生命が発生するためには,酵素反応を担うたんぱく質,遺伝情報を記録する核酸 (DANRNA),細胞膜を作る脂質が不可欠である。たんぱく質を作るには,DNAの遺伝情報を元にする必要があるが,DNAを作るには酵素が必要だ。1980年代に,RNAの中に,遺伝情報を記録しかつ酵素として機能するものがあることが発見された。それに基づき, “現在のDNA生命に先立って,RNAが遺伝と代謝を担うRNA生命が存在した” という仮説が提案された。これをRNAワールドという。

1章 物質の姿と成り立ち

(1)すべてのものは太陽系? 〜原子〜

目標:すべての物質は原子からできているということ、原子の姿を電子配置から理解する。

    原子とは?

    原子の構造

     電子配置と周期表

 

○原子

それ以上分割することができない物質の究極の姿

 

 

原子 ⇒ 原子核(陽子+、中性子)、電子−

原子番号 = 陽子の数 = 電子の数

質量数 = 陽子の数 + 中性子の数

電子は原子核のまわりを回っている

価電子(最外殻電子)は元素の化学的性質を決める

 

   

 

 

元素を原子番号順に並べたもの = 周期表

 ⇒似たような性質の元素が周期的に現れる

 

イオン:中性の原子に対して、電子が多かったり、少なかったりするもの

 

<参考>周期律表の発見

 ドミトリー・メンデレーエフ (1834〜1907)

すぐれた理論は、それまで知られていた事実をまとめあげるだけでなくある種の予言を伴うことがある。メンデレーエフの周期律の考えは、まさにその輝かしい例であろう。

 30才を超えたころ、メンデレーエフは「化学原論」という本の執筆のために、当時混乱の状態にあった無機化学をなんとか系統化したいと考えた。そこで彼はあるアイデアを思いついた。当時知られていた63の元素の原子量、原子価、化合物、性質等を各元素一枚づつのカードに書き込むと、研究室の壁にピンでとめ、もっともらしい配列を探し求めたのである。

 彼が最も着目したのは原子量の順番であったが、これに似通った性質の元素は同類とするという考えを合わせ、マトリックス構造をつくっていった。その結果神秘的な7番目周期が現われたのである。ただこの周期表にはおかしなところがあった。一部原子量が逆転しているところや元素が抜けているところがある。しかし彼は自己の仮説にとらわれることなく、自然界に見られる元素の性質に忠実に従って分類することを心掛けた。そしてここに未知の元素が存在すると主張した。

 果たしてその後、ガリウムやゲルマニウムのように次々と予言通りの元素が見つかった。また原子量に代わり原子番号の概念が導入されるに及んで、周期律理論の正しさは確定的なものになっていったのである。

 

(2)原子、まとめてドン。それが分子。

目標:人体は原子ではなく、その結合体である分子で構成されているということ、分子はその相互作用により化学結合しているということを理解する。

    原子のつながり(化学結合)

    分子のつながり(分子間相互作用)

     水とは?(水素結合)

 

○化学結合

原子と原子をつなぐ接着剤 = 電子

接着剤のつき方で3タイプの結合に分類される

@共有結合

Aイオン結合

B金属結合

 

     分子間相互作用 ⇒ 人体は原子ではなく、分子の世界

静電的相互作用

ファンデルワールス力(分子間力)

水素結合 ⇒ 強力な結びつき

○水とは? ⇒ 極性分子

 

 

<参考>原子・分子の量 〜化学計算〜

    アボガドロ数、モル

アボガドロ数個(6.02×1023個)の原子のかたまり = モル(mol

 

 

 

2章 水溶液の性質

(1)食塩を水に溶かすと“食”と“塩” 〜電離とイオン〜

目標:生体物質の溶解と水溶液中での振る舞いについて理解する。

    電離とイオン化

    電解質

 

○電解質

⇒ 「水に溶ける = 電解質」・・・ではない

 

 

(2) 〜溶液の性質〜

目標:溶液の性質、特に細胞膜を通した溶液の振る舞いについて理解する。

    浸透現象

    浸透圧

 

○浸透現象

半透膜を通しての現象

水(溶媒)は濃度の小さい溶液から濃度の大きい溶液へ浸透する

溶けているもの(溶質)によらず、濃度のみで決まる

 

○浸透圧

浸透をおさえる圧力

⇒ ファントホッフの法則

 

