『こ・こ・ろのケア』ボランティア情報 

            京都 VOL.8 1995.8.15

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                  REPORT

           ケア・スタッフのための家族援助講座

              「震災後の家族への援助」

       ―中高年期の夫婦への援助を中心に、その技術と実際―

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 8月3日、新神戸オリエンタルホテル12階花の間で、日本家族研究・家族療法学会が主催する「ケアスタッフのための家族援助講座・震災後の家族への援助」のワークショップが開催されました。第1回目の今回は、「中高年期の夫婦への援助を中心に、その技術と実際」をテーマに、中高年期の家族、殊に夫婦に焦点をあてながら、国立精神神経センター精神保健研究所・伊藤順一郎先生の「家族心理教育的アプローチの技法と実際」についての講演と、済生会兵庫病院MSWの高畠昌子氏の提出された事例をめぐる共同討論が行われました。

 伊藤先生の講演によれば、中年期の夫婦の援助に焦点があたるのは、以下のような事情によります。すなわち、今回の震災の復興にあたって、支援・援助の対象として、一番最後になりやすいのがこの世代の人々である、ということです。例えば、行政の援助は、「弱者救済」ということが優先され、障害者や高齢者などのハンディキャップをもつ人々を最初に対象としました。働きざかりで、力を持っている世代である30代から40代の男女は、復興の中で猛烈に働き、今までの回復の支え手となりました。また、この世代は、おそらく家族の暮らしの中でも「支え手」であることを最も求められている世代でもあります。これらのことと併せて、中年期の男女は、実は震災の前からも家族や社会の「支え手」であることを最も求められている世代であったし、震災を経てからは、仕事の量が明かに増加したことによって、多くのストレスを被ることになります。

 ストレスの一つは、様々な「喪失」です。ようやく働き盛りになって、一家を支え、子どもも育ちつつある、いわば人生の舞台の主人公の時期、ともいえる中年期の夫婦は、今回の震災によって、大切な人との人間関係や、仕事、住居、財産といった社会的・物質的な喪失を多数体験しました。このことによって、彼らは、「今更やり直しがきかない」という感覚を味わった、ということがいえます。次に、受けたダメージを他者と比較する中で、「どうして私たちだけがこんな目に合わなければならないの」とか、「なぜ私たちだけが無事だったんだろう、皆さんに申し訳ない」といったつらさも味わっています。更に、新しく適応しなければならない事態へのがんばりから来る過労が生じたり、不全感、不適応感などのストレスも生じています。これらのストレスに対する反応として、イライラ感、抑欝気分、疲れた感覚、不安感(これには音や振動に対する身体知覚も含まれますが)、虚無感といった気分から、無理をして働き、体調を崩す、アルコール・薬物に依存するといった、余り建設的でない方向に行動化することに連続していきます。このようなストレス反応を家族との関係でとらえれば、こ れらの行動が、他の家族の顰蹙をかい、コミュニケーションがまずくなること、自分のことで精一杯になって、家族間の交流が減ること、お互い余裕がないためについイライラをぶつけ合って口論や諍いが多くなる、といった悪循環が生じてきます。言い替えれば、それは、「夫と妻の役割の違いからくるしんどさ」ととらえられるかもしれません。すなわち、夫は、仕事の確保や、社会との関わりにある自分の価値を大切にする事に向かう傾向があり、家族を支えることについては、「妻に任せたい」という気持ちになります。妻は、抱え込んだ役割である家を守ることや、子どもの世話、加えるに自分や夫の実家の世話を「夫に助けてもらいたい」のに、夫が外でがんばっているのを理解しているので、我慢はするが、つい「家族と仕事とどっちが大切なの」と夫に言ってしまいたくなります。こうして、夫に助けを求めても、夫に余裕がないために受けとめきれず、お互いの不満を吐き出す場所もなく、会話も減り、家族みんなが次第に消耗していく、という危機的状況に陥っていきます。

