シエスタ

  

 

                        vol.2 1998.10.31

     発行 つかさき医院  京都市北区小山元町22-1プルジュール北山1F

                   (TEL)495-2346 (FAX)495-2356

                   (e-mail アドレス) bankyu@mbox.kyoto-inet.or.jp

              (ホームページアドレス)http://web.kyoto-inet.or.jp/people/bankyu/

 

 

 朝晩のひやっとした空気、どこか寂しい夕焼けに秋の深まりを感じます。秋が一番好きな季節という方は多いようですが、みなさまはいかがでしょうか。

 開院して半年が過ぎました。まだまだ慣れないこと、戸惑うこともありますが、ようやくすこし周りが見渡せる余裕が出てきたような気がします。

 さて、2号目となります今回の通信は、元つくしハウス(上京区精神障害者共同作業所)スタッフ、現在北海道在住の加藤春樹さんの“エンパワーメント”に関するエッセイ、そして元youyou館(北区精神障害者共同作業所)スタッフで、東京在住の関口由紀さんのエッセイとともにお送りいたします。

 

 

    お茶の間の感覚

                         

                        院長 

                        塚崎直樹

 

 開業して、地域で診察をするようになってから、しばらくは散髪の後のように、なんだか涼しい感じがしていた。風通しがよいというのか、頼りないというのか。むき出しの場所にいる感じがしていた。精神病院で外来面接をしていると、どうしても入院病棟の存在に影響されてしまって、その重みが面接の姿勢に出ていたようなのだ。知らない間に、面接の基礎に「入院する必要があるか否か」という発想が出てしまって、そのことが、面接のありようを規定していた。そして、同時に面接の重しにもなっていたのだろう。病棟の存在という重しが取れて、面接の場が浮遊していくような感じがして、スカスカするような、あてのないような感じになったのだろうと思った。そもそも精神病院を退職して、最初に感じたことは、毎朝、病棟の鍵をジャラジャラいわせてポケットに入れるという習慣から解放されて、思わず心が軽くなったことだった。それは実にさわやかな感じだった。

 

 精神科病院での外来が、病棟付属の外来であり、病棟の出入り口の受付的なものだとすると、診療所の外来は、受付だけが往来にあるような感じとなる。門から入って玄関を開けたら、そこは直接往来だという感じだ。それが頼りないと言えば頼りなかったのだが、デイケアを開くようになって、また違った感じが私の中に出てきた。

 病院というのは、一つの機構、組織体であって、機械装置のようなものでもある。そこでの出来事には、一つの処理、処置という感覚が伴ってしまう。つまりある種の冷たさ硬さがある。ところが診療所は言ってみれば、一つの家、家庭のようなものである。だから単なる処理や処置では終わらない、あいまいな含みを伴ってしまう。受付、待合室は玄関のようなもので、診察室は応接間、客間である。デイケアはお茶の間、居間のようなものである。応接室での話は形式を尊重したものになるけれど、お茶の間に入ると形にとらわれない雑談が話の中心になる。次はお茶の間で話そうと思って、応接室で話すのと、そうでない場合とでは話のしかたが変わるのだ。そこに出てくるあいまいな含みは、一種の日常性の感覚である。診察室だけの面接では、診察室での話で一つの決着をつけないといけない。しかし、実際にはなかなかそういかないこともある。患者さん自身が気持ちを整理しきれずに尾を引いて、待合室にすわりこんだり、そこで他の患者さんと話し込んでしまったりする。そういうことに治療的な意味のある場合もあるが、どうしてもまとまりきれなかったという感じを伴うことも多い。しか し、デイケアがあると、診察というものは、ある種の形式をもった話し合いの一つにすぎないのだという感覚が自然に双方に生じて、診察場面での話し合いにすべてを求めようとはしなくなる。それは治療者にとっても患者にとっても、肩の荷が軽くなることだと思う。特に統合失調症の人には、そう言えるのではないだろうか。

 