<参考>人体と浸透圧

 水につかっている人体は、低張液につかっているきゅうりと同じである。つまり、体内の方が濃度が高いため、皮膚を通して水分が浸入してくる。そのままにしておくと、人体は膨れ上がってしまうので、皮膚表面近くの細胞が膨らんでこれをブロックしてしまう。細胞はおちこちが体組織に固定されているので、凸凹になる。これを私たちが見ていると、皮膚がしわしわになったように見える。長時間プールや風呂に入っていて、指先などがしわしわになるのは、このためである。

 また、死んでしまうとこのような細胞によるブロックは働かない。したがって、水死体は膨れ上がって、いわゆるドザエモン(土佐衛門)になるのである。ちなみに土佐衛門とは江戸時代に活躍した超肥満力士の成瀬川土佐衛門にちなんでいる。

 

(3)絶妙のバランス感覚 〜酸と塩基〜

目標:酸と塩基、pHとはどういうものか、また、それらが生体内で一定に保たれているということを理解する。

    酸と塩基

    水素イオン指数(pH

    中和

    緩衝液(血液)

 

○定義

アレニウスの酸・塩基

ブレンステッドの酸・塩基 ← これが一般的

ルイスの酸・塩基

 

⇒ 酸・・・水素イオンを他に与える物質

  塩基・・・水素イオンを他から受け取る物質

 

○水素イオン濃度

水分子のごく一部は電離している

水に酸を溶かす ⇒ 水素イオンの濃度は大きくなる

水に塩基を溶かす ⇒ 水酸化物イオンの濃度は大きくなる

 

⇒ 酸性:水素イオン濃度>1.0×10-7[mol/l] ⇒ pH7

  中性:水素イオン濃度=1.0×10-7[mol/l] ⇒ pH7

  塩基性:水素イオン濃度<1.0×10-7[mol/l] ⇒ pH7

 

 

○中和

酸 + 塩基 ⇒ 水 + 塩

 

○緩衝液

少量の酸や塩基を加えてもpHがほぼ一定に保たれるような作用のある溶液

血液は炭酸塩による緩衝作用がある緩衝液

⇒ 変化はせいぜい0.05ほど

 ⇒ これを越えるとアシドーシスやアルカローシス

 

<参考>血液型

 

 

3章 生命の化学

(1)炭素が織り成す世界 〜有機化学入門〜

目標:有機化学の基礎を理解する。

    有機化合物とは

    分類法、官能基

    表し方

 

○有機化合物

生物に関連する物質 ⇒ 炭素化合物からなる物質

有機化学 = 炭素の化学

 

 

○分類法

@炭素骨格による

 

 

 

A官能基による

 

○有機化合物の三つの表し方

 

<参考>有機化合物の反応

 

<参考>“有機物”と尿素

 フリードリヒ・ウェーラー(18001882

尿素(NH2CONH2)は人や動物の体内で、主にタンパク質が代謝されるときに生じる物質である。我々の身体を構成するタンパク質の1〜2%が毎日分解されている。そのうちの7580%は、再びタンパク質合成に利用され、残りはエネルギ−等に使用される。このため、成人では一日6070gのタンパク質が必要だといわれている。食事等で体内に取り込まれたタンパク質はアミノ酸やペプチドに分解されて、腸管から吸収される。吸収されたアミノ酸やペプチドは酵素や細胞などの生体に必要なタンパク質に再合成され、体内の組織内で様々な形で利用される。その後、不要となった分は分解されてアンモニアとなる。このアンモニアは生体にとって有毒であるので、主に肝臓で尿素回路2)と呼ばれる経路で尿素に変えられる。こうして生成した尿素は腎臓に運ばれ尿とともに排泄される。成人では一日に約30gの尿素を排出しているといわれている。一般的に筋肉1kgが崩壊すると40gの尿素が生じるとされている。

 このように、尿素は生物体内の生理作用によって生成するものであって、実験室で人工的に合成できないものとされていた。しかし、この考えは、1828年にドイツ人の化学者ウェーラーがシアン酸アンモニウムから尿素を実験室で合成したと発表したことによって、大きく転換されることになった。

ウェーラーは1800年にドイツ・フランクフルトの豊かな校長の家に生まれた。はじめは医学を修めたが、化学に転向し、スウェーデンの偉大な化学者ベルセリウスの研究室で指導を受けた。やがて彼はベルリン工業学校の教師となり、そこでこの歴史的な発見をしたのだった。尿素は本来、動物の体の中ででき、尿と一緒に排泄されるもので、人工的に合成することはできないというのが当時の定説だったのである。

ウェーラーはベルセリウスに宛てた手紙で「私は、人であれ犬であれ、ともかく腎臓を必要とせずに尿素を作ることができました。尿素の人工合成は無機物から有機物を作れるという証拠のひとつになるのではないでしょうか?」と書いている。

