診療日記(2007, 12, 26 更新)


この日記は、医院での診療の様子をお伝えするものです。ホームページを見て、受診した患者さんから、日頃の診察の様子や、医者がどんなことを考えているかがわかると、受診する時の参考になるということで、このコーナーを開設しました。


12月X日

いつも、ネットで新聞を読んでいます。
先日次のような記事を読みました。


ーーー引用始まりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

凶悪化?量刑変化? 増える死刑確定、今年23人に

12月24日22時26分配信 産経新聞

今年1年の死刑確定者数が、「永山基準」といわれる死刑の判断基準ができた昭和58年以降で最も多い23人に上ることが24日、分かった。最高裁のまとめによると、下級審の死刑判決も高い水準で推移しており、来年以降も年間確定者が急減することはないとみられる。死刑判決増加は、凶悪事件の増加や、量刑判断基準の変化が影響しているとの指摘もある。
 産経新聞のまとめでは、今年の死刑確定者は23人(24日現在)。法務省がまとめている検察統計年報によると、昭和58年以降の死刑確定は、63年に2ケタの12人になったほかは、平成15年までは1ケタ台で推移していた。ところが、16年に14人と急増。昨年は21人と20人台に乗り、今年は昨年を超えた。
 今年の死刑確定者の内訳をみると、自ら控訴を取り下げた被告が5人。上告棄却は18人で、最高裁まで争われる場合が多いことが見て取れる。
 一方、下級審の死刑判決を最高裁が「量刑不当」と判断したのはごく少数にとどまる。このため、下級審の死刑判決数が今後の死刑確定者数を左右することになる。最高裁のまとめでは、昭和58年以降、控訴審で死刑判決を受けた被告は、平成12年までは1ケタだったが、13年に16人になり、以後は14年を除いては2ケタ台で推移。今年も9月末現在ですでに10人に達している。このため、来年以降も死刑確定が急減することはないとみられる。
 元最高検検事で白鴎大学法科大学院院長の土本武司氏は、死刑確定が増加している原因として(1)悪質な凶悪犯罪の増加(2)裁判所の量刑判断の変化−の2点を挙げる。(2)については、「殺害された被害者が1人なら懲役、2人はボーダーライン、3人なら死刑」との見方が法曹界では一般的だった。しかし、土本氏は「国民世論が死刑を容認している中、被害者の数をとくに重視する傾向にあった裁判所の量刑判断が変化している」と指摘する。
 例えば、静岡県三島市で女子短大生に生きたまま火をつけて殺害したとして、殺人などの罪で起訴され、今月17日に最高裁で弁論が開かれた服部純也被告(35)のケースでは、被害者は1人で、1審判決は無期懲役だったが、2審は死刑を言い渡している。
 一方、「究極の刑罰の死刑はバランスを考えて判断しており、基準はブレていないと思う」(あるベテラン裁判官)と、裁判所の変化を否定する声もある。


ーーーー引用終わりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なるほど、犯罪が多くなっているのかと感じました。
世の中がすさんでいるのだろうと考えました。
しばらくして、ちょっと疑いが出てきました。
それは、自殺が平成10年頃から急増していることを思い出したからです。
平成13年に死刑が増えているとすれば、それ以前に死刑判決を受けそうな犯罪が増えているということです。
しかし調べてみると多少の変動はあるものの、殺人事件が著しく増えている様子はありません
ただ、犯罪の増減と自殺の増減には相関関係があります。
いずれも平成14年や15年をピークに減少しています。
特に目立つのは、強盗や窃盗の経済事件です。
自殺も同じ傾向ですから、自殺は経済の動向に左右されるのでしょう。
殺人が凶暴になっているというのも、時代がすさんでいるという思いこみからの印象かも知れません。
また、刑をきびしくしないと犯罪が増えるという思いこみが作られていると感じます。
犯罪を減らすには、経済状況をよくするのが一番でしょう。
自殺についても同じです。
自殺のなかで多いのは、無職の人の自殺です。
経済的背景の弱い人が、自ら命を断つ可能性が高いのです。
また、追いつめられて、経済事件を起こすのでしょう。
マスコミを通じて、死刑を増やせば、犯罪が減るという思いこみが作られているように思います。
しかし、世界の動向は、死刑廃止の流れです。
日本国内の世論は、世界全体の流れとずれています。
これは、注意すべき問題ではないでしょうか。



12月X日

つかさき医院のデイケアは「シエスタ」という名前ですが、これは南ヨーロッパで行われている昼寝のことです。さて、その名前を題名とした映画があるのをご存じですか。
今、パソコンテレビのGyaoでは、12月31日まで、映画「シエスタ」を無料で見ることができます。
医院のデイケアとは何の関係もないのですが、話題のひとつとして如何でしょうか。

あらすじを貼り付けときます。

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エキゾチックなスペインで目覚めた女…。記憶を辿り彷徨う女に突きつけられる真実とは!? 主演のエレン・バーキン(『オーシャンズ13』)が美しい肢体をさらし、赤いドレスをまとい大人の魅力を放っているのもみどころ。共演にガブリエル・バーン、ジョディ・フォスターらが出演した、エロティックでいて甘美なミステリーです。

スペインの飛行場近くで目覚めた女(E・バーキン)。腹部に血が付いているが、記憶が無く誰の血なのかも分からなかった。必死で過去を思い出そうとする彼女の名前はクレア。数日前、アメリカで夫デル(M・シーン)と暮らす彼女のもとに、かつての恋人オーグスティン(G・バーン)からの手紙が届き、スペインの地にやってきたのだが…。

監督:メアリー・ランバート/原作:パトリス・チャップマン/脚本:パトリシア・ルイジアナ・ノップ/音楽:マーカス・ミラー、マイルス・デイヴィス
出演:エレン・バーキン、ガブリエル・バーン、ジョディ・フォスター、マーティン・シーン、グレイス・ジョーンズ、ジュリアン・サンズ、イザベラ・ロッセリーニ 他
1987年 / アメリカ

