中国のインターネットに関する政策と法的対応について

李毅多

一、インターネット事業に関する産業政策

  中国においては、インターネットはハイテク産業・通信産業の一環として重要視されている。ハイテク産業を促進させることは、中国の国是の一つである。通信産業特に通信インフラに関連する部分については、国家投資の重点分野である。

  また「外国投資家投資産業の指導項目」*1にも、情報及び通信システムネットワーク技術が奨励項目として挙げられている。つまり外国資本はインフラとしての通信産業又はハイテク産業としてのインターネット事業に投資する場合は、現在の段階においては、国から奨励される分野にあたるため、様々な優遇措置が考えられる。ただ新聞・ニュース・通信など情報に関連する分野に関しては、基本的には国家機関又は国有事業体は独占しているため、外国資本の参入は基本的に認められていない。「外国投資者投資企業の指導項目」も情報分野を制限項目又は禁止項目として挙げている。

  要するに、情報媒体(コンテンツ)の制作や発信については、外国資本・外国事業体からの参入は制限されているが、インフラ或いはハイテクについては、外国資本の参入は歓迎されている。制限項目か奨励項目かの決め手は、色々あるが、インターネット事業(産業)のような通信・情報絡みの分野に関しては、国家安全が脅かされるかどうかは基本的なポイントであろう。

二、インターネットに対する法的規制

 1994年2月18日、中国国務院は「コンピューター情報システム安全保護条例」*2を公布した。1996年2月1日、中国国務院は「コンピューター情報ネットワークの国際的接続に対する管理についての暫定規定」*3を公布し、同日より施行した。

 この二つの法規は中国のインターネットに対する法的規制の基本を構成したものとなる。この二つの法規及び関連規則*2をまとめて見れば、中国のインターネットに関する法的規制は次のような特徴がある。

 1.インターネットに関与する主管官庁

 国務院に設置されている経済情報化指導グループ(中文:経済信息化領導小組)は、総責任者として、ネットワークの国際的接続に関する重大な問題を調整して解決する。この経済情報化指導グループは、各関係官庁の責任担当者から構成されたものである。

 既存のインターネットに関しては、郵政省(中文:郵電部)、電子工業省(中文:電子工業部)、文部省(中文:国家教育委員会)及び中国科学院は、それぞれの管轄範囲にあるインターネット分野を管理する。新規のインターネット関連のインフラを建設する場合は、国務院の許認可を受けなければならない。

 コンピューターネットワークのインターネットへの新規接続(いわゆる商業ネット)は、原則として、郵政省の管理している国家公用電信ネットを経由して行わなければならない。

 コンピューターネットワークの安全管理に関しては、警察省(中文:公安部)は責任をもっている。

 郵政省の主導でもって、インターネット関連事業を統括しようという現行法規制の特徴が窺える。恐らく、インターネットを通信事業の一環として統括することによって、安全性を確保する一方、国営事業としての収益を獲得することは、目的であろう。

 郵政省で統括する場合は、国益に有害な情報源をある程度排除(ブロック)することができると思われるし、インターネット関連事業の収益をある程度独占することができるとも思われる。しかしながら、電子工業の元締めである電子工業省、いわゆる学術ネットを管轄する文部省及び科学技術研究機関の元締めである中国科学院は、早い時期からインターネット関連の研究を進めてきたし、かなり高いレベルに達していることから、インターネットに関する郵政省主導の現行法規制体制にたいしては、不満がないはずがない。また実際には、電子工業省のネットや学術ネットもプロバイダー業もやっているし、学術ネット内部でも、アクセス容量によって利用料が計算されていることから、郵政省は全部統括することが不可能である。また、郵政省は、海外からの情報をあまり多くブロックすると、判断基準の問題もあって、国際的に批判される一方、競争原理も働いて、国内のユーザーは他の官庁の管轄するプロバイダーの会員に転身するなど、収益の面でもかなり影響が出てくる。

 2.インターネットプロバイダー

 プロバイダーとしてコンピューターネットワークを作る場合は、加盟先のインターネットの主管官庁の許認可を受けなければならない。許認可の手続きをする際、コンピューターネットワークの性質、運営範囲、メインコンピューターの所在地等の資料を提供しなければならない。

 プロバイダーについては、中国語では「接入単位」という法律用語が使われているが、その定義から見れば、必ずしも商業ネットのプロバイダーに限るとは言えない。つまりインターネット接続業務を目的とするものならば、全部この「接入単位」の範囲に入るわけである。

 プロバイダー(接入単位)は、省級レベル以上の人民政府の警察部署に届出をしなければならない。

 プロバイダー(接入単位) は、@法に基づいて設立した企業法人又は公益法人(中文:事業法人)*4であること、A適当なコンピューター情報ネットワークないし設備を有し、適当な技術者ないし管理者をもっていること、B健全な安全管理・守秘管理の制度ないし技術的なセキュリティーの対応措置を設けていること、C法律ないし国務院の規定する他の要件を満たすことという条件を備えなければならない。

