自分
きもとけいし
感じていた。
自分が周囲の人々と違う存在であることを感じていた。
知られている。
漏れている。
自分が頭の中で考えている内容が周囲の皆に知られている。
自分が心の中で想っている内容が周囲の皆に漏れている。
思念が皆に知られている。
自分の思念が皆に漏れている。
自分はもう三十も過ぎたいい大人である。
無職で障害者である。
自分は精神障害者だ。
幼い頃からなぜ、自分だけが特別扱いされていたか、わかったような気がする。
まわりの大人たちが不意に見せる、軽蔑したような蔑視を感じるわけがわかったような気がする。
なぜ今までずっとこの年齢になっても恋人ができず、誰にも愛された記憶が無いわけだ。
自分は人間ではない。
自分は人間以外の存在なのだ。
人であって人で無し。
自分は泣いた。
自分は泣いた。
夜の真ん中に号泣した。
物にあたった、物を壊した。
泣いた。
電車に乗っていた。
乗客はまばらに乗っている。
午前の通勤時間をいずれかずれた時間帯。
自分は緊張していた。
自分は緊張していた。
考えてはいけない。
考えてはいけない考えていけないと想うほど
緊張感は高まり心臓の鼓動は早さを増す。
乗客たちは薄笑いを浮かべている。
ときどき視線が合う乗客もいる。
考えてはいけないっ。
考えてはいけないっ。
考えてはいけないっ。
ああ、自分には、隠し事が出来ないっ。
自分だけが知らなくて、周囲は知っていた。
自分だけが知らなくて、周囲は知っていた。
自分は人間ではない
自分は人間ではないのだ。
人ではないのだ。
自分は精神障害者であるが、それなのに、これほど狂気に駆られる恐怖感は始めてである。
自分は狂ったらいい。
自分は徹底的に狂って狂って壊れればいい。
ははははは。
ははははははは。
はははは。
哀しみと哀しみと孤独と狂気と。
自分が人でない存在で生きていくことは辛い。
自分にしんどくて辛くて苦しくて悲しい。
死のう。
死ぬ。
自分が平穏を得るためには自分で自分を殺めるしんない。
そのままにしても狂い死にしていく、遅かれ早かれ。
自分は死んだほうがいい
自分は死ぬ。
自分は決めたのだ。
おわり
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