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12月X日

日本の医療が崩壊に向かっているという警告を激しく発している人々がいます。
救急医療、産科、小児科はすでに、崩壊が目に見える形になっています。
それに対して、マスコミは現象面だけを取り上げて、
救急患者の受け入れが困難なことを、「たらい回し」という表現で、批判しています。
救急医療が手薄になっているのは、経営的に成り立たないからです。
あまりにも経済的裏付けがとぼしく、一部の人々の犠牲の上に成り立っていたものですから、
耐えられなくなったところから、人間が逃げ出しているのです。
ところが、一方で医療費の増大を理由として、医療費の抑制を主張しているのですから、
逃げ出す人を止めるなどと言うのは、実現困難な、支離滅裂の主張と言うしかありません。

今の日本は、こうした報道が、当たり前のように通用する社会になっているのです。
物事を、相互の連関のなかでとらえる能力が著しく低下しています。
大雑把な印象で、物事の善悪を把握しようとする乱暴な言説がまかり通っています。
こんなことをしていては、そのうちとんでもないつけを払わされるに決まっています。

さて、精神医療のことですが、来年の4月に医療費の改定が行われる予定です。
その際に、通院精神療法の点数を減らそうという案が出ているそうです。
精神科の診療所が最近は利益を上げているらしいので、少し儲けを減らそうという考えらしいです。
精神科の外来の面接時間は、平均10分ぐらいなので、時間で区分けして、
10分以下の面接時間の精神療法と10分以上で点数を変えようという話が出ているらしいです。
聞くところによると、10分、30分で区切って三段階の値段にするという話や、
5分以下なら精神療法は取れないようにするという話も出ているらしいです。
これらは、すべて噂なので、どこまで本当かわかりません。
ただ、時間によって、通院精神療法を区別しようと言う話が出ているようです。
これに対して、精神科医療の性格を知らない暴論だという反論が出されています。
手術時間が長いと、点数が高くなるのか。
腕が良くて、短時間で処理をしたら安くなると言うのは、おかしい。
医療というのは、ある程度丼勘定で、全体でつじつまが合えばよいので、
一つ一つの行為の評価を合理的にしようとすると、結果的に全体として不合理になるという考えもあります。

大体、他の科よりもうけているから値段を下げろという議論はおかしいです。
精神科の患者が増えているのは、儲け主義というより、ストレスにさらされて、
身近な人間関係の中でそれを解決できない人が増えているからです。
精神科医療への偏見が少なくなったことも、受診者を増やすことにつながっています。
しかし、利用者が増えると言うことは、同時に求める医療の質を高める方向に動きます。
精神科医療では、きめ細かい対応をしようとすると、医者だけでなく、臨床心理士や
精神保健福祉士を配置しないと実現しません。
ところが、それらの人たちは現在の保険診療の中では、人件費を保障する枠組みがありません。
何とか工夫をして、それらの人々の人件費をひねりだしているのです。
そのよりどころになっているのが、通院精神療法の項目です。
精神療法の点数が減らされると、それらの直接診療報酬を生み出さない人たちが首を切られていくでしょう。
長期的には、精神医療の質を低下させることにつながることは明らかだと思います。



12月X日

ある日曜日、滋賀県甲賀にある忍術村を訪れました。
いかにも、さびれた雰囲気。
人影もまばらなのですが、それぞれの施設には、それなりのスタッフが配置されています。
手裏剣道場には、手裏剣投げを指導するおじさんが二人、手裏剣8枚で300円。
「8枚では少ないなあ。」というと、6枚おまけしてもらいました。
それでも、一分もしないうちに的へ向けて投げ終わりました。
これで、経営がなりたつのか不思議です。
と言っても、入場料が1000円ですからね。
おもしろいのは、忍者屋敷かな、やたらに抜け穴がある家なのです。
釣り天上などもあるし、一度は見る価値があるでしょうね。

ところで、忍術村で発見した公衆電話。



「あなたの手、あなたの足です。公衆電話。」
という標語があったのですが、
公衆電話が、わたしの足だったは、これまで知らなかったので、
びっくりしました。
さすが、忍術村だと感動しました。


12月X日

今日は、新聞に日本の姓の検索をおこなうHPのことが載っていましたので、早速試してみました。

「塚崎」という姓はどれくらいの珍しさなのかを調べました。
日本全体では3087位、全国の電話帳に 1067件載っているそうです。
それで、医院のスタッフを調べてみました。
一番ありふれているのは、山本さんで、7位  269344件。
次が、木村さん 18位 145901件。
続いて、中川さん 49位  75106件といった具合です。
逆に珍しい姓は、沖部さんの 49651位  10件。
次は、大日向さんの 4322位  665件でした。

こうなると色々調べてみたくなって、植物の名前とか、十二支とか、身体の部分とかを調べたりしました。
植物で多いのは椿さんでした。桃さんという人もいました。
桃太郎という人も日本にはいるのでしょうね。
動物の名前では居そうな、犬、猫、兎さんがいませんでした。
獅子、虎、亀、鶴、雀、烏なんて人もいます。牛、馬、猿、猪、鳥、竜さんも居ますね。
雉さんはいませんので、桃太郎の鬼退治はできませんね。
珍しいのは羊さんで、88108位   1件という珍しさです。

身体の部分では、居そうな手、足、頭さんは居なくて、顔、背さんは居るのですね。
耳、鼻、口、目、舌、毛、髭さんは居るのに、髪さんが居ない。
不思議というか、おもしろいですね。
みなさんも調べてみると、ちょっと楽しいかも知れません。