 このごろ感じていることは、診療所には診察室が一つだけ独立してあるのではなく、隠し部屋とか「ふくろ」とかがついているということだ。そういう感覚に気づいてから、あのスースーした風通しのよい感覚が私の中では随分と減ってしまった。その代わりに、デイケアで患者さんと話している時に感ずるお茶の間感覚の存在に心が動いている。このお茶の間感覚をうまく育てて、治療的に生かしていくことが、デイケアを併設した診療所外来の役割なのかも知れないと、最近は感ずるようになっている。

 

 

  つかさき医院では毎月第一水曜日に勉強会を行うことになりました。

 第一回目は9月9日。youyou館のスタッフである関口知佐さんをお招きして

 「地域であたりまえに暮らすということ」をテーマに、お話ししていただきました。

  

  

 こころを病み入院している人が35万人、そのうちの3分の1が社会的入院といわれている。つまり、社会的受け皿があるならば、あるいは、ちょっと支える人がそばにいるならば、10万人が地域であたりまえに暮らせるということになる。

 京都市でもそうした人たちを支える精神障害者の作業所がここ3〜4年増えてきた(現在12ヶ所)。YOUYOU館もその一つ。

 

 はじめは、「こころの病いとは何だろう?」と言う疑問があったが、スタッフになって3年4ヶ月、メンバーの人たちのしんどいところ、困っていることが体験的にようやく分かるようになってきた。まだまだこの病気に対する社会的偏見が強いわけだが、私は「しんどさの違いがあっても、まず人として同じ」というスタンスが大切、と思っている。

 精神病と呼ばれるのは好ましいことではないという人は多い。だから、最近は『精神病を体験した人』という表現をする人もでてきた。なかでも分裂病は100人に1人発病するといわれている。特別な人がなるというより、強いストレスがあれば、誰もがなる可能性のある病気ではないだろうか。

 

 作業所の日常をとうして気づいたことがある。これまで同じ立場の人と、患者としてではなくまず人として出会い、そして語り合う場がなかったということである。だからこそ、メンバーにとって作業所は、「自分を取り戻す大事な場」でもある。YOUYOU館では作業の他に音楽活動を始めて3年、この活動がインパクトになり徐々にメンバーが変わってきた。音楽表現が生活の幅を広げ、自信につながり、次のステップへ発展した。他の作業所との交流、ボランティアの協力、コンサートの企画、旅行、上賀茂神社のやすらい祭り参加など、無理しないうちに、自然に、他者との交流やネットワークが広がていった。

 

 それから、「当事者」と言うことで思うのだが、問題を抱えている人が当事者という発想もできるのではないか。つまり、家族もまた当事者でもある。家族も同じ立場の者どうし話せる場が必要である。YOUYOU館では昨年4月より家族会もできた。なんでも「本音で話せる場」と言うのを大事にしている。本音で話すことで、「笑い」がでてき、「信頼感」「安心感」がうまれてくる。メンバーにとっては家族もひとつの環境なのだから、家族が変わることはとても大切なことである。 

 メンバーはこれまで、自尊心がそこなわれる経験をしてきている。腹が立つこと、イヤな感情をもつことなど、マイナスの感情は、自分のなかで受け入れたり、自己肯定すると楽になることができる。そのためには、ためこまないで話せることがポイント。こうした感情のコントロールや自己受容を少しずつ体験する中で、自分を大切にすると言うこと、つまり、自尊感情を取り戻していくのでしょう。

 作業所は作業をするだけでなく、これからは自発性を大切にした自助グループやメンバーの居場所としての位置づけもあってもいいし、東京あたりではクラブハウスのような作業をしない作業所も生まれてきている。作業所はこれからはニーズに合わせ、多様化していくと思う。           < 記録・まとめ  事務長 塚崎美和子>

 

 

 

 

 

    本の紹介

 

 『早穂理。ひとしずくの愛』        

            塩沢みどり 監修  中川奈美著

 

  現在、受付に何冊かの本が置いてありますが、そのうちの一つ、“早穂理ちゃん”

