うんこ君
きもとけいし
「君はうんこなんだよ」
「うんこ?」
「人糞、つまり人間の野糞だ」
「そういう君もうんこだろ」
「僕は犬の糞だ」
これは人間のうんこと犬のうんこの会話です。
人間のうんこはまだこの世に出たばかりでした。
犬のうんこは干からびており、人間のうんこより年がいっているようです。
犬のうんこは人間のうんこに言いました。 「この世界ではね、僕たちうんこは嫌われ者なんだよ。僕たちうんこは非衛生的だそうだ。どこの世界に言っても嫌われる。臭い、汚い、不潔だってね。そして最後には処分される運命なんだよ」
「処分って?」
「それは僕も知らない」
人間のうんこはそれを聞いて恐怖感を感じました。
「僕たちうんこを処理する施設が人間たちの手によって経営されていると言う事だ」
「人間が僕たちうんこを処分するのですか」 人間のうんこは少し考えました
「僕は人間のうんこだからだいじょうぶかもしれない」
犬のうんこの表情に怒りが走りました。
「うんこに人間も犬も関係ないっ」
人間のうんこは戦慄しました。
脅えながら言いました。
「誰がそんな恐ろしいことを決めたのですか」
「決まっているじゃないか。人間だよ」
「人間が、ですか」
「人間は彼らにとって、気持ち悪いもの、汚いもの怖いものをその力で持って、この世から無くそうとするんだよ。人間は自分勝手だ。人間たちは自分さえ良ければいいという存在だ。とても怖い存在だ」
話を聞いて人間のうんこは落ち込みました。 すっかりしょげてしまいました。
「でも安心しなよ」
「え」
「僕の姿をみろよ」
人間のうんこは犬のうんこを見ました
「あちこち乾燥してひび割れているだろ。ぼくはもう寿命なんだ。僕たちうんこはこの世での活動時間がとてつもなく短いのさ。それれだけが救いだよ」
そう話し終えると犬のうんこは黙ってしまいました。
黙っている時間が余りにも長いので人間のうんこは犬のうんこに話そうとしましたが様子が変なのに気がつきました。
その時、犬のうんこはぼろぼろとその形が崩れていきました。
人間のうんこはその場から離れました。
空を見上げると夕焼け空でした。
「これから暗くなる・・・」
人間のうんこは後ろを振り返らず歩き始めました。
おわり
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