11月X日

先日は、患者置き去り問題を取り上げました。
ひどい話だなあと思って。
日本もアメリカ並みの状況になったと嘆いていたのですが、
よく考えてみると、同じようなことを過去に色々経験していたことを思い出しました。
精神病院に入院していた患者さんが、飲酒を繰り返したということで、問答無用で強制退院させられたことがありました。
住むところもない、お金もない。
主治医もいなくなった。
どうしようという相談が寄せられたことがありました。
その時は、ひどいものだなあと思いながら、対応したことを思い出しました。
また、ある時、医院の夜の診療が終わりかけた時に、
病院を強制退院させられたという患者さんがやってきました。
この人も、住む家がない。お金も全くない。
という状況でした。
これまた、ひどいことだなあと思いました。
そういう経験がいくつもあったのに、
公園に盲目の患者が置き去りにされたというニュースを読むと、
前代未聞のニュースのように感じてしまったのですから、
医療状況が悪くなっているという思いこみは恐ろしいなあと思いました。
強制退院で、行き場がないということになるのは、病院や主治医が
患者と張り合って、意地を通そうとするから起こるように、そのころは感じていました。
そこまで、ムキにならなくても、何とか解決の方法もあるだろうに。
そういう風に感じていました。
だいたい、柔軟性の身に付いていない若い先生が、勢いで事態を煮詰めてしまうと言うことでしょうね。
なんでもかんでも、新自由主義の結果だと考えることには、反省も必要だと思いました。


11月X日

インターネットに出ていた記事です。
とうとう、日本もアメリカ並みの状況になってきたのだと思いました。
ここまでの事態になってしまうと、ニュースにもなりますが、
こんな形のニュースにならないような出来事が、次々と現場では起こっているのでしょう。
恐ろしい事だなあと感じてなりません。


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「無理やり連れて来られた」 全盲患者置き去り

14:28更新

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「無理やり連れて来られた」 全盲患者置き去り 

「職員に無理やり連れて来られた」。
新金岡豊川総合病院(堺市北区)の職員が男性患者(63)を公園内に置き去りにした保護責任者遺棄事件。
男性は救急隊員に保護された際、悲壮な表情を浮かべ、こう説明したという。
病人を保護する立場にありながら、なぜ非情な手段を選んだのか。
職員との確執や入院費の未払い…。男性患者をめぐるトラブルが絶えなかったとはいえ、人間を“モノ”のように扱う身勝手な行為に、関係者は「信じられない」と絶句した。

 9月21日午後2時23分。
消防に119番通報が入った。「60歳ぐらいの男性が公園に倒れている。目が見えないようだ」。慌てたような男性の甲高い声。
約10分後、現場に急行した救急隊員が目にしたのは、荷物の入ったバッグを地面に置き、1人でベンチに腰掛ける初老男性の姿だった。

 「大丈夫ですか?」。隊員の声掛けにも反応が鈍い。
男性の不自然な動作から目が見えないこともうかがえる。
だが、周囲を見渡しても通報者らしき人影はない。
それでも親身に話し掛ける隊員に男性はようやく口を開き、置き去りの経緯を説明した。

 当時の状況を知る消防関係者は「途方に暮れた様子で落ち着きもなかった。
しかも38度近い熱があり、事情を聴いた後、すぐに転院先の病院に搬送した」と証言する。

 一方、別の隊員は男性の説明の真偽を確かめるため、半信半疑で豊川総合病院に電話をかけた。
すると意外な答えが返ってきた。「(男性の申告は)すべて事実です」。
応対した職員は淡々と説明したが、隊員の表情は一変した。

 「信じられない」

 その後、消防からの110番通報で西成署員も駆け付け、男性を車で連れ回し、置き去りに関与した4人から任意で事情聴取。
4人は一連の事実を認めたという。

 病院側の説明によると、男性は糖尿病で約7年前から入院。
インシュリンやビタミン剤などによる治療が必要だったが、介助者なしで日常生活を送ることができたため、別の施設への転院を紹介する病院側の打診を男性は断り続けていたという。
また、入院費の支払いが約2年半前から滞り、看護師に大声を上げるなどのトラブルもあるなど病院側では対応に苦慮していたという。

 置き去りにされた日は午後1時ごろ、職員から院長に「男性の引き取り先が見つかりました」との報告があり、職員4人が車に同乗し、住吉区内の男性の自宅へ向かった。
しかし、職員が自宅にいた内縁関係の女性に引き取りを願い出ると、女性は「どうしても困る」と拒絶。最後は男性本人にも「ごめんね。私は無理やから、引き取られへんから」と話し、その言葉を男性はじっと聞いていたという。

 院長が職員による置き去りを知ったのはそれから数時間後。警察や消防からの問い合わせや、関係職員への聞き取りなどで院内は大混乱に陥っていた。

 元最高検検事の土本武司白鴎大法科大学院長(刑事法)は
「家族が病人を放置するケースはあるが、病院関係者が置き去りにした事件は聞いたことがない。
今回の場合、内縁関係の女性が引き取りを拒否した以上、保護責任は病院にある。
例え病院職員が119番通報したとしても犯罪は成立するし、いやしくも患者を公園に放置するのは医学倫理に反する行為だ」と指摘している。

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11月X日

新聞にこういう記事があった。

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初の「自殺対策白書」 9年連続3万人超

11月9日9時58分配信 産経新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071109-00000905-san-soci

 政府は9日の閣議で、自殺の現状や政府の自殺対策の実施状況をまとめた平成19年版「自殺対策白書」を決定した。
昨年10月施行の「自殺対策基本法」に基づき、国会に提出する初の年次報告となる。
自殺者数は、平成10年に前年より約8500人急増して以来9年連続して3万人超。
その7割が男性で、とくに急増した大半の部分を45〜64歳までの中高年男性が占めている
 白書では、中高年男性の自殺者の急増について、人口増や高齢化に加え、バブル崩壊といった経済的変更が働き盛りの男性に強く影響していると分析。
とくに社会の大きな変化を小・中学生のころに経験した昭和一桁(けた)から15年生まれまでの世代は、社会的変化の節目で高い自殺死亡率を占めるという世代的特徴があるとしている。
 また、今年6月に閣議決定した「自殺総合対策大綱」に沿って、自殺を「追い込まれた末の死」「防げることができる」「自殺を考えている人はサインを発している」という3つの基本認識の下、政府が進めている9項目、46の重点的な自殺対策についてまとめている。
平成28年までに、17年の自殺死亡率の20%以上を減少させ、急増前の2万4000人台の水準まで下げることを目標に掲げている
 平成18年の自殺の状況は、約半数を「健康問題」が占め、次いで「経済・生活問題」、「家庭問題」などとなっている。高度成長期やバブル期に自殺者が減少する一方、円高不況下の昭和60年前後やバブル崩壊後に増加しており、>失業率と自殺死亡率との間に相関関係があることも指摘している。
 さらに多重債務者や鬱病(うつびょう)患者などに対する自治体や民間団体、大学における34の自殺予防の取り組みや遺族の声も紹介。
すべての都道府県に自殺対策の検討の場として「自殺対策連絡協議会」の設置を要請しているが、今年9月現在、42都道府県に設置済みで、19年度中にすべての都道府県と政令指定都市に設置が予定されている。

