現代中国法の構造
一、基本的法律
中国全国人民代表大会(以下「全人代」という。)において可決した法律は、憲法を除いて、基本的法律(中文:基本法)と呼ばれている。例えば、民法通則、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、香港基本法及び国家機関の組織法などはその例である。基本的法律は上位の法律である。原則としてほかの法律・法令は憲法及び基本的法律に抵触してはいけない。もし全人代レベルですべての法律を時間をかけてじっくりと審議したり可決することができたら、法律間の整合性はもっとよくなるであろう。しかし、全人代は年に一度しか開会していないし、しかも開会期間が短いから、すべての立法を審議したり可決することは不可能である。
基本的法律という法的概念は中国の独特な立法構造によるものであり、日本法と異なるところでもある。
二、法律
全国人民代表大会は、常務委員会を常設している。二月に一回開会している全人代常務委員会は、基本的法律以外の法律を制定・審議・可決している。立法作業だけを見れば、日本の議会に相当するのは、全人代より、むしろその常務委員会である。全人代及びその常務委員会だけは法律を制定することができる。他の国家機関又は地方人民代表大会において作った規則は法律と言わない。
基本的法律として立法するか、普通の法律として立法するかについては、立法府は国又は共産党の立法政策によって判断する。
三、行政法規
国務院の制定・公布した法令は行政法規と呼ばれている。行政法規は、委任立法によって制定された場合、法律として機能することになる。しかもこのような場合は非常に多い。また行政法規は、裁判規範として認められている。これは日本の政令と異なるところである。
各主管官庁(部、委員会)が、国務院の承認を得て公布した規則も、行政法規である。各主管官庁が管轄権限に基づいて独自に制定した規則等は、中国語で「規章」と呼ばれている。これは日本の省令に相当する規則群である。主管官庁の作った規章は、行政法規ではないが、主管官庁の行政管理権限が強調されている現在においては、強い規制の機能をもっているから、無視できない。
四、地方法規
法律によれば、各省、自治区及び直轄市の人民代表大会及び地方法規の立法委任を受ける地方の人民代表大会は、地方法規を制定することができる。他の地方政府や地方機関は、地方法規を制定することができないが、地方の規則(中文:規章)を制定することができる。
地方法規や地方の規則が中央の法規を強調したり補足したりすることは、原則であるが、しかし、現実には、地方の独自性を持つ地方法規や地方の規則は続出している。各地方の経済発達状態、生活慣習などがかなり異なっていることと、各地方政府の権限が相当大きいことは、その基本的な原因である。各地方でビジネスを展開する場合は、中央の法律・法規だけでなく、各地方の法規や規則をも無視することができない。
中央の法律・法規と地方の法規・規則との関係は、中央政府と地方政府との関係のあり方に係っているし、また司法審査制度の導入やWTO加盟に伴う規制緩和の実現によって変動するであろう。
(文責:李毅多)