二種免許で運転できる車両


さて、普通二種免許はタクシー、大型二種免許はバスを運転するための免許証であることは皆さんもご存知であろうが、さて、「けん引二種」や「大特二種」という免許証は実際にどのような車両を運転する場合に必要となるのだろうか。「けん引二種」と「大特二種」が必要な車両を検索してみた。

二種運転免許試験の合格者
警察庁発行の運転免許統計によると、平成15年中の二種免許の受験者数とその合格者数は次のようになっている。
平成15年 受験者数 合格者数 合格率(%) 備 考
普通二種
(含AT限定)
151,165
(35,528)
35,528
(9,518)
23.5
(29.3)
平成15年6月の道交法改正により、大型・普通二種免許は指定教習所にて技能試験免除となることになった。この関係で、17,259名(38%)は、指定自動車教習所の卒業者となっている。
大型二種 87,625 18,436 21.0 同様に大型二種も、合格者数の6,041名(33%)は、指定自動車教習所の卒業者となっている。その分、試験場での受験者数も減少し(前年度比31.8%減)、合格率は平成14.2%と増加している。
けん引二種 4,554 1,036 22.7 例年、23%程度の合格率である。
大特二種 3,221 1,057 32.8 例年、32%程度の合格率である。

けん引二種免許
けん引二種免許は基本的にはトレーラーバス(運転席と客席がトレーラーのように分離されている車)、いわば連結リムジンを運転するための旅客免許である。ネットや書籍にていろいろ検索した結果、これまでに確認できたトレーラバスは次のようなものであった。

しかし、これらはイベントに関連する一時的なものであったり、公道は限られた短い区間を走るだけものであったりする。二種免許を必要とする路線バスとして営業しているものは果たしてあるのであろうか。
歴史的には、昭和60年に「科学万博つくば’85」に登場した連接バスが初代となる。当時は3月からの約6ケ月に限り、常磐線の万博中央駅(臨時駅)〜北ゲート間のシャトルバスとして約100台が運行された。このリムジンバスを運転するのに必要な免許は「けん引二種」ではなく「大型二種」であったそうだ。
そして万博終了後は、運輸省の許可が得られず、国内での運行が困難であったため、海外へ輸出された車両が多い。一部の車両はは東京空港交通に移り、東京シティエアターミナル(TCAT)と成田空港間のリムジンに用いられた。しかしこれも平成11年には姿を消した。平成11年末からは、このうち3台が苫小牧までフェリーで輸送され、旭川電気軌道において、冬場に自転車通学ができない学生の足として現在も活躍しているという。

幕張新都心の京成連節バス
「けん引バス」といえば千葉県幕張新都心の路線バス、京成バスの連節バスが有名である。平成10年12月10日、幕張本郷駅〜海浜幕張駅〜マリンスタジアム間で運行が開始された。車両はボルボ・バス社(スウェーデン)のB10M・エンジン・シャーシに富士重工業のボディを載せたもので、現在10台が運行されている。車両後方に書かれた「全長18m、追越し注意」の注意書きが車両の長さを表している。外車だけあって左手でウインカーを出す。オートマチック車であるが、結構加速もよく、市民の足として運行されている。普通の路線バスと連節バスが入り混じって運行されている。電車などとは違って連節部の床面はターンテーブルとなっており、カーブや凹凸路でも段差が出にくい構造となっているため、連節部付近にも座席があり、カーブの時などには、椅子と足を置いている床が別個に動く構造となっている。「危険ですからこの席には小児は着席しないで下さい。」という表示が印象的である。
全長18m、室内長17m、140人乗りの車体の構造上の仕組みでは、エンジンは連節の妨げにならない前部車体第1軸と第2軸の間に搭載され、第2軸が駆動軸となる。出力は344psで、一般の路線バス(約250ps)ハイパワー。第3軸には逆位相のステアリング機構があり、第3軸が第2軸の軌跡をトレースする構造となっているため内輪差が殆どない。最小回転半径は11mで普通のバスと同じ感覚で運転可能である。つまり意外と小回りが効くので、こんな所が大丈夫?と思われる駅のロータリーに平気で進入してくる。とはいっても、けん引車両には違いなく、後退時には一般のけん引車両と同じく、曲がる方向と逆に切って、車体を折らなければならない。

