■「夢」の幻覚楽園世界■By ラジャ・ライオン

 今回の投稿では、前回の投稿だけでは説明しきれなかった事と、2月満
月号の(※注)佐藤さんの質問について書かせてもらいます。

 佐藤さんは私の体外離脱体験を、「明晰夢」の類ではないかと指摘
しておられますが、実のところ私はもっと簡単に「夢」といっても過言は
ないと思っています。特異な現象である体外離脱を「夢」と言ってしまっ
てはミもフタもないと思う人もいるでしょうが、私の体験からすると紛れ
もなく体外離脱は夢と同質のもので、その違いは単純に眠りの深さによる
のです。

 たとえば、就寝直後の極めて浅い眠りの状態で体外離脱をした時、周り
は幻覚と判別がつかないほど現実の状況がリアルに再現されます。部屋の
様子やそこに置かれた生活用具はもちろん、小物を手に取ることさえでき
ます。佐藤さんを含む多くの体外離脱体験者はこのケースがほとんど
だと思われます。
 ところが、すでに何時間か熟睡した後のレム睡眠時に体外離脱をした時
は、たいていの場合、前回の投稿でヒンシュクを買ったあの幻覚楽園世界
が現れることになります。周りは始めからはっきり幻覚だと分かり、五感
を持ち込めるという以外は「夢」に酷似しています。
 面白さという点では極めつけの幻覚楽園世界も、リアルさという点では
自宅を隅々まで再現する就寝直後の体外離脱時にはおよびません。
 ではこれら二つのケースは別々の現象なのかというとそうではありませ
ん。たとえば就寝直後の体外離脱時のケースでも、自宅やその近辺の状況
はリアルに再現されても、普段あまり行かない場所や自宅から遠く離れた
場所に行くと記憶の再現が不確かになるらしく、周りの情景も曖昧で不鮮
明なものになってきます。
 そして全く知らない場所に来た時、たいていはどこかで見たような情景
が眼前に展開されるのですが、今見ていた情景が、次の瞬間、別のものに
変わってしまうというように、視覚情報は全く安定しなくなります。この
状態になると、明らかにそれが幻覚であると自覚できるし、ある程度幻覚
をコントロールすることもできます。これは幻覚楽園世界にかなり近い状
態といえます。
 ですがこの状態では、まだ完全な幻覚楽園世界とはいえません。
 私もそうでしたが体外離脱を体験すると、その不思議な現象を頭の中で
整理しようとして、半覚醒状態の脳を更に覚醒しようとします。そうする
と幻覚は更にリアルさを増し、現実世界が忠実に再現された幻覚世界が現
れることになります。
 しかし、敢えてここで脳を覚醒しようとはせずに、再び眠りに就くぐら
いの気持ちで、わざと少しだけ深く眠りへと脳を導いてやるのです。そう
すれば熟睡後のレム睡眠時と同様に、幻覚楽園世界に体外離脱することが
できるのです。

 このように体外離脱時の幻覚世界は、眠りの深さによってその姿を変え
る、ということは解っていただけたかと思いますが、これだけでは体外離
脱と夢が同質のものであるという根拠にはなりません。
 では、どうしてこれらが同質のものだと私が言い切ることができるのか
というと、実は、普段睡眠中なにげなく見るあの「夢」からも幻覚楽園世
界に行くことができるからです。
 普通、夢の中では自由に行動することはできませんが、「これは夢だ」
と自覚した瞬間から、夢の中の私の五感は身体の隅々にまで行きわたり、
その世界で自由に行動ができるようになります。そしてたった今まで夢だ
ったその世界は、幻覚楽園世界へと変貌を遂げるのです。
 こうして夢から入った幻覚楽園世界では、通常の体外離脱時とは決定的
に違う大きな楽しみがあります。
 それは、夢の中で演じていた役割とストーリーを、幻覚楽園世界でも引
き継ぐことができるということです。前回の投稿で、幻覚楽園世界では性
転換も可能だと書きましたが、それはこのように夢から入ったケースに限
られます。
 通常の体外離脱で入った幻覚楽園世界でも、とれる行動の自由度という
点では全く同じですが、さすがに性転換をしたり、子供になったりという
ように、自分のキャラクター設定まで変えることはできません。私が性転
換したケースも、意図せず夢の中で女性になっていたからこそ、幻覚楽園
世界にその設定を引き継ぐことができたのです。