 の顔が表紙になっているベージュ色の本を紹介させていただきます。

  この本は、重度の脳障害、一人では食べることもできないような障害を持って生

 まれてきた早穂理ちゃん、早穂理ちゃんと向き合い生きてこられた御両親、そし

 てそれを取り巻く人々の物語です。これが本当に実在する人であるのかというく

 らい強くて不思議なお話がたくさんつまっています。

  誰でも「今日はいい天気でよかったな」とか、「あの人にあえてよかった」とか

 いう、よろこぶ力というものを持っているのではないかと思いますが、そういう

 もののイチバンノカタチであることは間違いありません。

  天使の背中にある小さな羽根のモデルは、障害のあるこどもの手だという話しを

 聞いたことがあります。ウソかホントかやっぱり本当なんだろうなあと思います。

  秋の夜長に。「かけがえのない人からかけがえのない人々へ」の本を読んでみる

 というのも一興ではないでしょうか。

                     受付

                       井上万理子

 

 

 

 

 

   当事者運動とエンパワメント(empowerment)

 

 

                      加藤春樹(北海道女子大学)

 

  <それは当事者運動から生まれた>

 

 この言葉は最近まで英和辞書にも載っていないほどの新語でした。しかし大元のアメカでは1980年前後から,フェミニズム運動,アフリカン・アメリカンやヒスパニックの人々の権利要求運動,ネイティヴ・アメリカンの権利回復運動,身体・知的・精神の各領域の障害当事者運動,HIV-AIDS感染者の運動,ゲイの人々の反差別運動,レイプ被害者の名誉回復と訴訟支援運動など,権利保障・回復運動の中で頻繁に聞かれるようになりまた私どもの仕事(ソーシャル・ワーク)は当事者運動からこの言葉を取り入れ,既に "Social Work : AnEmpowering Profession" ,つまり「権利付与・地位向上の1専門職」という副題を持つ大部のテキストも刊行されているほどです。

 そんなわけでエンパワメントは,「権利を与えること,地位を向上させること,運動の実力を行使できるようにすること」を指す言葉で.平たく「力づけ」というような言われ方もされているようですが,この理解はちょっと感覚的、もっと実質本位の言葉なのです。

 

 ところでエンパワー(empower)という動詞は,今は他動詞ということになったのですが,アメリカではちょっと前まで自動詞として使われていました。

「(自ら)権利を(自分に)与える。(自ら自分の)地位を向上させる」という,主体的に行動する意味合いが強かったのです。もちろんこのことは一人で出来ることではありません。仲間がいて,その仲間と連帯しつつ自らの権利を共同で獲得していくという意味合い,つまり相互の連帯関係を初めから想定した上で自ら行動する」という意味をこめた言葉でした。それが使われているうちに仲間同士お互いの支えあいに比重が移り,他動詞になったのです。

 少なくない運動が初めは少数者から始まった。その運動を絶やさないためには,一人でもがんばらねばならなかった。そういう時期を経過しつつ,多くの仲間を持つ運動に広がってきたという事情が,この言葉が持つごく短い歴史過程での意味合いの変化に反映しています。

 

<当事者の権利主張>

 

 さてわが国では,善意のためかそれとも「何でもアメリカ中心」という発想のせいか,誤解されて受け取られているようですが,アメリカの障害当事者運動は,障害種別を超えて統合されてなどいません。国際的な障害当事者運動もそうです。個々の障害種別の当事者運動は,程度の差はありますが概ね日本よりずっと発展しています。でも他の障害に対する偏見や誤解は,当事者運動の中にも未だ深刻な形で存在しつづけていますし,個別の領域で個別のてだてを必要とするというリアルな現実を反映してもいます。

 

 そのような国際的な障害当事者運動の中で,最もオープンで他障害に対する誤解から免れているのは,知的障害当事者の運動です。インクルージュン・インタナショナル(Inclusion International)という知的障害当事者と家族の国際組織があります。 この組織は自らを「当事者と家族の利益擁護団体」ではなく,「世界中の人々の権利を確立する過程で自らの権利をも確立する人権擁護団体」と位置付けており,強力な当事者部会を持っています。そして4年に1回もたれる世界大会では当事者の会議も開かれます。

 今年(1998)の夏,オランダのハーグで6日間の世界大会が行われましたが,その事前会議としてノルドヴァイクというところで,丸2日間びっしりのスケジュールで当事者会議が行われ,私も8日間通して参加しました。