ウェーラーの発見によって、有機物と無機物を隔てていた“生物”という壁が取り払われたのである。

 

<参考>尿素配合クリーム

 尿素がなぜ肌の潤いを保つかですが、これは「水素結合」の力によります。尿素は下の図のように6ケ所の水素結合サイトを持っています。また、水の分子はやはり4ケ所のサイトを持っており、両者は水素結合を介してくっつき合い、混じり合うことができます。要するに水と尿素は非常になじみがいいということです。このため皮膚に尿素クリームを塗っておけば尿素がしっかりと水分子をつかまえ、肌の乾燥を防ぐというわけです。

 

 また尿素は皮膚表面の余分な角質を除く働きもあります。角質を作るタンパク質の分子はCO-NHという構造をたくさん持っており、互いに水素結合することでくっつきあっています。ここに尿素を加えるとタンパク同士の水素結合の間に割り込んでその構造を破壊し、溶かしてしまうわけです。つまり尿素は潤いを保つだけでなく、肌をツルツルにする作用も合わせ持っているということになります。また尿素はもともとが生体成分ですので、毒性などの心配がなく安心して使えるというメリットもあります。

 

(2)体は何でできてるの? 〜生体を構成する物質〜

目標:生体を構成している物質を化学的に捉え、理解する。

    アミノ酸・ペプチド・タンパク質

    炭水化物・糖類

    脂質

    核酸

 

     アミノ酸・ペプチド・タンパク質

@アミノ酸

アミノ酸 = アミノ基 + カルボキシル基

タンパク質を構成するアミノ酸はすべてα‐アミノ酸、L

 

 

必須アミノ酸(体内ではつくられず、体外からの摂取が必要なアミノ酸)

スレオニン

フェニルアラニン

ヒスチジン

バリン

トリプトファン

ロイシン 

リジン

イソロイシン

メチオニン

非必須アミノ酸(体内でつくることができるアミノ酸)

アルギニン

アスパラギン酸 

グルタミン

システイン

プロリン

チロシン

グリシン

セリン

アスパラギン

アラニン

グルタミン酸

 

<参考>アミノ式

アクロバット的に、少女がくるくる回ったり、立っている鉄の棒を手でつかみ、サラリーマンが横になったまま順次登っていく姿が写り、そんな「運動しなくとも・・アミノ式」とのアナウンスと共に、商品が映し出されるサントリーのコマーシャルは、どなたも一度は耳や目にしたことがあるのではないでしょうか?

 なにやら赤い文字で「燃焼系 アミノ式」と大きく書かれた飲料の宣伝です。アミノ酸を含んだ飲み物で、脂肪が燃焼するのか、飲んでも太らないと言っているのかは、定かではありませんが、燃焼をイメージした5つのアミノ酸が入っているのだそうです。

 アミノ酸飲料は、キリンビバレッジ「アミノサプリ」、サントリーの「アミノ式」、カルピスの「アミノカルピス」、アサヒ飲料の「チャージ」、森永飲料の「のむアミノヨーグルト」、コカコーラが「ボコ(boco)」と多くのメーカから発売されています。

 メーカによって、入っているアミノ酸が微妙に違います。アルニギン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸などが各商品に含まれていますが、アミノ式にはプロリンという皮膚などを構成するコラーゲンの主成分が含まれているのが違いでしょうか。

 

Aペプチド

アミノ酸同士の脱水縮合=ペプチド結合によってつながっているもの

2個・・・ジペプチド、3個・・・トリペプチド、多数・・・ポリペプチド

 

 

Bタンパク質

アミノ酸 ⇒合体⇒ ペプチド ⇒合体⇒ タンパク質

アミノ酸が50個程度以上合体したペプチド = タンパク質

(ただし、厳密には定義されていない)

分子量は1万〜数100

 

 

 

・タンパク質の立体構造

 

 

 

○炭水化物・糖類

炭水化物 = 糖類

一般式CmH2Onで表されるもの

 

 

 

種類

化合物

加水分解生成物

単糖類

グルコース(ブドウ糖)

フルクトース(果糖)

ガラクトース

加水分解されない

二糖類

スクロース (ショ糖)

マルトース(麦芽糖)

ラクトース(乳糖)

セロビオース

グルコース+フルクトース

グルコース+グルコース

グルコース+ガラクトース

グルコース+グルコース

多糖類

デンプン

セルロース

グリコーゲン

n個のグルコース

 

 

 

○脂質

水にほとんど溶けず、有機溶媒にとける有機化合物

油脂、リン脂質、テルペノイド、ステロイド、プロスタノイド

○核酸

ヌクレオチドが縮重合したもの

RNADNAATP

 