 このような家族の危機に対し、どのような援助の技法が問題解決のヒントになるのでしょうか。まず、援助の基盤となるのは、以上のような事情を踏まえて、「どんなに混乱していようとも、家の支え手である夫婦がこれまで行ってきた努力はとても貴重なものであり、それがいかに稚拙に第三者から見えようとも、尊重されるべきである」ということです。具体的な援助の技法としては、「心理教育的プログラム」が提示されます。このプログラムの前提条件は、「面接の場が来談者に対して肯定的であり、面接に来ることで何だか元気がでてくるような雰囲気があること」、必要条件は、「ニーズに合った情報をわかりやすく伝えること」、十分条件は、「どのように対処したらよいかについての指針をどんなものでもよいから具体的に見つける方向で会話が行われること」となります。すなわち、援助者は、問題を持つ人が、まず相談の場に現れた勇気をねぎらい、それまで問題に対処してきた経過を聞き、その苦労をねぎらう、ということです。次に、相談は、これからの暮らしにおける工夫を見つけるということに焦点を当て、未来に対する明るい期待が持てるような会話が、来談者のペースに歩調 を合わせて行われるのが望ましいと言えます。

 このため、援助には、「ケースワーク的発想」と、「心理療法的発想」の両方が有効です。前者の内容は、相談が家族の主体的な力を支えるための、いわば「作戦会議」として機能するような会話ができればよい、ということです。あらゆる問題は、援助者の支援を触媒にして家族が自らの力を発揮する事によって解決していく、ということを援助者は念頭におかねばなりません。後者については、「どんな困った行動も、それを行っている主体の自己治療的な対処の現れであり、下手ではあっても、その人の努力の結果である」という基本的な発想を押さえておく、ということです。震災によって、多くのものが破壊され、失われても、人々の行動の中には残されている大切な物が必ず生かされ、その人々の本意ではないにしても、伸ばされた工夫があるといえます。これらのことは、その人々の宝であり、これからの暮らしを生き延びていくためのエネルギーにもなります。ヒルの家族危機説にも、ストレスに晒されている家族の耐性は、その家族の持つ社会資源の量と関係すると言われています。援助者の仕事として、その家族の持つ「宝物」を生かしながら、相手の慣れたやり方、相手の得意なやり方 を伸ばす方向で、解決の方法を共に考えていくことが大切である、ということが示唆されたように思いました。

 後半の事例検討では、済生会病院の実際の事例に基づいて、小集団に分かれて討論をおこないました。参加者は、地域こころのケアセンターのスタッフ、シルバーケアセンターのスタッフ、新聞記者、中年女性の生涯発達を研究している大学院生等多様なメンバーが集まり、一つの事例に対して、多面的な角度からの検討が行われました。

 震災という一つのファクターを通しながら、普遍的な家族の葛藤の問題が浮かび上がり、援助者としてのアプローチの方法を学ぶことができました。

 また、対人援助に関わる者同士が出会う場としても大変有意義な討論が行われたと考えます。

                                 (編集部M.O)

 

このワークショップは、今後も継続して開催される予定です。

連絡先:〒588 大阪市住吉区万代東1-4-12 健育研究所・松田クリニック内

    日本家族研究・家族療法学会 阪神・淡路大震災支援委員会事務局(分室)

     06-692-5058 FAX 06-692-5063

 

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            震災後の心のストレス相談センター

            078-333-1984 FAX 078-392-3960           

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 8月1日付け・週報によれば、ボランティア参加は、実労200名。(医師72名・平均年齢38.7歳、臨床心理士78名・同34.5歳、看護士・PSW35名・同35.7歳、他15名・同26歳)。

 一人の6時間活動を1ポイントとして総集計した後日数に換算すると、医師280日、臨床心理士256日、看護士・PSW146日、他56日、総計738日の活動でした。

 センターの実活動184日間(1月29日〜7月31日)の経費を概算すると、

1)一人の24時間勤務の日当を「こころのケアセンター」の日当を参照に最低賃金にして、

 8600×2×738=12,693,600

 8600×184×2= 3,164,800(小林和院長夫妻の賃金)

2)交通費(新神戸駅から徒歩、東京駅から自宅まで徒歩、関空から泳ぐ計算で)

 6,661,380(各最寄り駅〜新神戸駅間のJR料金、または関空まで合計)

3)精療クリニック電話代、他光熱費:前年度との差額

 795,000(電話3台新規設置分を含む)

 以上の合計:23,314,780(実際はこれ以上の事業だったことになります。)

 

 「震災・こころのホットライン24時間」緊急ボランティア募集のお知らせ

 以前からお知らせしていたように、精療クリニック「震災後の心のストレス相談センター」は、「こころのケアセンター」の委託を受け、来年3月末まで、「震災・心のホットライン24時間」と名称を変えて、活動を延長することになった。このため、引き続きボランティアを募集する。