 「本当の権利への転換」,「なすべきか・なさざるべきか―ヒト・ゲノム研究に対する私たちの態度」,「真の労働・真の賃金」,「心と魂―私たちは慈善を望んでいない」,「選択の実現」,「頭上の屋根―家族と友達」。この六つのテーマが次々に当事者の予備会議で話し合われ,本会議に提言されてさらに討論されるというシステムでした。

 当事者会議は当然全て知的障害当事者の手で運営され,300人の参加者の熱意溢れる質問や意見が続きました。意見や質問は先ず自分自身が体験した差別や,自国での当事者運動設立や運営の苦労などに触れつつ,テーマに対する意見を述べたり,運動をリードしている人々の助言を求めるという形で,生活現実が伺えような具体的なものでした。そして回答する人々も質問者の言葉を大切にし,自分の体験を織り込みながら諄々と考えつつ応える。そういう丁寧で濃密な時間が流れて行きました。権利主張(self-advocacy)は声高に叫ばれるのではなく,生活に裏打ちされた生身の言葉でその場に積み上げられ,記述されました。

 そこには確かに「生きているエンパワメント」が機能していたと,この原稿を書きながら……思い出します。

 

 その内容を細かくお伝えすることは,この紙面ではできません。ただ一つ触れておきたいのは,それぞれのテーマの中で「専門職,とりわけ医師やソーシャル・ワーカーが,自分たち知的障害者を理解していない」,「研究者も当事者を無視し,その意見を聞かず研究している」という批判が数多く出たこと,さらにその状況を改善するために,「彼等(医師,ソーシャル・ワーカー,研究者)が,我々知的障害者がどんな人間なのかを理解するためには,彼等が分かるような形で分かり易く説明してやることが必要なのだ」という静かでしみじみとした発言があり,この言葉が討論のまとめのなかに満場の拍手で記されたことです.その場にいて胸苦しいような,胸が熱くなるような,本当に得難い体験でした。

 

<さて我々は……>

 

 当事者運動は,当事者の主体性と主導性によって自立的に発展しています。そこには数多くのサポーターがいます。発言の記録の多くはサポーターによって行われます。また当事者運動が当事者相互の協力と当事者集団の自立的な営みによって担われる背景には,サポーターの粘り強い努力があります.そしてサポーターの中には,数多くのソーシャル・ワーカーがいます。

 

 わが国でままある傾向として,当事者運動に身を寄せ同衾することを,あたかも自身のソーシャル・ワーカー・アイデンティティと錯覚する向きがあることは,夙に指摘されるところです。   

 国際会議でのサポーターの機能は実に明快でした。それは会議運営が民主主義的に行われるための支援,集団の中で発言するストレスを軽減するサポート,記述困難な当事者に代わって記述し,それを読み上げて当事者の確認を得るなどのてだてにのみ関与するということでした。会議の内容と現実の運営には一切手出ししないというスタンスが厳しく守られると同時に,グループ(ピア)・ワーク運営,リコーディング,ストレス・マネジメントなど,「当事者が自分でアドヴォカシーするために」「それを可能にし,支える」プロフェッションの発揮,つまりエンパワリング・プロフェッションが明確に要求され期待されました。多くの場合その人々は当事者によってコーチと呼ばれて,会議に出席している家族とは区別され,現職のソーシャル・ワーカーやソーシャル・ワーク領域の大学院生などでした。

 

 専門職に対するシビアな批判と同時に,専門職の専門職たる所以の発揮こそが期待されており,自己を当事者に同化し運動に同衾することが期待されているのではない。これまでの先立ちの長い営みによって開発されてきた方法と技術を駆使し得るという意味で自立したソーシャル・ワーカー,機能的サービスを提供し得るプロヴァイダーとして,当事者運動の主人公と相互に尊敬を感じつつしっかりと向き合うことが,わが国の同僚に要求されている。そういう思いを,自戒しつつ持ち帰ったことをお伝えして,筆を擱きます。

 皆さんお元気で,またお会いする日を楽しみに……。               

 

 

 

 

 