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単純に考えれば、自殺対策の一番は、景気回復でしょう。
前にも書いたけれど、内閣の閣僚の中から自殺者が出たと言うことは、とても重大なことです。
最近では、安倍元首相もうつ病ではないかと述べている精神科医もいます。
一つの内閣から、次々とそういう人が出るというのは、内閣や自民党の中に、病気を生み出す原因があると考えられます。
是非とも、内閣の中に「自殺対策連絡協議会」を設置して、都道府県の活動のモデルになるような取り組みをしてもらいたいと思います。
冗談ではなく、本当にそう思います。



11月X日

医院のメールアドレスを公開しているので、色々な所からメールが来ます。
一番多いのは、迷惑メールです。
油断をしていると、受信トレイの未開封メールがすぐに300通ぐらいになってしまいます。
中身を見ないで、怪しげなメールはすべて削除しています。
それで、必要なメールも削除している可能性はあります。
メールを下さる方は、必ず件名に日本語で用件を明記して下さい。
ただし、文字化けしている場合は、すべて削除しています。
ご注意ください。

さて、メールを下さる方の中に、用件として
「独居老人の告白」
「独居老人の愚痴」
「独居老人の寝言」
「爺ちゃんの不安」
などという件名を使う方があります。
しかし、私と同年の人なのです。
もう私も、「独居老人」を自認すべき年なんでしょうか。
色々と考えされられますねえ。



11月X日

民主党の小沢代表が突然辞任すると言い出した。
説明を聞いてもよくわからない。
いろいろと解説をする人もいるけれど、どこまで本当なのだろう。
自民党は参議院選挙で負けて、格差問題に少しは手を付けないとと思ったようだ。
肝炎問題で厚生労働省が責任を認めたり、高齢者の医療負担の延期が決まったり、福祉切り捨てに見直しの雰囲気が出てきた。
障害者自立支援法も来年の春に見直しされるだろうという噂だった。
ところが、これだ。
民主党が自滅すれば、自民党が自信を取り戻して、またぞろ福祉切り捨てに動くのではないか。
嫌な気分になってしまう。



11月X日

このところ、ネットの世界で、高知白バイ衝突死問題というのが、話題になっています。
スクールバスと白バイが衝突し、白バイ運転手が死亡したため、バスの運転手が業務上過失致死で逮捕され、禁固一年4ヶ月の判決を受けた事件です。
警察と検察、裁判官が結束して、バス運転手に罪をなすりつけたという評価が出ているのです。
詳しくは、ネットのHPを見て頂くとわかります。
それにしても、色々疑問の多い事件です。
これから世論がどの程度盛り上がるのか、いろいろ考えさせられる話題です。
詳しくは下記のサイトをご覧下さい。


(高知白バイ死亡事故関連リンク)

「高知白バイ死亡事故 証拠捏造疑惑が浮上」 1/2
http://jp.youtube.com/watch?v=cHAC5-Qi-Ns

「高知白バイ死亡事故 証拠捏造疑惑が浮上」 2/2
http://jp.youtube.com/watch?v=DCZAXCKoi1g

「雑草魂」(元バス運転手・片岡さん本人のブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/zassou1954

「冤罪事件進行中」(支援者による情報ブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/littlemonky737

映像ニュース(KSB瀬戸内海放送)

http://www.ksb.co.jp/newsweb/indextable.asp?tid=4&sid=7



11月X日

リタリンを使っているナルコレプシーの患者さんから、リタリンがいつ打ち切られるかと思うと、
不安で、すっかりうつ状態になってしまったという話を聞きました。
何とも言えないのですが、乱暴なやりかたで、実際に被害者が出てきているのを知ると、
本当に困ったことだと思います。
政府・厚生労働省はC型肝炎の被害者救済の方向に動くらしいですが、
目立たない部分にも、もっと注意をはらってもらいたいものです。



10月X日

インターネットを見ているとこういう報道がありました。

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2007/10/30-20:23 診療報酬引き下げへ=来年度予算で財務省方針

財務省は30日、2008年度の予算編成で、医師の給与などとして医療機関に支払う診療報酬を削減する方針を固めた。医療機関側は厳しい現場の実態を挙げて増額を求めているが、同省は「医師の給与は依然高く、業務の合理化余地はある」と判断した。薬価部分を含め3.16%となった前回並みの削減幅を念頭に、厚生労働省や与党と調整に入る。
 財務省によると、06年度の医療費は33兆円。このうち国・地方の公費負担は11.2兆円と、3分の1を占める。制度改正を行わなければ、高齢化に伴い医療費は毎年3〜4%増え続け、25年度には56兆円に膨らむ見込みだ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2007103001013
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「医師の給与は依然高く、業務の合理化余地はある」というのはどういうことなのでしょうか。
こういうことをしていると、優秀な人材は医療分野には来なくなるでしょうね。
当然モラルは低下するし、医療の質も低下します。
かってのソ連では医療関係者の地位が低く、所得も低かったそうです。
医者の社会的地位は、小学校の先生より下でした。
高いのは官僚、マスコミ関係者です。
日本も、昔のソ連のようになるのでしょうか。
年間30兆円とは、日本の国の中でもパチンコ産業に匹敵する市場らしいです。
葬儀産業は15兆円。
そういえば、精神医療の市場は、100円ライターの市場規模に匹敵するという話を聞いたことがあります。
社会的に見ると、今の規模は大きすぎるというのでしょうかね。
色々と考えさせられることの多いこのごろです。