活動内容:24時間対応の電話相談・余裕を見て、仮設住宅訪問。

求人内容:精神科医、臨床心理士、PSW、看護士等の精神医療専門家。

状況:精療クリニック内のソファー等での宿泊、入浴は銭湯(徒歩約10分)、食事はほ   とんど外食(便利、美味)。

   *食費程度の支援が「心のケアセンター」から支給される。

申込方法:以下の要件をFAX送信してください。

     1)氏名、性別、年齢、職種

     2)自宅住所、電話、FAX。

     3)勤務先、及び住所、電話。

     4)臨床の略歴。

     5)活動可能なタイムスケジュール。

*尚、連絡先は8月17日より移転。

 移転先:〒650 神戸市中央区三宮町2-10-7 グレス神戸7F 千島医院内

      078-393-0307 FAX 078-393-0308

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             当方で所持している参考資料

 コピー(1枚10円)・郵送実費で行います。希望される方はYOUYOU館へ返信用の封筒にあて先を明記して申し込んでください。 

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  「精神医学」1995,VOL.37,NO.7『特集 阪神・淡路大震災―現場からの報告』

 内容は、小池清廉・他「救護活動から見えてくるもの」、堺俊明「阪神・淡路大震災における精神科救援・救護活動の現場と問題点―日本精神神経学会阪神大震災対策特別委員会関西現地本部本部長の立場より」、中井久夫「被災地内部から―レポートを書いてしまった人間の4カ月目のレポート」、山口直彦・他「震災直後の入院症例―ある被災地自治体立精神病院からの報告」、大森文太郎「精神科医療救護チームおかやまの活動について」。中井論文は、先の著書「1995年1月・神戸」のその後の報告という色彩があり、著書と通読すると、精神科医療機関が緊急時に機能するために必要とされることが明確になります。

 

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                 作業所の現況

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 建物の内部診断で、「危険」と診断され、使用困難となった垂水区の垂西むつみ会は、7月4日より垂水海浜センター内の仮設作業所に移る予定であったが、内部整備が整わず、実際の使用は9月になる予定。

 

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            「こころのケアセンター」活動状況

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 「芦屋心のケア・センター」は、保健所を中心として実施していた、震災後の「こころの相談事業を引き継ぎ、8月1日にオープンした。取り組みとしては、@相談;精神科医(地元の診療所のDRも参加)、心理士、ソーシャルワーカー、保健婦などの職員が、電話または来所の相談を行い、依頼があれば、家庭への訪問相談も行う予定。A各種活動への参加;地域で行われる各種イベントに「心の相談コーナー」を設ける等の形で積極的に参加する。B講師、アドバイサーの派遣;企業、学校、地区組織、ボランティア団体等、支援活動や復興でご苦労された方々から、希望があればスタッフを派遣して、「心のケア懇談会」等の形で協力。Cその他、色々と計画中。

 相談日:月曜〜金曜(祝祭日は除く。)

 相談時間:午前10時〜午後4時

 連絡先:〒659 芦屋市大原町2番6号(ラ・モール芦屋2F)

      0797-22-9307 FAX 0797-22-9308

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         第38回日本病院・地域精神医学会総会のお知らせ

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 第38回日本病院・地域精神医学会総会が、「より身近に、より多様に―精神保健・医療・福祉活動を―」を基本テーマに下記の日程で行われます。今回は、10月6日に一般演題U―Aとして「大震災時の精神医療」が、7日に、「阪神・淡路大震災後の精神医療・保健をめぐって」をテーマに特別報告が行われます。

 一般演題の報告者は、「被災地での保健所の精神科救護活動」東灘保健所相談員

・奥山基子氏、「阪神大震災被災地の公立単科精神病院における外来通院者の現状」県立光風病院看護中村葉子氏、ほか、「大震災後のボランティア活動へ駆り立てられた人達―精神科へ入院を余儀なくされた事例への関わりから―」県立光風病院看護浦川芳輝氏等。特別報告者は、兵庫県精神保健福祉センター・麻生克郎氏、神戸市西保健所精神保健相談員・土井寛子氏。司会は、京都市立病院・田原明夫氏。

                   記

          会期  1995年10月6日(金)〜7日(土)

              会場  秋田市文化会館

          参加費 一般(会員・非会員とも)6000円

          患者・家族・学生・ボランティア 1000円

               宿泊・交通機関の申込

           JR東日本びゅうプラザ秋田 学会事務局

             〒010 秋田市中通7丁目1番2号

           0188-34-1721 時間外 0188-34-2644

          FAX 0188-34-9273 (担当 斉藤・佐々木)

