指定自動車教習所指導員・検定員について


自動車教習所
教習所には「…自動車教習所」、「…自動車学校」、「…自動車練習所」、「…ドライビングスクール」、「…モータースクール」など様々な名称が付けられているが、いずれも「自動車教習所」であることに変わりない。自動車教習所には、公安委員会に届出をしているものと届出をしていない教習所とがある。さらに、届出をしている教習所には公安委員会から指定を受けた「指定(公認)自動車教習所」と「指定外(特定届出)自動車教習所」がある。技能試験免除となるのは、指定自動車教習所である。

(1)指定自動車教習所
一般に「教習所」という場合、この指定自動車教習所(公認)を指す。本来、運転免許を取得しようとする場合は、各都道府県にある運転免許試験場に出向き、技能試験と学科試験を受けなければならないが、指定自動車教習所を卒業すれば、技能試験が免除となる。自動車教習所が「指定」として認可されるための基準は非常に高く、運転技能の試験だけではなく、学科教習においても細かいカリキュラムが定められている。さらに指導を行う各教員も、「教習指導員」としての資格を取得しなければならない。現在、全国に約1,430校存在し、新規免許取得者の約95%が指定校の卒業者であるという。事実上、公安委員会に代わって技能試験を行っているわけで、日本の運転免許制度を民間側から支える重要な役割を果たしている。よって指定自動車教習所は公安委員会の指導監督を受けて、技能検定員は「みなし公務員」とされ、職務の公正性を求められている。

(2)指定外自動車教習所(未公認・未指定・特定届出)
指定自動車教習所とは異なり、公安委員会への届出はされているが、公安委員会から指定を受けていない教習所。運転技能の練習を行うことはできても、試験場での技能試験は免除とならない。定められたカリキュラムがないので、自分の苦手な項目を反復して練習するなど練習内容は自由である。場合により、指定教習所より早く、安く免許が取得できる場合がある。一方、どうしても試験に合格できずに結局「指定自動車教習所」へ通い直すという例もあるので、自分の技量とよく相談して選択すべきである。

指定自動車教習所の指導員
指定自動車教習所の技能教習や学科教習を教える指導員は、「教習指導員」という。かつては「技能指導員」や「学科指導員」と呼んでいたが、道路交通法の改正で現在は技能教習も学科教習も行うことができる「教習指導員」という制度になった。この教習指導員になるには、どこかの指定自動車教習所に入社して、そこで一定の養成を受け、都道府県公安委員会が行う審査を受けるのが一般的だが、どこで審査を受けるにしても次の審査を受けなければならない。

上記審査での合格基準は厳しく、( )は各審査での合格基準である。例えば正誤式で95%以上で合格とは、50問題が出題された場合、2問までは大丈夫だが3問間違えると不合格になる。論述式で50%問題というのはB4用紙1枚程度、25%問題というのはB5用紙1枚程度に要旨をまとめて書くもの。審査の際は、正誤式も論述式も参考書類等の持ち込みは許されず、必要な知識は暗記しておく必要がある。

