(発熱に対して)

発熱自体による脱水などが食欲不振,不安,痙攣などを誘発させるため41℃以上の発熱は下げなければならない.発熱は感染に対する防御反応であり,解熱剤の使用はウイルスの存在を長引かせる.また診断を混乱させ,治療を中止し,かえって悪化させてしまう危険もある.副作用として,薬剤アレルギー,アスピリン喘息発作の誘発,低体温(メフェナム酸など),Reye症候群との関連性(アスピリン)などの懸念もある.実際は高熱のために苦しんでいる子供と不安な親を目前にすれば,解熱剤の使用もやむをえないと考えてしまうのが現実である.

(一般的処置)

1.環境

 まず安静と環境温度調節が必要であり,できるだけ患児を快適にさせることが原則である.室温は20〜25℃程度,湿度は60〜70%位が快適で,夏は直接送風に当らなければクーラーは効果的である.衣服は薄着にし,通常はパジャマだけで十分である.

2.物理的対応

 熱の上昇期などで,悪寒戦慄がする際には毛布などで保温し,反対に熱感が強い場合には水枕,氷嚢を太い動脈が表在部を走る頚部,腋下,鼠径部に当て冷却する.しかし実際にそれほど下がる訳ではなく,嫌がるのを無理に行うほどのものではない.少なくとも気分を良くしてあげることができれば十分である.また,タオルかスポンジで30℃程度のぬるま湯で身体を拭く方法もある.アルコール清拭は乳幼児では低体温の危険があり,緊急手術の準備など以外にはあまり行わない.

3.水分補給

 水分の補給も大切で,場合によっては補液だけでも下熱する.経口的には子供が好むジュース,カルピス,紅茶などを十分に飲ませ,食事は食欲が低下していても食べられる高カロリーで水分の多いミルクシェイク,スープ,アイスクリーム,プリン,ジュース,おじやなどは多少,無理強いしても摂取することができる.

(小児における解熱剤)

1.アセチルサリチル酸(アスピリン)

 従来は解熱剤の第一選択剤であったが,Reye症候群発症などとの関連性から使用が控えられ,特に欧米ではこの傾向が強く,イギリスでは解熱での使用を禁じている.わが国においては,厚生省は明確な因果関係は出せなかった.しかし,これらの結果から判断すると,少なくとも水痘,インフルエンザおよびその流行期には使用すべきではなく,単なる解熱剤として使用すべきではない.

2.アセトアミノフェン

 フェナセチンの誘導体であるが血液毒が少なく,アスピリンに代って小児における解熱剤の第一選択剤となりつつある.しかしアスピリンと違い,解熱作用はあるが抗炎症作用は期待できない.わが国では坐薬として繁用されているが,米国ではシロップ剤,ドロップ,細粒など小児用の剤型が多く市販されている.

3.イブプロフェン

 プロピオン酸誘導体でアセトアミノフェンに次いで広く使用され,特にアメリカではOTCで扱う解熱剤の中心となっている.通常の使用量は成人で500〜600mg/日,小児で5〜10mg/kg/日,坐剤として1回3〜6mg/kgで,アセトアミノフェンより解熱効果の持続が長い.

4.メフェナム酸

 フェナム酸の代表的な薬剤で解熱効果は強く,特にわが国では解熱剤のシロップ剤が少ないことから,本剤が比較的多く使用されている.しかし,アメリカ,ドイツ,カナダでは下痢,喘息の増悪,顆粒球減少症,血小板減少症などの副作用のため,小児への使用は安全性に疑問があることから認可されていない.

5.ジクロフェナック

 フェニル酢酸系の非ステロイド抗炎症剤で,リウマチ患者の鎮痛目的でしばしば使用される薬剤である.解熱,鎮痛,消炎作用が強力で即効性があり,しばしば坐剤は解熱目的で使用されている.

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