           申込受付締切 1995年8月31日(木)

 

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  日本精神病院協会企画・ヤンセン協和(株)提供のラジオたんぱ医学専門番組  

            「知っておきたいメンタルヘルス」

第3回「児童とメンタルヘルス」近畿大学精神神経科教授・花田雅憲(95年3月20日放送)

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 1月の17日にとっても大きな地震が淡路と阪神でおこりました。このために、たくさんの人達がいろんな障害をお受けになったと思いますけれども、今日は、子どもがどういうふうな心の傷を大震災の後で受けたかということについてお話させていただきたいと思います。

 一つは、大きな地震がおきると、どれくらいで心に傷がつくか、という問題がございますが、普通は大きな地震の後すぐに精神的な傷というものがおこってきます。ただ、大人と違いまして、子どもの場合には、外見から見ますと全く問題がないように思えますけれども、やはり、2〜3週間、時には何ヵ月もして心の傷が表に出てくるということもあるわけですから、周囲の人達は、そういったつもりで子どものいろんな行動とか、感情の状態に注意していただく必要があると思います。

 今日は、子どもの心に傷がつくと言いましても、年齢によってもいろんな症状の出方が違いますし、もちろん年齢によって対応の仕方も違うものですから、一応、乳幼児期と、小学生の子どもと、中学生の子どもと、それから高校生の子どもというふうに年齢を分けて、子どもの症状の特徴をお話したい、と思います。

 まず最初に乳幼児期です。乳幼児期とは、生まれてから小学校に行くまでですから、家におられたり、保育所とか幼稚園に行っておられたお子さんだと思うんですけれども、原則として年齢が低いほどいろんなことに敏感になりますね。だから、いろんな症状をおこしやすい、ということがあります。例えばどんな症状がおきるかと言いますと、家族にいろんな要求をしてくるとか、ちょっとしたことでも、みな、周りのお父さんやお母さんに「あれして、これして」という要求が出ます。それまでしっかりしていた子どもが、急にその年齢より前にできていたことよりもっと幼い行動をとる、―退行現象といいますけれど、そういうものがおこりやすくなる―もちろんこういったことは、周囲のお父さんやお母さん、若しくは保母さんなどの態度によっても大きく影響されるわけですから、お父さんやお母さんや周囲の人達がびくびくされてますと、余計に子どもに影響するというふうになるわけです。

 それじゃどんな症状かといいますと、一つはおねしょをしなくなっていた子どもがまたおねしょがおこるようになるとか、やっと指しゃぶりをしなくなったな、と思っていた子どもにまた指しゃぶりがおきるとか、夜暗くなると暗闇を怖がる、そういった症状がとても出やすいです。

 こういった症状の他に、身体の症状が出てきます。例えば、食欲がなくなるとか、反対に食べて食べてしょうがないという過食症状というのが出てきますし、もちろん、ムチャクチャに食べたりすると、消化不良というのもおこしやすいですし、ものを吐く、嘔吐という症状もおこります。こういった身体症状の他に、行動面でもいろんな変化が出てきます。例えばイライラしやすいとか、上手くお話ができていた子が、上手くお話ができなくなってしまう、自分の気持ちを赤ちゃんことばみたいなことばで相手に伝えようとするということもありますし、かなりの子どもが夜眠りにくくなる、―やっぱり一つは興奮もしますし、それから、怖いという体験がありましたから―そういうことが認められていると思います。

 こういった子どもにはどう対応するのがいいのかといいますと、一つは周囲の人達、お父さんやお母さんがいろんな話をしてあげて、話しかけて、本人の安心・満足感を高める、ということです。その他に、なるべく抱きしめてあげる、身体接触を増やしてあげるということがとても大切なことだと思います。夜寝る時も、当然ですけれども、もしそれまで別々の部屋で寝ていた子どもだと、お父さん・お母さんと同じ部屋で寝させてあげる、時にはお父さんやお母さんが手を握ってあげるとか、というふうなことがとても大切だと思います。そうしますと、子どもは安心して眠れるようになります。