10月X日

患者さん 「先生、私と先生はどうしてこんなに話が合うのでしょう。」
私     「そうですね。人間同士の話ではないからでしょう。」
患者さん 「え!人間じゃない。では、わたしはいったい何なのでしょう。」
私     「そうですね。貴女は野に咲く野菊でしょう。」
患者さん 「なるほど。それでは、先生は野菊を見ているモグラですね。」
私     「・・・・・・!?」



10月X日




表紙に使った虹の写真です。
左端に見える屋根の右側から、かすかに第二の虹が見えるのですが、
ちょっと無理でしょうか。
第一の虹と色が逆転しているので、右端が赤で、左端が紫です。
心眼で見えるか?見えないか?



10月X日

今日は、リタリンを発売しているN社から、担当者が説明に来ました。
リタリンに関して、日頃感じていることを話したのですが、
「ご無理ごもっとも。早速本社に伝えます。ただ、うつ病が適応からはずれることは、決定済みです。」と述べるだけ。
それはそうなのだろうけど、何とも手応えがない。
クレーム担当のベテラン社員が窓口に出てきたみたいな対応なのです。
会社の末端の職員にはどうしようも無いのかも知れないけれど、ちょっとマニュアル通り過ぎるのではないかと思いました。


10月X日

リタリンというクスリが、覚醒剤代わりに乱用されているという話は以前からありました。
特に、インターネットでそういう情報が出てからは、自分も飲んでみたいという人が、病気を装って受診する事がありました。
何しろ、症状を具体的に訴える前に、「友達から聞いたのですが、私の症状にはリタリンというクスリが効くそうです。是非、出して下さい。」などと言うので、それなりに予想はつきます。
「まず、一般的なお薬から試してみましょう。」と提案すると、「リタリンが良い。」の一点張りで、トラブルになることもありました。
それで、私の医院では原則的にリタリンは処方しないことにしました。
それでも、時々希望者があります。
そんな中で、急にリタリンの適応症からうつ病が削られることになりました。
私は、うつ病にリタリンを使う必要性を感じていませんが、中にはどうしても必要な患者さんがあるかもしれません。
そういう実態の調査も何もなく、審議会を一回開いただけで、1〜2週間で使用中止というのは乱暴な話だと思います。

一方で新薬の承認を早くするという話も出ています。
何でも早ければ良いというものではないでしょう。
以前からあったことですが、安定して効果があって、それなりに良い薬だなあと思っても、薬価が下がって、製薬会社の利益がなくなると、新たな副作用が見つかったなどと言って、製造中止になることがありました。
また、最近のクスリは、発売前後の宣伝が行きすぎのように思うこともあります。
医者が使ってみて、ある程度評価してから、本格的に使い出すという前に、宣伝を見た患者さんから「あのクスリを使って下さい。」などと言われることも多いです。
そういうクスリは薬価が高くて、薬屋は「ぼろもうけ」しているのではないか思うこともあります。
日本の医療費は高いと言いますが、新薬などで日本の薬価が世界一高いという例もあります。
医療費圧縮の被害を日本の患者さんが受けて、一方で儲けを稼いでいるのは、外国の製薬会社なのですが。
不条理ですねえ。



10月X日

村上龍がビデオで障害者自立支援法について述べています。
自立支援という言葉がまやかしであるという話なのですが、
実際の言葉と内実がずれるということは、言葉の力が失われていくことで、
これは大変な問題ですね。
平和の名で、戦争が起こり、戦争とは平和のことだったり、
自由とは強制を意味したりすれば、物事を考え事ができなくなります。



10月X日

毎度、医療費問題でお騒がせします。
毎日新聞におもしろい調査が載っていたので、ご紹介します。


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毎日世論調査:全国の6割が「医師不足」認識

 医師は全国的に不足していると考える人が6割に達することが、毎日新聞が先月実施した世論調査で分かった。
身近で医師不足を実感する人も4割に上る。
国は「地域や診療科によっては不足しているが、全体としては足りている」との姿勢で医師数抑制策を続けているが、医師不足感は強まっており、政策転換も求められそうだ。

 医師数については、61%が「全国的に足りない」と回答。
「一部の地方や診療科では足りないが全体では十分」は34%で、「全国的に多い」は2%。
大都市や町村部など都市規模別で見ても、傾向は変わらなかった。
実際、日本の人口当たりの医師数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国中最低レベルだ。

 「身近で医師不足を実感することがある」という人が39%に上る。
実感する場面(複数回答)は、「診察の待ち時間が長くなった」が66%で最も多く、▽近くで診察が受けられない32%▽診察にかける時間が短くなった27%▽診察を担当する医師が代わった25%▽診察予約や手術の待ち期間が延びた23%−−が続いた。

 一方、日本の国民医療費(約30兆円)については、「高い」が63%で、「安い」は23%。対GDP(国内総生産)比でみた国民医療費は先進国中最低レベルだが、「現状程度でよい」が32%で、「さらに削減を」が29%で続く。
「増やすべきだ」は28%だった。

 調査はアフラックの協力を得て9月7〜9日、全国の20歳以上の男女4581人を対象に実施した。回答者は2504人で、回収率は55%。【鯨岡秀紀】


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医者不足だが、医療費をあげる必要はないという話です。
論理的に成り立たないですね。
どうして、こんな話になるのか。
マスコミが無責任なイメージ操作を行っているからでしょう。
実に困ったものです。



