xx ミケランジェロ工房 xx

「おい、お前」

 工房にいる弟子の中から、ミケランジェロは一人の少年を指さして言った。

「は、はい!僕でしょうか?」

 頷いてミケランジェロは手で少年を招き寄せる。

「名は?」

「マリオです(←てきとーに浮かんだイタリア系の名前(笑)スーパーマ○オを想像しないように!)」

「では、マリオ。服を脱げ」

「え…ええっ?」

 新人弟子たちは、驚いて事の成り行きに注目していたが、古株の者たちは慣れたもので、せっせと自分の仕事を進めている。

「オレの素描につきあえ、と言ってるんだ」

 それだけでないくせに…と古株弟子たちは思うが顔には出さない。

 大真面目な顔で言われて、マリオは神妙な顔になって頷いた。

「わ…分かりました」

 あちゃー、承知しちゃったか…と古株弟子たちは思ったが、やはり顔には出さない。

 マリオは服を脱ぎ始めた。どこまで脱いでもミケランジェロのストップの声はかからない。腰を覆うもの一枚になってマリオの手が止まった。

「まだ…脱ぐんでしょうか?」

「もちろん」

「………」

「恥かしいのか?」

 おずおずと頷くマリオにミケランジェロはニヤっと笑った。

「隣室へ行くか?そこなら、オレ以外に見るものはいなくなる」

 やめた方がいいぞぉ!皆の前で脱いだ方が、後で起こることに比べたらよっぽどマシだぞ!!…と古株弟子たちは思うが口には出せない。

 マリオは少しホッとした顔になって返事した。

「はい」

 あ、バカ!!…と古株弟子たちはミケランジェロに気付かれない程度に眉をしかめる。

 二人が隣室へ消えると工房の大部屋は、シーンと静まり返っていた。

 そこへ、隣室でのやりとりが鮮明に聞こえてくる。

「ほら、さっさとそれ脱いじまえ」

 しばしの沈黙。

「では、その椅子に腰掛けて」

 間に沈黙をはさみながら、ミケランジェロの指示が飛ぶ。

「もっと体を後ろへ反らせて」

「足を開いて腰をひねるんだ」

 ミケランジェロの追及するのは、いかにディフィクルタを表現するか、だった。

「あっ…せ…先生…」

「何だ?」

「つ…つらいです」

「そうか」

「先生っ!!もう…」

「でも、素晴らしい体勢だぞ。反らした顎。引き締まった腹筋。そして柔らかい色の叢にはカワイイものが息づいてるな。ん?少し興奮してるのか?…すべてよく見える」

 ……!!始まった!!先生のエロエロトーク!…と古株弟子たちは先生から見えないのをいいことに目に見えて疲れた顔をしてみせた。

 一方、新参の弟子たちはもう、硬直してしまっている。

「そんなっ…こと」

「おや、感じているようだな。さっきより角度があがっているぞ」

「言わないでっ…」

「蜜までたらして…ずいぶんとおいしそうだ」

「あ…ん。せんせっ!!」

 苦しい体勢と尊敬する師の言葉にM的気質を刺激され、マリオはこれ以上ないくらい興奮していた。

「あああああ…ぁん」

 ひときわ高い嬌声があがる。

「…これは…、口でくわえられたな…」と自分も経験したことのある古株弟子たちは呟いた。

 その発言に、新参の弟子たちはビクッと体を振るわせる。

「先生に誘われたら、NOはなしだ。あの人の側にいると、身をささげても余りあるくらいいろいろと学ばせてもらえる。まぁ、自分の順番が廻ってこない事を祈るんだな」

 古参弟子の一人が言った。そして、他の者が同調するように頷く。

 新参の者たちは顔を見合わせた。

「………」

 お互いに声が出ない。

 そうこうするうちに隣室での行為は佳境に入っていた。

「ああ!いや…ん。先生…あ…はっ」

「ホラ、ここがいいのか?もっと深く入れてやろう…」

「ふっ…う…んッ」

「イッたのか…ではオレも…」

「あああぁぁぁ」

 ……誰からともなしに大部屋の者達は作業を再開し始めた。

 マリオが隣室から快感の余韻に頬を赤らめ出てきたとき、大部屋では日常の風景が見られるのみだった。

xx END xx

1999.12.06 脱稿



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