 

4章 分子から見た生体

(1)ファイト!一発! 〜エネルギー代謝〜

目標:あらゆる生物に共通するエネルギー源はATPであるということと、そのATPがどのように供給、消費されるかを理解する。

    ATP

    解糖系

    TCA回路

    電子伝達系

 

 

○代謝

同化・・・エネルギーを生成物中に蓄える

異化・・・有機物に蓄えられていたエネルギーを取り出しATPに移す

 

ATP・・・エネルギーの通貨

化学エネルギー  ⇒  ATP  ⇒  生命活動のエネルギー

(有機物中) (呼吸)

 

ATP + H2O ⇔ ADP + リン酸

 

○異化

外呼吸・・・ガス交換

内呼吸・・・好気呼吸、嫌気呼吸

 

○好気呼吸

@解糖系 → 2ATP

ATCA回路(クエン酸回路) → 2ATP

B電子伝達系 → 2ATP

 

 

(2)カエルの子はカエル 〜遺伝〜

目標:遺伝は染色体中の遺伝子によりつかさどられているということと、遺伝全般の基礎的なことを理解する。

    染色体とは?ゲノムとは?

    遺伝子とは?DNAとは?

    塩基配列とアミノ酸合成

 

○細胞小器官

 

○染色体、ゲノム

 

○遺伝子、DNA

 

 

○塩基の種類

 

 

○アミノ酸の合成

 

 

<参考>微生物と抗生物質

かびや放線菌・細菌によって作られ、他の微生物を抑制し、または制癌作用を持つ物質。ペニシリンが1941年再発見されて以来、ストレプトマイシン・クロロマイセチン・テトラサイクリン・トリコマイシン等多数発見され、医薬以外にも農薬・食品保存薬などとして使用。

   

ペニシリン      ストレプトマイシン  バンコマイシン

第5章 医療と放射線

目標:放射線とはどのようなものか、またそれが与える生体への影響と医療分野での利用について理解する。

    電磁波

    生体への影響

    医療分野での利用

 

○電磁波

 

○生体への影響

 

 

第6章 薬と毒

<参考>薬学の流れ

○天然物医薬品から合成医薬品へ

薬の多くはその起源を植物にもとめることができます.植物から得られる薬物分子は大変複雑な構造を有しているものが多く,医薬品として大量に合成することは至難のわざです.そこで,構造と薬理作用の関係を調べ,薬の効き目を変えることなく構造を単純化した合成医薬品が数多く合成され,試されるようになりました.

 古代インド 印度蛇木(レセルピン)

 古代中国  麻黄(エフェドリン)

 セルチュルナー(1783ー1841) ドイツ薬剤師 モルヒネを阿片から抽出

 ウイザリング(1741ー1799) ジキタリス

 有機化合物の合成 ウェラーによる尿素の合成

 ブラントン 1867年 亜硝酸アミル 狭心症治療薬

 フェナセチン、アンチピリンの発見

 

○化学療法剤の登場

1930年頃になると化学物質を全身的に投与して感染症を治療しようとする化学療法が試みられるようになり,サルファ剤が誕生した.

 エーリッヒ  サルバルサン

 ドマック   プロントジル→サルファ剤 1930年代

 フレミング  ペニシリン→抗生物質 1940年代

        合成抗菌剤の開発

 

○酵素化学の発展

今世紀の中頃になると,生物化学の進歩により生体内における酵素の働きが明らかにされ,酵素機能を利用した薬が開発されるようになった.

 競合拮抗作用、補酵素機能の例証、酵素阻害剤

 1940年代 メトトレキサート(代謝拮抗物質として白血病治療に有効)

 先導化合物  生体機構に基づく理論的なドラッグデザインの登場

 

○バイオテクノロジー技術による医薬品の登場

今世紀後半になると,バイオテクノロジー技術(大量組織培養,遺伝子組み替えなど)の進歩により,生体内に微量しか存在しない生理活性成分が医薬品として生産されるようになった.

ヒトインスリン,ヒト成長ホルモン,エリスロポエチン,コロニー刺激因子などの高分子生理活性物質

 

◎対症療法から原因療法へ

熱が出れば熱を下げるといった対症的な治療から,熱の出る原因を調べ,その原因を除く治療へと変化した.それにより結核などの感染症は制圧されたが,大きな社会的問題が生じてきた?

 寿命が長くなり,高齢化社会が到来し慢性病が増加した.⇒「膨れあがる医療費」

 

 

 

おわりに 科学的な判断力のある看護師に!