10月X日

医療関係者の話を聞いていると、医療費を圧縮しようとする流れの中で、今後の医療に対して、楽観的なことを述べる人はいない。
日本の医療は遅かれ早かれ崩壊すると断言する人もいる。
過去の医療のパターンや教育のあり方から考えると、未来が暗いものに見えるのは仕方がないかもしれない。
しかし、若い研修医と話していると、そういう悲観論を持つ人はいない。
与えられた場で、自分なりの腕を振るいたいと張り切っている人ばかりだ。

未来がどうなるか、わかっているようで、わからないのが本当だろう。
医療の現場が厳しいものになれば、優秀な人材は集まらなくなり、
結局不利益をこうむるのは国民自身だからだ。



10月X日

福田総理大臣になって、障害者自立支援法の見直しが行われる可能性が出てきました。
この法律の実施にあたっては、これほど拙速な制度はないだろうと思えるくらい、あわただしかった。
制度が開始されているのに、必要な書類が届いていない。
精神障害者の障害区分認定の診断書が身体疾患のそれを流用したものであったり、
とても信じられないような事態だった。
大混乱の中で、今だにその影響が収まっていないのに、見直しだというのだからびっくりする。

最初の段階で、準備不足と指摘されていたのに強行して、今度は見直しだというのだから、何とも言いようがない。
反対運動のために、どれほどのエネルギーや時間、金銭が無駄に使われたかしれない。
やる気を失った人々も多いだろう。
そういうものの中には、二度と取り戻せない物もあるだろう。

官僚が机の上で思いついたことを、「改革を止めるな。」などという呪文を唱えて押し切り、後は知らん顔。
官僚というものが、どれくらいいい加減で、無責任か、こんなに見せつけられたことはない。
二大政党になると、国政レベルでこういう無責任が、さらに拡大していくのではないだろうか。
「それは、○○政権の時代の話です。」と言えば、すべてが免罪されるようなパターンができてしまうのではないだろうか。
実に、疑わしいと思う。



9月X日


安倍総理大臣が辞任して、福田総理大臣となったが、私は松岡農林水産大臣が自殺したときから、安倍内閣は長続きしないだろうと感じていた。
自分たちの間から自殺者を出すような人々が、国家の指導者であるというのは、自然なことなのだろうか。
とてもそうとは思えない。
閣僚の間から、死者が出るというのは、大変なことだろう。
背景に、色々な政治的な力が働いていたという話もあるが、精神医学的に見れば、うつ病またはうつ状態による自殺だと言える。
一番考えられるのは、過労自殺だろう。
自分たち自身の健康管理ができない。
閣僚が相互に健康確認もできない状態で、どうして国家の運営のようなストレスの多い作業を責任を持ってやれるだろうか。
とても疑問だ。
その後の報道を見ても、松岡大臣の自殺をきっかけにして、自殺対策に本腰を入れようと内閣が一丸となって取り組むという姿勢でも出ればまだしも、そんな気配はなかったようだ。
せいぜいが、自殺対策の予算を増やすという程度だろう。
そういう姿勢では、物事の表面を撫でているだけだ。
自殺者が出ると言うことで、組織がどれだけ傷つくか、自分たちの無力を暴かれるかと考えると、そうした内閣が継続しないのは当然だろう。
それだけでなく、今や松岡大臣の話題は、ほとんど出てこない。
自民党にしても、公明党にしても、与党は深く傷ついていると思うのだが。




9月X日

Hpを見ていたら、大学病院が大変なことになっているという話がありました。
「白い巨塔」が「白い廃墟」になるというのだから、衝撃的です。
「改革」の嵐が吹き荒れて、非合理的な組織や運営方法は見直されています。
「改革」が必要な場合もあるが、世の中には、一見非合理的に見えて、
長い尺度で見ると、それなりの辻褄があっていることもあります。
目先の合理性だけで判断すると、とんでもない結果が生ずることもあるでしょう。
根拠の乏しい「改革」は疑って懸かるのが、保守的思想だとしたら、
現在の日本には保守的思想が存在を許されなくなっているようです。
保守的思想からの批判を受けない「改革」は、単なる新しい物好きで、
とても改革とは言えません。


9月X日

知人の結婚式で、東京へ出かけました。
前回、ひまわり寿司のことを書いたので、今回はガイドブックなどでチェックして、「銚子丸」という回転寿司に行ってみました。

ネタが大きい、新鮮、安いというのが第一印象です。
何でも300円ぐらいまでです。
大トロが500円ですが、それでも二貫はちょっと食べきれないボリュームです。
大トロなどひごろ食べません。
家に帰ってからネットでチェックしました。
銚子丸の紹介記事がありました。

経営者のインタビューがあったので、お店で感じたこととつきあわせてみました。
まず、「経営とは理念を明確にすること」だと書いてありました。

経営が行き詰まったときに、顧客の満足とは何かを真剣に自問したそうです。
 「例えば、それまでは握り寿司1個分のマグロのネタを20グラムで提供していたとすると、利益率を上げたいがために18グラムにするような考えで経営し、それを20年間繰り返してきました。しかしこれは全く逆。20グラムだったネタを22グラムで提供しなければ、お客様に喜んでいただくことなどできないということに初めて気がついたのです」(堀地社長)

「だが、これを実行するにはシビアな原価計算が不可欠になる。堀地社長は、「だから他人からは見えない水の下で、一生懸命にアヒルのように漕ぐ。これを地道にやってこそ経営者だ」と言う。人に喜んでもらうには、見えない努力をどれだけしているかが問われるのである。」

「2〜3キロ商圏内の人口12万人を基準」として、経営規模を限定するのだそうです。
当たり前かも知れませんが、評判になるお店は、やはり色々と努力しているのですね。



9月X日

先日、外来を受診した患者さんは、わたしが以前に出した本の読者でした。
「先生の本を読んで、診てもらおう、アドバイスしてもらおうと思って来ましたけど。
全然、イメージが違いました。」
「で、どう違いましたか。」
「本を読んだときは、柔軟で受容性のある父性を感じました。
それでいて、しっかりと芯が通っている。
来てみたら、単なる隣のおっちゃんやったですね。」
「・・・・」



