怪獣

                  きもとけいし

あるところに怪獣がいました。
とても大きな身体をした怪獣でした。
怪獣はちからが強くてなんでも壊してしまうことができました。
怪獣は口から炎を吐くこともできまして、なんでも燃やしてしまうこともできました。
そんな大きな身体をして、とても強い力を持っている怪獣を人々は怖がりました。
そして人々は怪獣との付き合いを持て余しぎみになると言うか、はっきり言って嫌だったのです。
なぜなら、怪獣は歩くだけで建物や物を壊してしまいます。
なぜなら、怪獣はたくさんたくさん食べ物を平らげてしまい人々の食べ物が足りなくなります。
なぜなら、怪獣は眠るときものすごい鼾をかいて人々安眠することが出来ません。
なぜなら、怪獣は町の人々と上手につき合おうとしません。
なぜなら、怪獣は気まぐれで人々は対処に困ってしまい大変です。
相手はなんでも壊してしまう怪獣ですから。
相手はなんでも燃やしてしまう怪獣ですから。
でも怪獣にはひとつだけいいところもありました。
怪獣は幼い子供たちや若い女性に優しいことです。
幼い子供たちは怪獣の背びれに乗っかって遊んだり、若い女性たちの歌声は怪獣のこころを潤しました。
幼い子供たちや若い女性たちに怪獣は優しい瞳で見つめます。
しかし怪獣は幼い子供たちや若い女性たちにも、こころを全部は開けようともしませんでした。
怪獣は毎日のほとんどをひとりで過ごしていました。
怪獣は孤独でした。
そんな怪獣のことをかわいそうと思っているひとびとも少なくはありませんでした。
怪獣は孤独で寂しい年月を重ねて行きます。
その寂しい年月を重ねていくほど、町の人々の怪獣に対する不満はつのっていきました。
町の人々は何回も何回も怪獣対策の会議を開きました。
怪獣を殺してしまうべきだ、と言う過激な意見もでたり、怪獣は好きで怪獣に産まれたのではないのだから私たちがもっと寛容にならなければならない、と言う意見も出たりしました。
圧倒的に多い意見は怪獣をこの町から追い出してしまえ、と言う意見でした。
私たちは怪獣のためにどれだけ迷惑をかけられているかわからない、そんな怪獣といっしょに暮らして行けないっ、と言うことでした。
そんなある日、町に大きな地震が襲いました。
どこからか火が出て町は三分の一が燃えてしまいました。
これは怪獣のしわざだと言う噂がどこからか出て広まりました。
こころある人々はそうは思いません、あれは自然の災害、地震が町を襲い誰かの不審火で町が焼失したことはわかっていましたから。
町の人々は軍隊に相談しました。
どうか軍隊の力で怪獣を退治してくださいと。
そして怪獣が寝床にしている谷に強力なミサイルが十三発うちこまれました。
ミサイルは一発でも強力な破壊力を発揮します。
そのミサイルが十三発も怪獣の寝床の谷にうちこまれたのです。
これではいくらあの力の強い怪獣でも身体が持たないでしょう。
怪獣の死は確実でした。
軍隊の飛行機が怪獣の死を確認したと軍隊の本部に連絡してきました。 人々は拍手喝采しました。
しかし幼い子供たちと若い女性たちは怪獣の死を悲しみました。
何日も何日も幼い子供たちと若い女性たちは悲しみ続けました。
町の人々はそんな子供と女性たちを不憫に思って、街の一角に怪獣の記念碑を造りました。
町の人々は怪獣のこと想って出はなく、子供たちと若い女性たちのことを考えてのことです。
そして年月が過ぎていきました。
幼い子供たちは成長し、若い女性たちは結婚して家庭をもちました。
そしてみんな町の人々は怪獣のことを忘れてしまいました。
町は開けてきて都市となり、怪獣の記念碑はいつの日からか取り払われてその場所にはありませんでした。


   おわり



                    元へ戻る