@格子
店の表に取り付けられている。取り外しができるものが多い(お祭の時など格子をはずして通行する人に室内のお飾りを観ていただいたりする)。採光と風通しに優れる一方、外からは家の中が見え難いようになっている。
糸屋格子・炭屋格子・米屋格子など、その店が扱っているものによって特有のデザインがある。
また、格子というと京町家の特徴のように思われている向きもあるが、お商売の種類によっては、格子はなく、板戸の家もある。


@’出格子(でごうし)or出窓格子
主に仕舞屋(しもたや)の表の間にとりつけられた格子のこと。出窓の役割をする。
格子目が細やかなことが特徴で、千本格子とも呼ばれる。
格子は、細分すれば五十種類にも及ぶ。興味がおありの方は、三条高倉角のの府立京都文化博物館1階の「ろうじ店舗」をお訪ねください。
仕舞屋・・・商店でない勤め人の家。もしくは、商売をやめた家。


@’’腰窓出格子
店の表ではないところに設けられている出格子。いわゆる出窓で、あまり強度はない。屋根は銅板葺き。格子の種類もいくつかある。


A虫籠(むしこ)窓             
中2階の町家の表構えの2階部分に見られる窓の堅格子は、芯部の角材を土で塗り込めたもの。
軒が連なる京都の町では、自分のところで出した火災の類焼を防ぐためこのような構造がとられたものと思われる。
表屋造りの大きな町家では、この虫籠窓の部屋(厨子二階)が男衆(おとこし)・女子衆(おなごし)の寝起きの間として使われた。


B駒(こま)寄せ              
格子を取り囲むようにして取り付けられた柵。牛馬を繋ぐためとも、犬矢来と同じ目的でつけられたともいわれている。


B’犬矢来(いぬやらい)
通りに面した格子の前などにめぐらせた竹を曲げて造った囲い。格子は表の喧騒や光を室内に取り込み、外から室内が見えないようになっているが、顔を近づけると見える。犬矢来があると、人は近づけない。
また、大八車などが家にぶつかるのを防止するためとも、、泥がはねて格子や塀が汚れるのを防ぐためとも。犬走り(いぬばしり)ともいう。

ずいぶん立派な犬矢来のある町家


Cばったり床几
町家の表の入り口わきに取り付けられた、脚が折り畳み式の床几。もとは商品をならべるために設けられた。江戸時代には盛んであったらしいが、明治以後は、商品の棚というよりも、近所の人たちが腰掛けて世間話をしたり、おままごとなどの遊び場となった。「ばったん床几」・「揚げみせ」ともいう。


D忍び返し
泥棒除けに、家と家の間や塀や門の上に竹・木・金属の先の尖ったものをとりつけた。縦一列のものや交叉させたものなど、いろいろな形状のものがある。


E猿 戸(さるど)
玄関の戸の中ある腰をかがめないと入れないような小さな戸(くぐり戸)のこと。内側に「さる」と呼ばれる差込式の鍵が2箇所ついていて、上は鴨居に、下は敷居に差し込むようにできていることより「猿戸」と呼ばれるらしい。
また、この猿戸は家の中にもあることがあり、台所と玄関の仕切りや離れの入り口に用いられたりする。


F鍾 馗(しょうき)さん
一階の屋根の上、丁度玄関の上あたりに道に面して厳めしい魔除けの置物があげられている。鍾馗さんである。むき出しのものや箱入りのものがある。
唐の都・長安のお話、玄宗皇帝の夢の中で、楊貴妃の宝物を盗もうとした小鬼を鍾馗さんが追い払い退治した。その夢から覚めると玄宗皇帝の病が癒えたという。この小鬼は邪気とされ、鍾馗さんはそれ以後、邪気を払う魔除けとして、信仰された。日本伝来の時期は不明だが、江戸時代にはすでに鍾馗信仰がみられる。


Gガス燈
明治初期に輸入されたもので、文明開化のシンボルともなっている。意匠を凝らしたものも多く、看板替わりともなっている。


H屋根看板
商家にあっては看板は、暖簾とならんで家の顔そのもの。左のように屋根までついた立派なものが時折みられる。これは中京のお薬屋さんのもの。今でも軟膏を全国の薬局薬店に卸している。
京都では、このような屋根付き看板の他に軒からぶらさげたものや、商品のビッグサイズの模型を飾ったものなど、いろいろ見て歩くと楽しめるものがたくさんある。


I卯 建(うだつ)
一人前とはいえない場合などに、よく、うだつがあがるとかあがらないとか、日常的に耳にする言い回しだが、語源はこれである。家と家の1階の屋根の境目のあたりに一段飛び出した形で設けられ、瓦までのっている。
これは、境界を明確にするとともに、火災の折の類焼防止や煙出しからの火の粉を防ぐ防護壁の役目を担っていたという。防護壁にしては低すぎる気がしないでもないが、装飾的な意味合いもあるのだろう。


J煙出し
屋根の上、丁度走りの上あたりに突き出したもうひとつの小屋根。台所などの煙を外に出すためにある。
煙出しがなくて、天窓だけがある町家の方が今は多いかもしれない。


K紅殻(べんがら)
赤黄色の顔料。酸化第二鉄。もとはインド・ベンガル産のため、このように言われる。腐食・防水作用があるため、表の格子や柱などに塗られることが多い。もっとも、そのままでは非常に赤くて派手なため、ススを混ぜて落ち着いた色にしてから使用する(花街ではそのまま用いることも多い)。


L舞良戸
ミセの間やゲンカンに用いる引き戸。横桟が細かく、表側にある。


M屋根のむくり
むくりとは「起り」。家を横から見ると、よくわかるが、屋根の中央部をわずかに盛り上げて、視覚的に水平に見せている。町家では軒先の勾配を大きく取るためにも有効。雨水をしっかりと集めるためである。


N一文字瓦

家の軒先の瓦をみて歩くと、大きく分けて二通りの瓦が目に入ります。下部が波形になった饅頭瓦と正面部分が一直線になっている一文字瓦です。京町家といえば一文字瓦なのですが、これは端正な京町家の印象を与える一番効果的なアイティムかも。町並みをきりりと引き締めるという効果もあなどれません。
一文字瓦は、断面をすっぱりと切断され、その下端のラインが真っ直ぐ一文字にそろえられていますので、屋根を葺く際も、「まんじゅう」はかなり融通がきくのに対し、「一文字」は瓦の幅に合わせて屋根の大きさを厳密に計算しておかなければならず、一分のくるいも許されないとか。手間がかかるだけでなく、この下のラインをぴっちりとそろえるのがなかなか技術のいることなのだとか。つまり職人さんの腕の見せどころというわけです。
瓦の厚さは3寸前後。室町あたりの商家ではもっと厚みのあるどっしりしたものを使用する場合も。京都市登録有形文化財の「秦家住宅」の瓦は3倍近い厚みがあるそうです。そんな一文字瓦、葺くのが難しいだけでなく、車などがちょっと角に当たったりすると全体にその衝撃が伝わり、歪んでしまうらしい。ほんとうに、町家は手のかかる代物なのです。