太郎君のおなら


              きもとけいし ぷっ

 「あーっ太郎くん、またおならした」

 保母さんは慌てて窓を開けました。

 子供たちも鼻をつまみながら太郎君のまわりから離れます。

 「太郎君のおならはくさいくさい」

 みんなが口々に言いました。

 保母さんも苦笑いしています。

 太郎くんは悲しくなりました。

 太郎君はよくおならをします。

 一日に何回も何回もします。

 それがとてもくさいのです。

 太郎君はおならをするたびに泣きたくなりました。

 太郎君のあだ名は「ぷーたろう」でした。 ある晩、太郎君は魔法使いの夢を見ました。 美人の魔法使いでした。

 その魔法使いから虹色のキャンディーをもらいました。

 不思議な甘みのするキャンディーでした。 魔法使いは言いました。

 「もうおならはくさくないわよ」

 翌朝、保育園で一回目のおならをしました。 みんなははじめ騒ぎましたが、何だか様子が今までと違います。

 おならがくさくないのです。

 それどころかいいにおいのするおならなのです。

 薔薇の香りのするおならなのでした。

 あまりにもいい香りなのでみんなボーッとしてしまいました。

 太郎君の側から離れていたみんなが寄ってきて、もっとおならをしてとせがみます。

 それからも太郎君のおならはイイにおいのするのばかりでした。

 太郎君は嫌われものから人気ものになりました。

 それから太郎君は毎日が楽しくなりました。 何日かたった晩、あの魔法使いの夢を見ました。

 今度はピンク色のキャンディーを太郎君はもらいました。

 魔法使いは言いました。

 「もう、だいじょうぶ」

 翌日、太郎君のおならの連発はなくなりました。

 たまにおならをするけれどそんなにくさくありません。

 保育園のみんなはもういい香りをかげなくなると残念がりました。

 でも太郎君は嫌われませんでした。

 それから毎日が楽しい太郎君でした。

                 おわり

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