“天文“という言葉を聞くとみなさんは一体どのようなことが頭に浮かびますか? 美しい星空、銀河、あるいは巨大な望遠鏡…。人によって思い浮かぶものは違います が、自然の造形や自然科学的なものを連想する人が多いのではないでしょうか。私も 少し前まではそうでした。しかし、少し視点を変えてみると実はもっと大きな広がり があることに気がつきました。今回は私がどのようにしてそんな世界を知るようにな ったのかをご紹介したいと思います。 1.「京都」と「天文」? 〜そもそものきっかけ〜 話は約1年半前にさかのぼります。私たち京都府下の高校地学の教員が集まって、 京都の自然に関するガイドブックを作ろうという話が持ち上がりました。私は専門が 天文学ですから天文に関する部分を書くことになりました。ところが、この本という のは京都の自然を紹介し、その本を持って実際にその場所を訪ねることができるとい うのがポイントだったのです。さて、京都と天文といわれて何を書いたら良いのか…。 最先端の発見や理論を紹介しても京都との関わりという意味ではピントはずれですし ね。少し困ってしまいました。 いろいろ考えたあげく、ありきたりですが、京都といえばやっぱり歴史かなと思い、 京都と天文との歴史的な関わりを取り上げることにしました。そこで、いろいろ調べ てみるとやはりたくさんのことが出てきました。と、同時に非常に興味を持ちました。 なかなかこれらのことをまとめるのに苦労をしましたが、なんとか形にして出版する ことができました。(この本は「新・京都自然紀行」という書名で人文書院から11月 20日に発刊になりました。) しかし、京都にまつわる天文の話題は調べれば調べるほど、後から後から出てきま す。いろいろと面白い話もあり、たくさん書きたかったのですが、紙面の都合もあり、 主なものしか本に集録することができません。編集作業は私を含め二人でやっていた のですが、二人ともかなりフラストレーションがたまりました。「もっと紙面があれ ば…、もっと時間があれば…。」 2.天文をめぐる! 〜研究会立ち上げ〜 どちらから言い出すということもなく、「天文分野だけをまとめて、別の本にしな いか」という話になり、知り合いなどに声をかけて5人の仲間が集まり、今年の5月に は初めての勉強会を開くまでになりました。そこでは、まずは分担しつつ、自らの興 味のあることについて調べてみよう。そして、それを勉強会で発表しながら本にまと めて行こうということになりました。そしてその後は、月に1回ほどのペースで集ま って、勉強を続けていきました。 夏が過ぎ、11月にはイベントを企画しました。それは高校生と一緒に天文ゆかりの 場所を訪ねるというもので、当日は20名を越える高校生と私たち総勢約40名の大集団 で天文めぐりをしてきました。 めぐったところは2ヵ所で、ひとつは江戸時代の天文台の跡地、もうひとつは京都 大学花山天文台です。つまり、東洋と西洋の天文台をめぐるというわけです。この企 画は、高校生と一緒という点が珍しかったようで、地元・京都新聞社による同行取材 を受けました。単なる興味からはじまったことが大きな広がりを持ち、世間一般の注 目にも値するのだなと実感させられました。 3.「京都天文めぐり」 〜今後の活動〜 現在、私たちの仲間は24名になっています。この会では個人的な興味を大切にして いますので、参加者が自分の好きなことを調べて発表、議論しています。ですから、 歴史学のほかに、民俗学、さらにはマンガ本からのアプローチなんかも生まれてきて います。“京都“と”天文“という言葉を軸にしつつ、人と地域と天文の関係を探ろ う、何か面白いものが生みだそう、というワクワクした集まりになってきています。 本当に楽しいですよ。 私たちはこの集まりを通称「京都天文めぐり」と呼んでいます。月1回くらいは勉 強会をもちつつ、イベントやツアーもやっていきたいと考えています。当初の目的だ った本の出版というのはいつになるのかわかりませんが、完成のときにはこのタイト ルの本が書店に並ぶことと思います。 「京都天文めぐり」では情報を集めています。何かおもしろい情報をお持ちでしたら 是非お教え下さい。また、一緒に天文をめぐる仲間も募集しています。 「新・京都自然紀行」の問い合わせも含めてご連絡ください。 連絡は有本淳一(arimoto@mbox.kyoto-inet.or.jp)まで、どうぞ。 〜大阪市立科学館友の会会誌「うちゅう」1月号より〜 トップページへ |