9月X日

河合隼雄氏の追悼式から帰って少し色々なことを考えた。
一つは、会場に座席が3000用意されていて、実際の参加者が2000人だったことだ。
会場の両脇の椅子が全部空いていた。
企画者の想定がずれたのか、人は死んでしまうと影響力がなくなるのか、色々考えた。
そして、思いついたのは、その席にも座っていた人がいたのではないかということだ。
それは、河合氏にお世話になったり、恩恵を受けたのに、出席できなかった人たちの席だったのではないかということだ。
つまり、河合氏に治療を受けたり、支えられたり、間接的に助けてもらった人たちのことだ。
医者が死んで、患者がお葬式に来るだろうか。
身体の病気の場合はそういうこともあるかもしれないが、心の病気ではまずあるまい。
あったとしても、例外的だろう。
感謝しながらも、葬儀には参加せず、どこかで哀悼の気持ちをかみしめているだろう。
河合氏に助けてもらった人の中にも、そういう人は多いだろう。
追悼式に色々な人が思い出を語ったが、もっと熱烈な思いを語れる人たちは沢山いたことだろう。
空いていた1000の席には、その人たちが座っていたのだと考えてみた。
あるいは、主催者側の想定とは違うのかもしれないが、そうだとすれば、一層感慨深い。



9月X日

今日は、河合隼雄氏の追悼式が国際会議場で行われました。
直接お話ししたことは、一回だけですが、手紙のやりとりをしたこともあり、
多少のご縁がある感じです。

会場は2000名の参加だったそうです。
追悼の言葉で、梅原猛さんの話が印象に残りました。
梅原さんは、自分が亡くなったときに、葬儀委員長になってもらう人は、
河合隼雄さんと決めていたそうです。
その河合さんが、先に亡くなるとは、と吐息のように呼びかけていました。



写真は追悼式の最後に、参加者が献花しているところです。
私も、一本の白いカーネーションを捧げてきました。




9月X日

MIXIの記事を勝手に引用します。
医療をめぐる報道には現実離れした要求を伴っているものがあります。
こういう報道が、いったいどういう目的を持っているものなのか、
本当に疑ってしまいます。
大変だ、大変だと言いながら、実際は医療を崩壊させようとしているのではないかと
信じている人も多いです。
私などは、同業者であっても、当直でほとんど眠らず、次の日に通常勤務している
医者の状況を見ると、本当に頭が下がります。
私も若い頃は、連続当直を何度かやりましたが、56時間連続勤務というのもそれは大変です。
終わったら、本当に何のやる気もありません。
出し殻です。
産婦人科などでは、月に15日当直をしている人の話を聞いたことがありますが、
もう殺人的です。
そういう人たちが、いわれのない非難を受けて、「それならもうやめます。」と言い出したら、
日本の医療は本当に成立しなくなります。
そういう現実を知っているのでしょうかねえ。


以下引用です。

==============引用始め===========

−医療報道に脱力する−

■妊婦たらい回し 一刻も早い産科救急の整備を(読売新聞 - 08月31日 01:42)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=285597&media_id=20

各社に共通する論調は
@複数の施設が医療を拒否した
A行政の整備が急務だ
というもの。
とくに@は「実はベッドが1床空いていた」など既に「犯人探し」の色彩が色濃い。当直医の勤務状況まで調べ上げている。

肝心の胎児母体の容態の記述は少なく、医療者でなくとも真っ先に気になる胎児週数さえ、3ヶ月とか20週とかはっきりしない。たとえば20週だったとして、その児を救うのにどれだけの人的物的資源が必要かという説明は皆無だ。

設備としてのNICUは不可欠。
担当産科医・新生児小児科医・そして麻酔科医も必要。加えて専門的なトレーニングを積んだナースも。
それだけの環境が深夜の3時に必要とされ、
それでもなお救命が困難という状況を、書き手はなぜ提示しないのだろう。

この困難な状況の理解なく記事を書いているとするなら、
それだけで文筆のプロフェッショナルとしての資質を疑うし、
逆に十分な理解のうえでの記事であるなら、
彼らのやり方は、卑怯だ。

知識も背景も与えられずにこの記事を読めば、
誰だって、医療者の怠慢であり過誤であると理解する。
そのように読まれることを初めから意図された文章だ。
すでに現状にそぐわないと認知された筈の、
「たらい回し」なる表現まで復活している。

おそらく彼らは、十分な理解のうえでやっていると察する。
当直医の勤務状況までご存知なのだから。
しかし彼らは決して、
「深夜の3時に複数の施設の産科従事者たちが
急患対応もできないほど奮闘していた」とは表現しない。
もちろん、現場の悔しさも。

Aの議論も、やりたければやればいい。
どんなにシステムを論じたって、
昨年の大淀病院のように
無責任な報道以後に閉鎖を余儀なくされる施設が、
今後増加することに変わりはない。


=============引用終わり=======


8月X日

医師会の集まりに行ってみました。
私の座ったテーブルのグループは70代の人が三人。その他が四人。
医師会の中で、私は若い方です。
「75才を過ぎると仕事はきつねえ。」などというのが話題です。
昔話がらみで、最近の医療界はどん底だという話も出ました。
それに対して、反対意見を言う人もありました。
「もっと、悪くなるだろう。」
希望を語る人はいません。
「30〜40年に比べると、仕事の手間は四倍だ。ともかく書類が増えた。そのくせ、利益率は以前の一割ぐらいかなあ。」
「バブルの頃は、儲かりすぎで、そのために医療全体もおかしくなったなあ。」
「昔は、医者になって儲けようなんて医者はいなかったなあ。親父が医者だから、自然と医者になったという感じだった。昔にもどっただけだよ。」
「しかし、そのころは、儲からなくても、医者と言えば地域で尊敬されたもんだ。
今度は、儲からなくなったから昔に戻っただけだと言うけれど、今はだれも医者を尊敬なんかしない。
昔にはもう、戻らないよ。」
ともかく、医療に希望を語っている人はいませんでした。



