夢か誠か

 

 

 真っ直ぐに伸びる線路。

 単線である。

 僕はその電車に乗っている。

 父母と妹の四人の家族で。

 電車は一両編成である。

 僕は運転席の側で線路の前方を見ていた。

 時々、座席に座っている家族のほうを振り返る。

 家族の斜め向かいに母子の二人ずれが座っている。

 子供は僕とおない年みたいだ。

 その子供は手に怪獣図鑑を持っていた。

 僕はその子供が少し恨めしかった。

 怪獣図鑑である。

 しかし、それは僕は家に持っているはずだ。

 しかし、なぜかそれが欲しいと想った。

 

 

 いつの間にか僕ら家族は霧の立ちこめる小さな村の中を歩いていた。

 不思議なことに右側にも左側にも仏壇が並んでいる。

 漆黒の仏壇で金の縁取りがしてある豪華な物である。

 それは普通の仏壇ではなかった。

 祭ってあるのが白色や金色のとぐろを巻いた蛇の置物であった。

 父親と母親はそれを見て何か楽しそうにしている。

 僕は何か不思議な感じがしていた。

 それは今いるところがこの世ではないような、何か別の世界のような・・・。

 それでも僕はその雰囲気に飲み込まれず平然としていた。

 そのうち尿意をもよおし僕は蛇の仏壇の裏側で放尿した。

 

 

 僕ら家族は怪しい商売をしている店の中にいた。

 店内に変な看板が掲げてある。

 男と女が裸で並んでいる絵の看板だ。

 男も女も体中から血を滴らせている。

 全身の毛穴という毛穴から血を滴らせている。

 変で嫌悪感をもたらす看板であった。

 その店はどうも薬屋らしい。

 漢方薬かなんか別の怪しい薬を売っているみたいだ。

 店主は饒舌で愛想笑いを絶やしていない。

 その店主は老けている感じがする。

 異な事に彼には表情がなく顔がなかった。

 店内には夥しいホルマリン漬けの瓶がある。

 瓶の中には何かわからない生物の死体が入っていた。

 僕がその中で覚えているのは魚らしき物のホルマリン漬けだ。

 魚らしきものには無数の斑点がでていた。

 何かの病気になったのであろうか。

 僕は恐怖を感じていた。

 静かな静かな恐怖を・・・。

(元に戻る)