この連接バスは日本で最も長く、乗車定員が最も多いバスである(座席49席、立ち席90席、ドライバー1席の計140名)。運行免許については、一般のトレーラのようにカプラー(ヒッチメンバーまたはトーバー)のような連結装置を有して被牽引車を切り離す構造ではないので、牽引車・被牽引車を合わせて1台とみなすという特例が適応されており、大型二種免許だけで営業運転は可能である。けん引免許は必要ないとのことである。
一般のけん引車(トレーラー)と違って、ナンバープレートが1枚しかない。運転手によると、確かに後退の時のけん引車両ならではのテクニックは少々練習が必要であるそうだが、実際には運行路線では後退する場面は殆どないそうだ。
道路運送車両法では、車両のサイズは全長12mと定められているが、この連接バスは保安基準の範囲を超えるものの、国土交通省の「全長に関する基準緩和」の適合を受けているので公道での走行が可能となっている。
マークが特殊車両であることを示す。)

連接バスの入庫の動画はこちら(左側より)/(右側より)


つるつる温泉
東京都西多摩郡日の出町にある「つるつる温泉」には、通称「赤バス」と「青バス」の2種類の機関車バスが運行されている。青バスは路線バスで緑ナンバー。赤バスは無料送迎バスで白ナンバーである。
【ひので号(赤バス)】
「肝要の里」〜「つるつる温泉」間を1時間に4往復運行。温泉に最も近い第1駐車場(50台駐車可)は、週末になると混雑するため、「肝要の里」が臨時駐車場となる。ここから温泉までは無料の臨時バスが出ており、これが通称「赤バス」である。
無料の送迎バスなので、白ナンバーであり、運転に必要な免許証は「大型一種」と、「けん引一種」とのこと。土日、祝日、特別日のみ運行されている。


「赤バス」が「肝要の里」に左折進入、後退して駐車スペースに入る動画はこちらをご覧下さい。。
【青春号(青バス)】
JR五日市線の「武蔵五日市駅」〜「つるつる温泉」間を運行。1時間に約1往復。所要時間20分で料金は390円。もともと日出町所有であったが、現在は西東京バスに委託運行されている路線バスであり緑ナンバーの路線バスである。運転には「大型二種免許」以外にやはり「けん引二種免許」が必要であるという。
今まで調べた範囲では「けん引二種」免許が必要なのは、この日の出つるつる温泉の機関車バス、それも
「青バス」だけかもしれない!
赤バスに乗車した。町役場の係長さんと運転手さんのご好意で運転席などをみせてもらった。この車両の運転はけん引車両であり、「けん引一種免許」が必要となる。運転席と客室は完全に隔絶されており、移動はできない。そのためか、客室には女性のガイドさんが同乗する。
「肝要の里」から「つるつる温泉」まで往復した。けん引車両のトレーラ部分に乗車したわけである。一般にはトレーラの荷台に人が乗車することがないのでこのような経験は、ここでしか味わえない。
トラクターに乗り、キングピンひとつで運ばれていると思うと妙な感じである。揺れは激しいが、普通のバスと思って乗っていれば特にけん引車両という特別な感じはなかった。
つるつる温泉の前では、無料送迎バスの赤バスと五日市駅からの路線バスが同時に停車していた。けん引車両故に、ヘッド(トラクター)部分と、台車(トレーラ)部分のナンバープレートは異なる。何故か、ヘッドのプレートは普通トラック用の中板が付けられていた。ということは、トラクターは第5輪荷重が5未満の普通トラックということか。しかし、どう考えても乗車定員が11名以上はあるので、運転には大型免許が必要になるのであろう。
運転手のお話によると、トレーラを切り離すことは殆どなく、点検や修理の時も連結したまま工場に出すという。

