クレーン運転の資格


クレーンとは
クレーン等安全規則によると、クレーンとは次の2つの条件を満たす機械装置のうち移動式クレーンおよびデリック以外のものと定義される。


クレーン免許の変遷
かつて、すべてのクレーン操作が可能であった起重機運転士免許は昭和37年にクレーン運転士以外に、デリック、揚荷装置運転士に細分され、昭和47年よりは、クレーン運転士クレーン運転士移動式クレーン運転士に分類された。
当時は玉掛の資格はクレーン免許の中に含まれていたが、昭和53年よりは、玉掛の資格は別途に取得することが必要となった。

平成18年4月よりは、クレーン免許デリック免許が統合され、クレーン・デリック免許となった。
クレーン免許デリック免許を有していた者はクレーン・デリック免許(限定なし)が取得できる。
クレーン運転士のみの場合はクレーン・デリック免許(クレーン限定)
となる
クレーン運転士(床上運転式限定)の場合はクレーン・デリック免許(床上運転式クレーン限定)となる
デリック運転士免許は従来通りデリック運転士免許となる。

年 次 昭和22年11月 昭和27年9月 昭和37年11月 昭和47年4月 昭和53年10月 平成10年3月 平成18年4月
改正の内容 免許制度が開始される。 有効期限が5年になる。 有効期限が廃止される。
免許の種類がクレーン、デリック、揚貨装置の3種類に分割される
クレーン免許が移動式クレーン免許と分割される。
(労働安全衛生法施行)
玉掛が不可となる クレーン免許に「床上運転式限定」が追加される クレーン免許とデリック免許が統合され、クレーン・デリック免許となる。
免許の変遷 起重機運転士
(有効期限なし・玉掛OK)
起重機運転士
(有効期限5年・玉掛OK)
クレーン運転士
(有効期限なし・玉掛OK)
クレーン運転士
(有効期限なし・玉掛OK)
クレーン運転士
(有効期限なし・玉掛別途)
クレーン運転士
(有効期限なし・玉掛別途)
クレーン・デリック免許
(限定なし・有効期限なし・玉掛別途

※もともとクレーン免許とデリック運転手免許を所有していた場合。
クレーン・デリック運転士
(クレーン限定)
(有効期限なし・玉掛別途)
クレーン運転士
(床上運転式限定)
(有効期限なし・玉掛別途)
クレーン・デリック運転士
(床上運転式限定)
(有効期限なし・玉掛別途)
移動式クレーン運転士
(有効期限なし・玉掛OK)
移動式クレーン運転士
(有効期限なし・玉掛別途)
デリック運転士
(有効期限なし・玉掛OK)
デリック運転士
(有効期限なし・玉掛別途)
デリック運転士(従来通り)
(有効期限なし・玉掛別途)
揚荷装置運転士
(有効期限なし・玉掛OK)
揚荷装置運転士
(有効期限なし・玉掛別途)

クレーン操作と玉掛け業務に必要な資格
吊り上げ荷重
 0.5t未満 
 0.5t以上1t未満 
 1t以上5t未満 
 5t以上 
クレーン運転者の資格 機上運転式クレーン
無線操作式クレーン
適用除外 クレーン運転の業務に係る特別教育 クレーン運転士免許
床上運転式クレーン クレーン運転免許(床上運転式限定)
床上操作式クレーン 床上操作式クレーン技能講習
跨線テルハ クレーン運転の業務に係る特別教育
玉掛作業者の資格
玉掛けの業務に係る特別教育 玉掛技能講習

クレーンの運転資格は、吊り上げ荷重が5t以上のクレーンとつり上げ荷重が5t未満のクレーンで大きく分かれる。
吊り上げ荷重が5t未満のクレーンの場合は、操作方式が機上運転式、無線操作式、床上運転式、床上操作式のいずれであっても「クレーン運転の業務の特別教育」で運転することができる。
吊り上げ荷重が5t以上のクレーンは、厚生労働省都道府県労働局長による「クレーン運転士」の免許が必要である。ただし例外があり、テルハのうち鉄道において、手荷物を積んだ車などをつり上げ、線路を越えて運搬するために使用されるものを跨線(こせん)テルハと呼ぶが、これについては吊り上げ荷重5t以上でも、特別教育を修了すれば運転できる。また、床上操作式クレーン(後述)の運転は、吊り上げ荷重が5t以上であっても技能講習を修了すれば運転ができる。一方「床上運転式クレーン」は運転士免許が必要だが、限定免許としてクレーン運転士免許の中で取得することになる。一方、無線操作式クレーンの場合は、制御器を持って床上で操作するからといって「床上操作式クレーン運転技能講習」や「床上運転式クレーン運転士免許(限定免許)」では運転することができず、「クレーン運転士免許」の資格が必要となる。ちなみに吊り荷の質量が1t未満であっても、クレーンの吊り上げ荷重が1t以上の場合は、玉掛技能講習修了者でないと作業できないので注意。