 元「youyou館」スタッフで現在東京在住である関口由紀さんは現在、東京にありますクボタクリニックデイケアスタッフとして勤務されています。また関口さんは写真家でもあり、現在、東京都の作業所を巡回して写真展が行われています。(P9~10をご覧下さい。)

 京都市における精神障害者共同作業所はまだまだ内職作業をしているところがほとんどです。一方、東京では、飲食店を営業する作業所も多く、なかにはショットバーをしているところもあるそうです。

  今回は、その展覧会が行われている、東京都における作業所について紹介して下さいました。

 

 

  東京作業所ガイド

 

 98年9月より、99年3月まで、巡回写真展「素顔ー精神障害者共同作業所youyou館に集う人々ー」の会場となる作業所について。すべて飲食店である。

 

 『藍CAFE and GAllery』

 世田谷区三軒茶屋     tel 03-5430-3671

同区にある「藍工房」のふたつめの作業所。ギャラリースペースのある喫茶店である。近くに女子大があり、にぎやかな所なので、平日のランチを目当てにくる女性客が多い。

 ランチは現在4種類。20食で売り切れたら終わり。曜日毎にきまっており、シーズン毎にメニューが変わる。メンバーは、開店前の掃除、ウエイター、ウエイトレス、洗い物、仕込みなどをスタッフに教えてもらいながらこなしている。だんだんスタッフ主導に傾いているのが悩みらしい。店内には工房手作り品もおいてあるが、ケーキを食べている女の子は、ここが作業所だということには気付いていないと思う。

 

  『食茶房むうぷ』

 三鷹市新川 tel 0422-43-4600

 広くて、新しくて、こぎれながら家庭的な感じのするお店。近くの大学病院から客が流れてくる様。

 ランチは8種類の「気まぐれ定食」がありその中から曜日毎に決めた「日替わり」を設定している。作りおきできるカレーもある。全9種類の食事、手作りケーキと飲み物でメニューにかなりボリューム感が出せている。

 むうぷ舎は、リサイクルショップと手作り品工房の3軒でなっていて地域や市民団体との結びつきも強い。ちなみにむうぷ舎の5つの理念を紹介しよう。作業所のありかたをよく練っていると思う。@出会いと憩いの場A生活体験の場B働きの場C市内関係機関のネットワーク作りD街の人々への精神障害の理解のための働き掛け

 

 

 『クッキングスター』

 調布市布田   tel 0424-98-5177

 喫茶店レストランに続き、98年5月にできたばかりの「クッッキングハウス3号店」である。

 営業時間は12:00〜19:30の夜型。16:00まで日替わりで絵画教室や勉強会。その後、みんなで夕食を作って食べる。料理ブック作りもやっており、また出版を企画しているのかもしれない。本『不思議なレストラン』はあちこちで紹介され、見学者もとても多い。代表の松浦さんは3軒をとびまわり、引っ張りだこなのである。

 

 『トマトハウス』

 町田市原町田  tel 0427-28-9779

社会福祉法人である。したがって、土地があり、自分のビルがある。1Fが作業所のパン屋、4,5Fが通所授産施設「明和荘タイムス」(編集・印刷・陶芸・軽作業など。小ホールがあり、年数回落語を開く。5人くらい入れる風呂もある。)そして、2,3Fが通所授産施設「トマトハウス」。

 日替わり弁当と自家製ケーキを出す喫茶は古い民家の廃材を使い、机も自然木。

 借り物でない、このために設計された建物は、これから法人化を目指す全国の作業所のモデルのなっているに違いない。




 

  デイケアの現状  ーぬか漬けとともに半年間ー

 

                        看護婦

                            北川美津子

 

 

 この夏デイケアの裏庭では枝豆、ミニトマト、なすびがプランターの中で実りました。どれも少しづつ実っていきました。なかでもミニトマトは、数回にわたって採りましたが、完熟して採れる一回の数は五個程度です。その五個ほどのミニトマトを包丁で半分または四半分に切って、その日のメンバーさんたち全員が一口ずつ味わえるようにしていきました。「食べた」いうより、「味わった」というほうが適切のような気がします。ひとくちずつのミニトマトを、とても大切なものを口にいれるようにそっと口に含み「甘い!おいしい!」と、みんなうれしそうでした。ミニトマトを切って食するなんて私もはじめてですが、切り口がとてもきれいで、かわいく、手づくりの宝石のようでした。