教習所の教官には、自動車教習をしてくれる「指導員」と、指定自動車教習所の技能検定をしてくれる「検定員」が存在する。一般に教官になるには教習所の教官募集に応募し、応募試験を経て教習所に就職する。このあと事前教養を3〜6ヶ月ぐらい行い、公安委員会の行う3週間ほどの教育研修に参加する。そして公安委員会の審査(試験)にパスして初めて教官になれる。この審査とはショートアンサー(道路交通法・教習に関する知識)、論文、面接、技能と4つの難関をクリアーしなければならず、殆どの試験が85点以上で点数を取らなければならない。技能試験も二種免許の80点よりも高い85点以上を取得しなければならない。10項目におよび交通法規はもとより、自動車の構造、安全運転の識、教則、関係法令、教育心理学、自分の運転技術、面接(口頭試問)が問われ、合格するのは至難の業である。。
指導員になれる年齢は21歳以上で、最近2〜3年間事故や違反をしていないことが条件となる。個人的に資格をとることも可能だが、やはり教習所に就職しないと実質上無理らしい。教習所によっては、指導員になるまで教習生の送迎をするために大型免許を取得することが条件になっているところもある。 実際には教習所に入社して練習を重ねながら審査を受けることになる。兵庫県では指導員の資格審査は年3回行われ、試験は教則、教習所関係法令、教育知識、学科指導方法、技能指導方法、運転技能の6教科。各科目ごとに合格から1年間は次回の審査が免除されるので、1年間の3回の試験で6科目に合格する必要がある。ちなみに1回の審査で6科目に合格する人は10%以下。
指導員審査を受けるにあたって、事前に各教習所で事前教養(講習会)が実施されており、教則や論文、運転技能等について約10日間みっちりと叩き込まれる。技能審査は、教習指導員として道路交通法にしたがって安全で円滑な運転が出来るか、試験場にて技能試験の基準に従い試験が行われる。普通の技能試験は70点合格であるのに対して、指導員審査では85点以上となる。厳しい審査基準のため、合格率は60%くらいという。兵庫県では最近、場内試験から路上試験となって、合格率は少し上がっているという。県の研修センターで研修を受けると一部の審査科目が免除になるという。

指導員資格審査の内容
筆記による審査 道路交通法
教習所関係法令
教育知識
交通の教則
安全運転の知識
自動車の構造等の科目
運転技能審査 受験する車種の実技試験(通常は普通自動車)
面接による審査 面接による総合的な審査

審査に合格してもすぐには指導員にはなれない。規定の時間、事後教養があって、教習原簿の処理方法や実際に教習車の後部に乗って見学、実習を行う。その後に晴れて指導員としてスタートする。しかし、普通車の指導員になっただけで教習所にある色々な車種の指導員になるには、大型、普通、大特、自ニ、牽引の5種類があり、それぞれの車両ごとに審査に合格しなければならない。逆に言うと指導員だからといって、二種免許や大型を必ず持っているとは限らないわけである。

指定自動車教習所の検定員
教習指導員よりその上を行く技能検定員は技能検定の知識はもちろん運転技能に関しての観察力が必要となる。教習指導員は21歳だが、技能検定員は25歳以上の受験資格が必要となる。指導員にならなくとも直接検定員になることも可能だが、一般的には指導員になり、充分な経験とその他の車種の指導員の資格をとってから挑戦することになる。

検定員資格審査の内容

指導員と同じように、審査前に講習会がある。審査は3日間かかり、審査に合格すれば、指導員と同じように事後教養があり、その後晴れて検定員の仲間入りとなる。

検定員資格審査の内容
審査項目 審査細目 審査方法等
教習に関する技能 教習指導員として必要な自動車の運転技能 技能試験の方法に準じて行うものとし、その合格基準は、85%以上の成績であること。
技能教習に必要な教習方法 実技試験または面接試験により行うものとし、その合格基準は、それぞれ80%以上の成績であること。
学科教習に必要な教習方法
教習に関する知識 教則の内容となっている事項その他自動車の運転に関する知識 論文式、択一式、補完式または正誤式の筆記試験により行うものとし、その合格基準は、論文式のものにあっては85%以上、その他のものにあっては95%以上の成績であること。
自動車教習所に関する法令についての知識
教習指導員として必要な教育についての知識 面接試験または論文式の筆記試験により行うものとし、その合格基準は、それぞれ80%以上の成績であること。

学科教習を担当する指導員についての条件
「教習指導員資格者証」を取得すれば、指導員として選任され教習をすることができるわけだが、一部の教習については別の資格が必要となる。兵庫県では事務処理要領にて自動二輪免許がないと、学科教習を担当させないこととなっている。また、学科教習のうち第2段階の「適性検査における行動分析」については、警察本部の行う 運転適性検査指導者養成講習 を修了した者でなければ行うことはできない。入校式などに「運転適性検査」を実施するのもこの資格を持った人でなければいけないことになっている。教習所でおこなう「応急救護」の学科教習は、学科教習を行う指導員のうち日赤の行う応急救護指導者養成の講習を修了した者でなければならない。