 これで、体外離脱と「夢」が同質である、という私の主張も理解しても
らえたかと思いますが、だからといって、夢を自覚すれば誰でも幻覚楽園
世界へ行けるわけでもありません。
 大きな問題の一つに、通常、夢を自覚した段階で、目が覚めてしまうと
いうことが挙げられます。
 では私はどうしているのかというと、夢を自覚した段階で、現実の身体
を自分の意志で金縛り状態にしてしまうのです。このテクニックは意志と
肉体を微妙にコントロールするものなので、とても文章で表現することは
できませんが、前回の投稿に書いたような何百回という金縛り体験が基本
になっています。
 後は幻覚楽園世界で好きなように楽しんでいればいいだけですが、やは
りいつまでもこの世界に居られるわけではありません。
 これはすべての幻覚世界に共通して言えることですが、偶然でも自分の
意志でも、金縛り状態になっている現実の身体を放っておくと、身体が寝
返りをうちたがって幻覚世界の私を呼ぶのです。
 普通、体重のかかっている個所の血行不良を防ぐため、健康な人なら睡
眠中に何度か寝返りをうちますが、体外離脱中も例外ではなく、本来は寝
返りをうつべき時にうてない現実の身体の苦痛が、幻覚世界の私にも伝わ
ってくるのです。
 こうなると、いくら幻覚世界にもっと居たいと思っても、苦痛を感じて
いる現実の身体の五感が徐々に復活するのと反対に、幻覚世界の身体の五
感はどんどん薄れてついには消えてしまいます。この間の、現実と幻覚世
界に二つの身体の五感が同時に存在し互いに主張しあう感覚は、とても言
葉にできないほど奇妙なものです。
 それから、幻覚世界で五感に執着しすぎるのも現実世界に戻される要因
となります。
 五感すべてに言えるのですが、幻覚世界で一つの感覚に意識を集中し過
ぎると、現実の身体の方がその意識に答えてしまい、幻覚世界の感覚をか
き消してしまうことがあるからです。私の場合、舌や手の指先など敏感な
感覚にその傾向が顕著に表れます。
 たとえば、ブラウスを引き裂いたり、ショーツを引きちぎったりする感
触ぐらいは問題なく再現できても、美少女の***を指で執拗に撫で回す
というような緻密さが要求される行為では、現実の身体の指の感覚が呼び
覚まされてしまい、そのまま行為を続行すれば現実世界へと戻されてしま
います。特に***を舌で嘗め回すという私の最も好きな行為が、3秒も
すれば現実世界の身体を呼び覚ましてしまうのは残念至極です。
 今のところこの現象を回避する術は無く、現実世界の感覚が呼び起こさ
れる度に行為を中断し、使用中の感覚を数秒間ニュートラルな状態にして、
感覚が完全に幻覚世界の身体に戻るのを待つほかありません。しかし、な
ぜか我が息子はこの現象の影響をほとんど受けないので、結局、幻覚楽園
世界では彼に頼りっぱなしとなります。

 これで今回の投稿は終わりです。前回の投稿と合わせて、ほぼ私の体外
離脱体験は語り尽くせたと思います。
 それでも体外離脱は「夢」だという私の主張に納得がいかない方もおら
れるでしょうが、怖い夢を見て激しい動悸と発汗と息苦しさで眼が覚めた、
という経験が誰しもあるように、「夢」というのはそれだけで結構リアル
なものです。その「夢」に五感が伴った世界がどんなにリアルなものなの
かは、やはりそれは体験しなければ解らないでしょう。
 できればこの素晴らしい体験を皆さんと分かち合えればいいのですが、
今のところ誰もが100%体外離脱できる方法はありません。私ですら体
外離脱しやすい体質というだけで、ほとんど運まかせなのです。
 現在、睡眠の取り方などを工夫して40%ぐらいの確率で体外離脱でき
るようになりました。もしこの確率が100%になった時、そのノウハウ
をまたこの誌上でお伝えしたいです。

 最後に・・・「理性を働かせた時には、視覚をはじめとする感触が薄ら
いでくるのですが、ラジャ・ライオンさんの場合はどうですか?」という
2月満月号の佐藤さんの質問についてですが、情欲のまま行動
したとき感覚が薄らぐ私とではえらい違いです。ですが、佐藤さんも
理性を働かすぐらいですから、おそらく同時に視覚などの五感も強く働か
せていたと推測されます。そのため現実の身体に戻されかかっていたと私
は考えるのですが、如何でしょう・・・・?
 それから・・・佐藤さんはご自分の体外離脱体験に、まだ幻覚だと
いう確信が持てないようですが、現実世界に体験の足跡を残す実験をして
みてはどうでしょう。手っ取り早い方法は、体外離脱中に親兄弟や友人な
どに会うことです。
 私も体外離脱中に何度も友人宅に押しかけ、その都度すぐに電話で確認
を取りましたが、いつも真夜中に叩き起こされた不機嫌極まりない友人の
声しか返ってきませんでした。あれほど来訪を喜んでくれた友人も、やは
り幻覚だったのです。
 こうして私は体外離脱体験が幻覚だと悟りましたが、佐藤さんも早
く幻覚だと悟ることをお勧めします。幻覚世界は恐怖や弱気にも敏感に反
応すると前回の投稿でも書きましたが、幻覚と自覚しないまま不安な気持
ちでいると、それこそ本当に「穴から恐ろしい何かが飛び出してきて、私
を穴の中に永遠に引きずり込んでしまう」という事態にもなりかねません。
そうなると幻覚といえども大変な恐怖を味わうことは必至です。
 幻覚だと自覚することで楽しい気分になれば、きっと「肉の穴」も消え
ることでしょう。

(※注)プライバシー保護のため、名前は変えてあります。

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