8月X日

京都へ引っ越ししてきてから、30年を越しましたが、最初街を歩いてびっくりしたのは、信じられない看板があったことです。
「腐って高い、魚屋」とか、「京都で二番目に高い卵屋」という看板があったことです。
お店の人に、「これホントですか?」と聞いたら、
「そんなことを聞く人に、売るもんなんかないよ。さっさと、帰りな。」と怒られました。
客というのは、お店の人に頭を下げて、商品を売ってもらうものらしいです。
それも、「腐って、高い」と看板に書いてあるのですから、文句の言いようがありません。
商品に自信があるから、そういう看板を出していたのか、単なるあまのじゃくだったのか、
今となっては確かめようもありません。

飲み屋に入ろうとしたら、鍵がかかっていて、ドアを動かしていたら、
中から「規則守って頂けますか?」と質問され、
内容も確認しないで、「はい。」と言わないと、ドアを開けてもらえないお店もありました。
飲みながら、仕事の話をすると。
「ストップ!このお店では、仕事の話をしてはいけません。」
ご主人が楽しく、料理するのを邪魔する話題はタブーなのです。

30年後、そういうお店はもうありませんね。
何だか、さみしい気もしますね。

「冷たい対応、効かないクスリ、料金割高、○○診療所」
なんて、看板を出していたら、患者さんは誰も来てくれないでしょうね。



8月X日

今日は、おばあさんがやって来られました。
認知症気味のようなので、診断してもらいたいと、ご家族と一緒です。
「では、お名前は、何とおっしゃいますか?」
「○○○○」
「では、ご住所は?」
「○○○○」
「生年月日は?」
「昭和8年8月8日」
「では、今日は何年の何月何日でしょうか?」
「さっきから言ってますよ。昭和8年8月8日。」
「昭和ではなく、今日は何年ですか?」
「うるさいなあ、昭和8年8月8日。何遍言わすのや。」
「では、本日は何年何月何日でしょう。」
「年寄りを馬鹿にするのか。」
「馬鹿にはしておりません。年号をお尋ねしています。」
「そうですな。年寄りやから忘れましたね。」
「平成というのは、ごぞんじですか。」
「そうそう、それですね。確か平成10何年でしたかな。確か、15年か16年か。」
「今年は、平成19年ですね。」
「そうか、そんなになったか。」
「では、お年をお尋ねします。」
「エーと、19引く8は、11か。11ですね。そんなに若かったのか。」
「昭和と平成は、ちょっと違うのですが。」
「知っているのなら、人に聞かなくてもどうですかいな。いじわるやなあ。」
「では、もう一度、年齢はいくつですか?」
「えーと。11才。」
「うーん。では、ご兄姉は何人ですか?」
「まあ、四、五人です」
「正確には、何人でしたか。」
「えーと。四、五人ですね。」
「正確にはわからないですか。」
「年寄りやからね。」
「ご兄姉の何番目ですか。」
「わからんね。年寄りやから。」
「次は、計算ですよ。3+2は?」
「5ですね。」
「5+8は?」
「13」
「では、100−7は?」
「93。」
「93ー7は?」
「私はまだ、93にはなってませんがね。年寄りを馬鹿にしないでください。」
「これは、また失礼しました。」

そういうわけで、お年寄りの診察は時間がかかります。



7月X日

東京の御茶の水でシンポジウムがあったので、参加しました。
あいにくの台風で、参加者も予想より少なかったようです。
夕食は、御茶の水駅近くの回転寿司に入りました。
何でも一皿140円。
少し高いものは200円で、焼きホタテなど数種。
次が、300円の中トロや生ホタテ。
一番が大トロで500円。
どれだけ食べても2000円にもなりません。
台風のせいか、お客が少なくて、お寿司が回っていませんでした。
回っているのは、カップ酒だけ。
お寿司の回っていない回転寿司。
ちょっと不思議でした。
お寿司屋の名前は「ひまわり寿司」。
回転寿司だから「ひまわり」なのか?

まあ、まあだったかなあと思って、家に帰ってからネットで見ると、
ひまわり寿司の評判はそれほど良くなくて、東京での回転寿司一位は、「回し寿司 活 目黒店」でした。

事前にチェックしとけば良かったなあと思いました。




7月X日

今日はある患者さんから、以前に受け持ってもらった主治医の話を聞かせてもらいました。
何人かの、先生に受け持ってもらったのですが、その中で特別の先生があったそうです。
その先生が亡くなって何年も経つのに、その先生の言葉を思い出すそうです。
遺言のようなものなのだそうです。
「あなたも頑張りなさいよ。」とか、何の変哲も無い言葉のようですが、
その言葉を語った時の先生の様子とともに思い出すそうです。

患者さんによっては、主治医を何度も変える人があります。
心ならずも、変わらざるをえない場合もあります。
そういう中で、こころに残る先生に出会えたその人は幸せだなと思います。
大切に心の中に暖めて行ってもらいたいものです。



7月X日

最近の新聞に抗うつ剤のパキシルが自殺を引き起こすというニュースが載っていました。
うつの改善期に自殺が起こることはよく知られています。
改善が見込まれたときこそ、要注意とされています。
パキシルの使用量と自殺の増加に関連性があるのかどうかわかりませんが、
慎重な投与が必要だ思います。
最近、うつ病が一般に認知されてきたので、ご自分からうつ病として自己診断のうえ、精神科を受診する人も増えています。
ところが、それと並行して一般科(内科や外科など)を受診するうつ病の患者さんも増えてきています。
その分パキシルの使用量も色々な科で増えていると思います。
軽症のうつ病が一般科で治療されることがおかしいとは思いませんが、
専門家の管理下で治療する必要のあるケースも存在しています。
うつ病が一般に認知され、特別な病気でないと受け止められるのは良いのですが、
病気である以上、安易な受け止め方が危険であることは、指摘する必要があります。
パキシルの危険性として報道されているものが、パキシルだけの問題なのか、
うつ病治療への警告的な意味があるのか、専門的な調査の結果を待ちたいと思います。




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