有珠山レポート

2000年4月3日〜5日まで有珠山近辺に行って来ました。 レポート中に出てくる洞爺湖畔は地図のA地点、壮瞥町というのはB地点に相当します。(地図は北海道警の交通規制図より)



4月3日

ドーム

国道は規制がかかっていましたが、道道は走ることができて、洞爺湖畔までいくことができました。洞爺湖畔から有珠山の遠望です。
地理的な説明を入れてみます。

二番目の噴火口は本当に温泉街のすぐ近くです。
有珠山は標高900m弱ですから、写っている噴煙は1500mくらいまで上がっているようです。噴煙の色が白っぽいですが、これは水蒸気爆発の特徴です。噴火口近くを望遠鏡でのぞいてみると岩石や蒸気が吹き上がっているのが良くわかりました。

有珠山の山頂は大有珠付近になります。ですから今回は本当に麓から噴火したということがよくわかります。
この写真をとりながらラジオを聞いていると最初の噴火口のあたりで断層が見つかったそうです。今後このあたりで大規模な爆発、溶岩ドームの形成が考えられます。
もともと有珠山はデーサイトから流紋岩質のマグマです。温度は約1000度弱、粘性の高いマグマです。ですから溶岩流が流れ出ることはありません。大規模な爆発により火砕流が発生する可能性が高いです。火砕流というと雲仙普賢岳が思い浮かびますが、普賢岳の場合は溶岩ドームを作って、それが壊れるときに火砕流が発生していました。有珠山は普賢岳と同程度、あるいはやや粘性が低いマグマなので溶岩ドームが形成されずに大爆発とともに火砕流とサージ(熱風)が発生する可能性があります。
日本には80あまりの活火山がありますが、もっとも危険な火山のひとつです。

二番目の噴火口の拡大です。このように激しく噴煙を吹き上げ、そして、消える。またしばらくすると噴煙を上げるというように活動は以前活発で今後の余談を許さない状況です。



4月4日

今日は水蒸気爆発よりもマグマ水蒸気爆発の回数が増えていました。確実にフェイズは進んでいるように感じられます。午後1時20分ごろの爆発の連続写真です。私のいた洞爺湖対岸まで飛んでくるかと思いましたが、風向きが変わって中島から東方向に流れていきました。

噴火の開始です。まわりにかなりの降灰が見とめられます。

舞い上がった噴煙、火山灰は北東方向に流れてはじめました。

拡大図です。まわりにもかなりの降灰があることがはっきりわかります。

噴出物の本隊はこちらに迫ってきます。

風向きが変わり、洞爺湖に浮かぶ中島方向に向かいます。

中島が火山灰に覆われています。これがこちらに向かって来たらとおもうと怖いです。時間はこの間30分強です。あまり風がなかったのですごく時間がかかっていました。



 4月5日

壮瞥町から見た有珠山です。

中央が有珠山、左手に見える変わった形の山が昭和新山です。そして右手に見える白い煙が噴煙です。噴火口を東の方向から見ていることになります。
昭和新山は大きく分けると二つの部分からできていています。下の部分は台形になっていますが、ここは溶岩ではありません。地下からのマグマの突き上げによって地面が隆起したところです。そして、隆起部の真中あたりからマグマが噴出したというわけです。この噴出したマグマが冷え固まったものが上の赤茶色をした部分です。やはりマグマの粘性は高く、流れにくいため、溶岩流にはならずに溶岩ドームが形成されました。今回の噴火でもこれと同じようなことが西側で起きるかもしれません。

4日夕方から5日未明にかけて火山灰が洞爺村近辺に降りました。ちょうど報道陣がカメラを据えているあたりがたくさん降灰したようです。

ここがTV中継などを行っている地点です。

  

単なる地面が写っているように見えますが、これは全部雪です。前の日までは真っ白だった雪です。降下した火山灰は大した量ではなかったようですが白いところに降ってきたので非常に目立ちます。