八丈島のトレーラーバス

八丈島の八丈町営バスは平成8年3月〜平成12年3月までの約4年間、トレーラーバス、「ふれあい号」という名で運行していた。
現在は運行していないが、当時は日本で初めて公道を走る列車風けん引式であったという。新湊と樫立向里温泉「ふれあいの湯」の間を、1日5往復していた。41名乗りで、当時は、路線バスとして運行しており、運転には「大型二種」と「けん引二種」免許が必要であったという。(町役場バス係確認済み)
これらのバスはどうみても、上記のつるつる温泉の車両と同じであると思われるが、現在、車両は資料館に保存されているとのことである。
トレーラーバスに関する事件
昭和25年4月14日、午前11時半ごろ横須賀駅発三崎行き京浜急行大型トレーラーバスが横須賀市林1800地先進駐軍武山部隊南門前の県道にさしかかった時、突然後部客車内に持ち込みのガソリンに引火してたちまち燃えひろがり乗客に焼死者16名、重軽傷者31名の犠牲を出した。当時は車両不足の中で旅客輸送を増やそうと大型のバスが各地で導入された時期であった。大型トレーラーバスの客車には前方と後方の2ヵ所に乗降口があり、車掌は前と後ろに2人乗務していた。トレーラーバスは運転席と客席が分かれているので、ガーガー音を立てて走っていれば後ろで何が起きたか把握できなかった。停留所に止まる時は車掌がブザーを鳴らして運転席に知らせたというが、こんな突発事故の時にパニックになればそんなことはできないかもしれない。燃えさかる後部を尻目にしばらくバスは疾走してしまったのだ。この頃に導入されたトレーラーバスは、こういう構造的な欠陥をはらんでいた。
トレーラーバスは、この事故を境に急速に姿を消していった。昭和25年には、ディーゼル車のトレーラーバスが出現したが、やがて廃止となった。昭和26年に代燃車が、32年にガソリン車が姿を消し、ディーゼル車の全盛時代を迎え35年からの納車は、すべてリアエンジン型車に統一された。
大型特殊二種免許
大型特殊車両とは、カタピラを有する自動車(雪上車、除雪車、トラクタ等)や土木作業などに用いる特殊な機械装置を有する自動車(ブルドーザ、ショベルローダ、ロードローラなど)で、ナンバープレートの分類番号が「9」、「0」に該当するものである。
ただし道路交通法施行規則第二条の表の大型特殊自動車の項の規定により、カタピラを有する自動車のうちスキー及びカタピラを有する雪上車は大型特殊自動車とはならないとされているので、これらは、大型特殊免許の対象とはならず、車両総重量が8t以上、最大積載量5t以上、または乗車定員が11人以上なら大型、それ以外は普通免許で運転できる。従って、仮に、営業用のクローラ(カタピラ)式雪上車が存在しても、大特二種免許ではなくて普通二種または大型二種免許が必要となる。また、大型特殊に属するホイール式の雪上車(実際には除雪車であろう)で旅客用というものが存在するのであれば、大特二種が必要となるが、現在は運行されていないようである。
路線バスのフルクルーラが存在すれば(現在未確認)、大型特殊の緑ナンバーになるとのこと(陸運事務所)。この場合の免許は大型特殊の二種免許が必要だ(警察署)。
クローラー式雪上車について
【1】フルクローラー式
フルクローラー式(左右一対のクローラーのみで全車体を支え走行するタイプ)は公道上で走行する場合は大型特殊免許が必要となる。さらに旅客運送する場合は大型特殊第二種免許が必要となるという。普通第二種免許や大型第二種免許では運転できず、車検登録する場合も900番台の大特ナンバーが付く。
【2】独立懸架式
クローラー式雪上車の中でもクローラーが各車輪に独立懸架されていて、最近はフルクローラ式雪上車に迫る走破性が確保されている車両が登場している。さらに夏季には普通タイヤに交換できるタイプでは、運転技能が普通車や大型車とほぼ同じであるため、特例として登録上は普通車もしくは大型車の登録となり、それぞれ普通免許、大型免許で運転できる。車両の前幅の関係で4ナンバー車が1ナンバー車に、5ナンバー車が3ナンバー車に変わる場合がある。これらの旅客運送には各々の二種免許があればよく、大特二種の資格は要求されない。このタイプの車両には4輪全てにクローラを装着するものと、前輪部がスキーになっているものなどバリエーションがあるようだが、これらも道交法施行規則第2条大特車の例外事項において大臣の指定する自動車に該当する。ただし、独立懸架クローラ式雪上自動車であっても、改造の種車が車両系建設機械や車両系荷役運搬機械などの目的である場合は、大型特殊扱いとなる。
北海道のスキー場には乗り合い雪上車として5台ほどが登録されており、現実には2台のみが運行しているという情報がある。他に旅客営業として青森、宮城、新潟方面に雪上車ツアーがあるが、殆どが公道と離れていたり、ホテルまでの送迎用で無料であったりして、いわゆる路線バスとしての旅客運送用に登録している車両で雪上車(=大型特殊車両)は現在はないようだ。
雪上バス
そもそも「雪上車」とはスキー場のゲレンデの凹凸をならしたり、コースを作ったり、除雪をしたりする作業車で、活動は主に夜間なのであまり目にすることがない。新潟県長岡市に本社のある「大原鉄工所」は、日本で初めて雪上車を作り量産化したため、国産の雪上車は俗に「大原」と呼ばれるほど一般的となった。同種の車輌は南極観測基地でも使用されているという。これに対して圧雪車(通称ビステン)は、時々スキー場で作業している姿を目にする。
雪上車は、基本的に乗員数は基本的に1人〜3人乗りで、後部に人を乗せるのは原則として禁止されている。運転には大型免許と大型特殊免許が必要だが、除雪作業には作業免許も必要となる。一方、乗合雪上車(雪上バス)は各地のスキー場でみかけることがあるが、最寄の駅から宿までの無料送迎バスであることが多く、路線バス(緑のナンバープレート)としては登録は殆ど存在しない。さらに、雪がなければ公道であろう道路上を走行する場合でもナンバープレートがなかったりして、道路交通法とは無縁の走行をしていることがシーズン中のスキー場では現状である。(図の雪上車のナンバープレートはよくみるとダミーであった。)
■新潟県新井の雪上バス・・・キャビンの付いた圧雪車(ピステン)で妙高ロングラン上部まで登り、夜景を楽しむもの。約1時間30分で¥2,500(税込)。
■青森県岩木山・・・スキー場の雪上バスは縁のナンバープレートを有する旅客営業用の雪上車があったという。
■青森県黒石市青荷温泉・・・冬の青荷は豪雪につき、ふもとの道の駅にから専用車で送迎、途中で雪深くなると雪上車に乗り換え。
 ※青森県運輸支局によると、雪上車の旅客事業用車両としての届けは昭和57年頃〜15年間ほど存在していたが(弘南バス)現在は廃止になっているとのこと。
■秋田県田沢湖町玉川温泉・・・JR秋田新幹線田沢湖駅から、新玉川温泉行きバスで75分のところ、雪上車送迎なら15分。
■山形県蔵王温泉・・・宿から中央ロープウエーの鳥兜駅まで雪上車で送ってもらえる。
■新潟県妙高高原・・・燕温泉では、宿によっては冬季中、その駐車場から宿屋の前までの区間を雪上車で送迎してくれる。
■新潟県妙高杉野原温泉・・・駐車場からゲレンデ中の宿までがスノーモービルか雪上バスによって無料送迎してくれる。ナンバーはついていない。
 ※かつて営業(緑)ナンバーで運行していた赤倉温泉〜燕温泉の雪上バスは現在は廃止されている。
■長野県本沢温泉・・・松原湖駅からゲートまで、ジープや雪上車での無料送迎(約40分)がある。
■長野県高峰温泉・・・冬期間(11月下旬〜5月上旬)はアサマ2000スキー場まで雪上車の送迎がある。
バチぞり
昭和29年12月、北海道石狩-花畔間を走る北海道中央バス石狩線では、積雪対策として、馬そりを車輪代わりに使う雪上バス「バチバス」を作成し、旧陸軍の九五式軽戦車にけん引させた。昭和30年ごろ、まだ雪が深くて普通のバスでは走れない春先に、石狩と花畔(ばんなぐろ)の間を運行したという。バチというのは、山から切り出した丸太を馬で運び出すときに使ったそりの一種で、このバチぞりの上に箱型の車体を組み立て、幌(ほろ)をかけたのがバチぞりバスであった。20〜25名くらい乗ることができ、旧陸軍払い下げの95式戦車でけん引した。
水陸両用バス