 次に、小学生でございますが、小学生はどんな行動がでやすいかといいますと、それまで話ができて、字が読めて、文章が書けてというふうな能力を持っていた子どもがそういったことがとてもできなくなってしまう―これは退行現象ですね―ですから、親にしがみつくようになったとか、食事も、ちゃんと自分で食べられていた子どもが、「食べさせてくれ」というような要求をするとか、服を着たり、脱いだり、靴をはいたりするのも全部自分でできていた子どもが、「服をきせてほしい」というような要求が出てきたり、―これが「退行現象」、赤ちゃんがえりといわれているようなことですが―こういったことの他に、身体の症状としては、「頭が痛い」、それから、「吐き気がする」という訴えが出るようなことがおこります。乳幼児期のお子さんと同じように、夜眠れないというような症状がとてもでやすいですね。

 この他に行動の特徴としましては、落ちつきがなくなってくるということ、物事に注意を集中する力がとても悪くなるということ、イライラしたり、ちょっとしたことで反抗するようになるということ、それまでは仲がよかったたくさんの子ども達と上手く遊べなくなる、積極的に友達を避けるというふうな行動も見られるようになります。

 こういった小学生の子どもに、周囲の方はどう気を使ってあげるのがいいか、といいますと、必ず「元の状態に戻るんだよ」というふうに周囲の人が話しかけをして、本人を勇気づけて自信をもたせることが大切だと思います。ですから、積極的に家事のお手伝いをさせたり、まだいろいろ片付けが残っていると思いますから、そういったものを積極的にさせてあげる、ということが大切になります。注意しないといけないのは、テレビなんかで震災の場面、生々しい場面が出ているのはなるべく避けた方がいいだろうと思います。もし本人の方から災害についての話が出てきたときには、充分聞いてあげる、しかし、積極的にこちらからそういったことを聞くようなことをしない、傷をほじくり出さないということが大切だと思います。

 次は中学生でございます。中学生になりますと、友達とか、家族の関係にとても敏感になりますから、それまでできていたお手伝いができなくなったり、できていた勉強に集中ができなくなったときには大目にみてあげる必要があるでしょうね。同じように、身体症状としましては、食欲が低下するとか、下痢になるとか、便秘になるとか、寝られないというふうなことがおこってくると思います。それまで持っていた趣味とか、レクリエーションなどに興味を失ったりする事がありますし、物を盗むとか、嘘をつくとかいうような反社会的といいますか、そういう行動がでてくることがあります。こういう子どもには、集中力が元通りに戻ることを必ず保障してあげることが大切です。本人も、「こんなはずではなかった」といって悩んでいることがありますから。それから、勉強とかお手伝いが一時的にできなくなるということがありますが、これは、「もう少ししたらできるようになるよ」という感じで、本人ができる範囲の仕事を手伝わせることです。それから、家庭とか、地域の復興作業を手伝わせるということもとてもいいことです。

 最後が高校生でございますが、高校生もやはり仲間との集団というのがなかなか組めなくなる、ということが特徴だと思います。引きこもってしまったり、欝的になってしまったり、大人に不満を打ち明けたり、イライラしたり、人に攻撃をするとかいうようなことが見られることがあります。また、高校生になりますと、シンナーやアルコールに依存するというようなこともありますから、そういうことに注意する必要があるのではないでしょうか。対応としましては、やはり災害の体験を仲間とか、家族で話し合うこと、お互いに励まし合う、復興の手伝いを積極的にさせるとか、スポーツとか、社会的な活動に参加させるということが大切だと思います。

 私たちが今、少し心配していますのは、この大震災で疎開をした子どもたちが一番多いときで2万8000人おられたんですね。疎開先の子どもが、どうしておられるか、疎開から帰ってきたときに元の学校で上手く受け入れられるかどうか、元の地域で受け入れられるかどうかということがとても心配だと思いますから、先ほど申し上げた年齢別の特徴に加えて、そういった子どもの状況の変化に、周囲の人は敏感であった方がよいと思います。心配な時には、児童相談所とか、教育委員会とか、私たちの病院もございますので、気軽に相談していただければ適当な処理ができるのではないか、というふうに考えております。

 

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│ この情報誌は、当面本年10月末まで、月2回刊行を目標に発行していく予定です │

│送付を希望される方は、80円切手を下記の連絡先までお送りください。また、ボラ│

│ンティア情報をおもちの方は、情報を読んだ人が活動のイメージをもちやすいよう│

│に、なるべく簡潔な形にまとめてお送りください。              │

│     「『こころのケア』ボランティア情報・京都」宛          │

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■「こころのケア」ボランティア情報・京都では、10月までの郵送費・及び印刷費とし て約6万円が必要です。現金・不要な切手のカンパをお待ちしています。

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