ライ症候群(REYE'S SYNDROME)

 ある種の急性ウイルス感染に続発する傾向のある急性脳症と内臓の脂肪浸潤をきたす症候群。

 ライ症候群は1963年に初めて独立した臨床症状と病理学的所見をもつ疾患として確立された。原因は不明であるが,ウイルス(例,インフルエンザA,およびB,水痘ウイルス),外因性毒素(例,Aspergillus flavusアフラトキシン),サリチル酸塩,そして内因性代謝異常が,関連あるいは相関する因子として示唆されている。

 この症候群はふつうは18歳未満の小児にみられるが,時として60から70歳代の患者の報告もある。米国では多くの症例は晩秋から冬にかけて発生している。散発例と同様に,地域的,時間的に集中して発生する例の記載がある。広範囲に及ぶ流行はインフルエンザと水痘に関連して発生している。EBウイルス,エンテロウイルス,ミキソウイルスは散発例と関係がある。タイでは,この症候群はアフラトキシン摂取と関係がある。同胞間では罹患率が上昇するということは記述されているが,環境因子(例,外因性毒素やウイルスに対し共通して暴露)や遺伝的素因(例,ある遺伝的な酵素欠損)によって家族内発生が説明できるかどうかは分かっていない。急性インフルエンザに罹患中のサリチル酸塩の使用はライ症候群が発生する危険率を35倍にまで高める。実際,18歳未満のサリチル酸塩の使用は,わずかな特殊な疾患を除いては,ライ症候群の発生の素因になるため危険であると考えられている。

症状と徴候

 この症候群の重症度には大きな幅があるが,二相性の症状によって特徴づけられる。初期にはウイルス感染,ふつうはURI(時には発疹を伴うこともある)が起こり,およそ6日後に悪性の悪心と嘔吐と精神状態の突然の変化によって発症する。水痘に引き続いて起こるときは発疹の4から5日目に脳症が発症する。精神状態の変化は軽度の健忘と著明な嗜眠から,見当識障害や精神障害といった症状が間歇的に発現するものにまで及ぶ。その見当識障害や精神障害はしばしば急速に,進行的な無反応,除皮質または除脳硬直,けいれん,弛緩,瞳孔の散大固定,呼吸停止によって現される深い昏睡へ進展する。神経学的な巣症状はふつうは現れない。肝腫大は症例の約40%にみられるが黄疸はまれである。

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