平成15年3月16日からの1週間、京都をメイン会場に、大阪、滋賀をサブ会場として開催された世界水フォーラムをPRするために、NPO法人「大阪・水かいどう808」が日本で1台の水陸両用バスを購入した。このバスは米国製で全長約12メートル、幅約2.5メートルの40人乗り。いすゞの8tトラックがバスに改造され、車体後部にスクリューが取り付けられている。陸上で時速約120キロ、海上で約15キロで走ることができるという。車輌重量は8,260kg、総トン数は4.9トン。
国内に水陸両用車としての規格はなく、車と船の両方で安全基準をクリアする必要があった。基準を満たすため、座席の位置や車体の強度などに改良を加えた。9月初めに車両登録を終えたが、購入費や改造、検査費などこれまでにかかった総費用は約7千万円であったという。
意外なのは、この車両の運転資格。これこそ、大型で特殊なバスと思いきや、遊覧船への無料送迎バスという扱いで、実際の運転には大型一種と小型船舶4級免許があればよいという。

先のけん引二種免許を含め、これら取得しても運転する対象車両が事実上存在しない免許の取得目的の殆どは「第二種免許所持による運転技量の証明」であるようだ。けん引一種とけん引二種は試験車両もコースも全く同じで、実際の試験では一種と二種の受験生が混在する。唯一の違いは、合格基準点が一種が70点であるのに対して二種は80点であること。そうはいってもこれらの車両で二種免許を取ろうとする者は極めて少ないようで、受験生への試験前の説明は合格点は80点以上でまとめられるし、けん引二種の試験では一種と間違えられて一旦合格したのに取り消された経験もあった。それだけ受験そのものが珍しいのであろうという印象を持った。