 また、枝豆は、一人に、1莢から2莢ほどがあたる程度でしたが、小さいながらも、「甘くておいしい」とみんなの顔がほころんでいました。なすびはぬか漬けにして食べましたが、身が固く、なすびの種を感じるものでした。それでも自然の味わいを感じ、手作りの醍醐味でした。そんな夏が過ぎ、このデイケアも開設より半年がすぎようとしています。

 この半年間で、デイケアのメンバーさん(デイケアに通所する患者さん、以下メンバーと称します)もすこしづつ増えてきました。

 

 はじめは男性のメンバーさんが多く、年齢も30代以上の人が多かったのですが、今では女性メンバーさんも増え、ほぼ同等です。時として女性のメンバーさんが多い日もあるほどです。年齢も、今では10代から60代までと広がりました。プログラムの内容もメンバーさんと共に話しあいながら少しづつ変わってきました。

 現在のプログラムを紹介します。

 月曜日は、木版画と手工芸です。手工芸ではビーズが中心でしたが最近では貼り絵をはじめている人もいます。また一部では毛糸でアクリルタワシを編んでいる人もいます。

 火曜日は隔週毎にカラオケを取り入れ、近くのカラオケハウスに行っています。みんな結構この日を楽しみにされています。

 また火曜日か水曜日かのどちらかで、おやつを手作りして賞味しています。今までは、ゼリー、わらびもち、ホットケーキ、クッキー、デコレーションケーキ、パンなどなどです。いずれも好評です。

 金曜日は話し合いをしています。主には土曜日の料理についてと次週のプログラムについて話し合っています。

 土曜日は午前中より料理をつくって、昼食時にみんなで食事会をしています。今までは、カレーライス、ハヤシライス、ハンバーグ、手巻きずし、卵丼、オムソバ、バーベキューなどなどです。いずれも好評です。

 その他、月一回の映画デイにあわせて映画鑑賞に行っています。上記のプログラムとは別に各々の好むゲームを自由に取り入れされています。そのなかでもファミコンゲームの「ぷよぷよ」はメンバーさんの大半の人気を集めています。

 また毎日、おわりの会を取り入れ、今日の一言を話すようにしています。

 プログラムの内容は以上ですが、デイケアに来れば何かしないといけないというプログラム重視の考え方ではありませんので、何もしないで寝ころんだり、ぼんやりして過ごされている人もあります。デイケアでは病気の安定化を促すためにもまず来所することを勧めています。その一方で、デイケアにくるのが楽しくなる、デイケアに来たくなるようなプログラムをメンバーさんと共に考えて、少しづつでも充実していくように努力しています。こんな日々のデイケアの中で、この半年間ずっと安定して続けているものに、「ぬか漬け」があります。「ぬか漬け」の味は毎日微妙に、また時として大きく違います。この毎日、味が違う「ぬか漬け」はこのデイケアの日々の動きに似ています。

 毎日何かが違う。日々何かが動いています。その日々の動きはメンバーさんの「こころ」の動きだと思います。その動きを大切にしていきたいと思いながら日々メンバーさんと共にデイケアで過ごしています。何もかもが試行錯誤中で、トンチンカンなことも多いと思いますがこれからもよろしくお願いします。

 

 

          デイケアからみなさまへのお知らせ

 

       きたる11月14日(土)にデイケア祭を行います。日頃、

      デイケアで作っている作品を展示し、私たちがどういう活動を

      しているのか、またデイケアとは何かということを、いろいろな

      方々に知っていただきたいと思っています。

      

        主な展示品

        書道 アクリルタワシ ビーズ雑貨 絵画 版画 陶芸

                             等々

 

        その他、お茶席や、クッキー等のおやつも用意しております。

 

       時間:am10:30〜pm2:30

       場所:つかさき医院

 

 

    詳細は、デイケアスタッフ北川か上野までお問い合わせください。

   

 

 

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