 3.普通のユーザー

 個人、法人その他の組織は、ユーザーとしてはインターネットに接続したい場合、プロバイダー(接入単位)を通して行わなければならない。プロバイダーに加盟したら自由にインターネットにアクセスすることができます。加盟する際は、身分証明書(又はパスポート)を提示しなければなりません。加盟後、警察当局の担当窓口に行って届出をしなければなりませんが、今年の始めから、プロバイダーは警察への届出を代行してくれるようになっています。つまり加盟手続きをすると同時に、警察への届出手続もするとができます。

 4.全体の規制

 普通のユーザーを含めるインターネット関連業務に携わる組織や個人は、インターネットを利用して国家の安全に危害を加え、国家の秘密を漏洩するような犯罪活動をしてはいけないし、また社会の治安状態を妨げるような情報やポルノ情報を制作・閲覧・複製・発信してはいけない。またコンピューター情報システム安全保護条例によれば、コンピューター情報システムを損なうウイルスやデータを故意にインプットする場合は、行政罰が科される。

 コンピューターウイルスを故意に制作・発信する場合への対応が評価できるが、その以外の規制内容については、評価できない。特に社会の治安状態を妨げるような情報やポルノ情報を閲覧していけない(アクセスしてはいけない)というような規定は、相当無理なもので、現実的にも実施できないものである。たとえば、ホームページの内容を知らないから、アクセスしてみたらたまたまそこに入っているデータがポルノ関係であるというような場合は多いから、技術的には禁止することもできないし、法的に禁止することもできないであろう。幸いな事に、禁止規定があるが、禁止規定に反する場合の罰則は明確な形で規定されていない。また実際には、罰されたケースを聞いたこともない。

三、今後の課題

 インターネットが想像を超える早いスペードで普及されている現在の段階においては、インタネットに絡んでいる共通の課題は、中国でも注目されているし、人々の関心を集めている。中国版権局はインターネット上の著作物の保護に関しては国のプロジェクトとして研究を始めている*5し、契約法典の起草にあたっては、立法担当者を含める起草グループのメンバーは、インターネット上のショッピングを想定して、電子取引の契約類型を契約法典に取り入れようと考えている*6。

 新しい法的課題があれば、まず現行の法制度で対応するという日本のやり方と異なって、中国の場合は、法治国家としてスタートしようとするのが十数年前からであって、現在の制定法が既存の様々な問題にも対応しきれないため、新しい法的課題に対して対応することはできない。従って、新規立法で対応するほかはない。この場合は、いい立法だったら、今後よい展開につながるというメリットがあるが、悪い立法だったら、悪い影響が長く続けるというデメリットもある。また、インターネットのような万国共通の国際的な課題に関しては、新規国際条約で対応することを拒まないのは、中国立法のもう一つの特徴である。

 インターネット事業は、新しい産業として中国においても脚光を浴びながら、急速に展開している。大手の企業の多くはドメインネームを商標・称号と同質のものとして捕らえ、ドメインネームを獲得するようにしている。現在中国にインターネット関連の投資を行う絶好のチャンスがあることは間違いない。インターネット関連の投資を行う場合は、関連の政策及び法的問題に注意する必要がある。

注1:  中国政府は「外国投資家投資産業の指導項目」を公布して、外国の投資に関しては、投資奨励の産業項目、投資制限の産業項目、投資禁止の産業項目を定めている。また、この指導項目に関しては、適時に改正する必要があるという国家の政策は最近出てきた。

注2: 「コンピューター情報システム安全保護条例」原文 は日本語で読める。

注3: 「コンピューター情報ネットワークの国際的接続に対する管理についての暫定規定」原文 は日本語で読める。

注4: 中国の「民法通則」によれば、中国の法人は、企業法人、機関法人、事業法人、社会団体法人に分けられている。企業法人は、主に、様々な企業体、事業体、会社の場合の法人格である。機関法人は、主に国家機関が民事活動をする場合の法人格である。事業法人は、主に、学校、病院、研究機関など公益を目的とする団体の法人格である。社会団体法人は、労働組合、婦人連合会、学会、商会など公益或いは特定の階層の利益を目的とする団体の法人格である。

注5: 去年中国版権局は、インターネット上の著作物の保護に関して海外考察を行い、日本に来たこともある。(財)比較法研究センターとの座談会記録はある。

注6: 中国全人代法律委員会委員である王家福先生は中国契約法典の立法に係る最も重要な人物である。去年、同氏から、インターネット上の電子取引の実態及びその契約類型について調査してほしいという依頼があった。


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