クレーン免許と操作できるクレーン
免許の種類 本免許で操作できるクレーン クレーンの種類
クレーン運転士 吊り上げ荷重が5t以上の床上操作式クレーン、床上運転式クレーン、無線操作式クレーン 天井クレーン・ジブクレーン・橋形クレーン・アンローダ・ケーブルクレーン・テルハなどの操作に必要。
クレーン運転士
(床上運転式限定)
吊り上げ荷重が5t以上の床上運転式クレーン メッセンジャー方式、または定位置方式などにより床上でペンダントスイッチにより運転し、かつ運転者がクレーンの走行と共に移動する方式のもの。
移動式クレーン運転士 吊り上げ荷重が5t以上の移動式クレーン 同じ運転席で走行とクレーン操作が行えるホイールクレーンと運転室と操作室が別個のトラッククレーンに大別される。
デリック運転士 吊り上げ荷重が5t以上のデリック デリックとは動力をもって荷を吊り上げることを目的とする機械装置で、マストまたはブームを有し原動機を別置してワイヤロープにより操作されるもの。原則として、デリックの要件には、吊り荷の水平移動は含まれておらず、荷を水平に移動できるものとできないものがある。
揚貨装置運転士 吊り上げ荷重5t以上の揚貨装置の操作に必要。 揚貨装置とは、船舶に取り付けられたデリックやクレーン設備で、荷役作業などに用いられる。

クレーン等の資格と運転できる機械
所持している資格 免許等の種類(吊り上げ荷重) 免 許 技能講習 特別教育
クレーン
(5t以上)
クレーン
(5t以上・床上運転式限定)
移動式クレーン
(5t以上)
デリック
(5t以上)
揚貨装置 小型移動式クレーン
(1t以上5t未満)
床上操作式クレーン
(5t以上)
玉掛
(1t以上)
小型移動式クレーン
(0.5t以上1t未満)
クレーン
(0.5t以上5t未満)
デリック
(0.5t以上5t未満)
跨線テルハ
(5t以上)
玉掛
(0.5t以上1t未満)
免 許 クレーン・デリック運転士 5t以上 × × × × × ×
5t以上クレーン限定 × × × × × × × ×
5t以上床上運転式限定 × × × × × × × × ×
移動式クレーン運転士(5t以上)     × × × × × × × ×
デリック運転士(5t以上)       × × × × × × × ×
揚貨装置運転士         × × × × × × × ×
技能講習 小型移動式クレーン(1t以上5t未満)           × × × × × ×
床上操作式クレーン(5t以上)             × × × × × ×
玉掛(1t以上)               × × × ×
特別教育 小型移動式クレーン(0.5t以上1t未満)                 × × × ×
クレーン(0.5t以上5t未満)                   × ×
デリック(0.5t以上5t未満)                     × ×
跨線テルハ(5t以上)                       ×
玉掛(0.5t以上1t未満)                        

床上運転式クレーン床上操作式クレーン
名 称 床上運転式クレーン
(クレーン免許・床上運転限定)
床上操作式クレーン
(ホイストクレーンなど)
定 義 メッセンジャー方式、または定位置方式等により床上でペンダントスイッチにより運転し、床上で運転士、運転する者が荷の移動と共に移動する方式。運転する者はクレーンの走行時に移動するが、横行時には一定の位置で操作が出来て移動しない。製紙工場等で用いられている。 床上で運転士、運転する者が荷の移動と共に移動する方式。
運転する者はクレーンの走行時および横行時に移動する。
免許区分 平成10年よりクレーン運転士の資免許の中に、床上運転式クレーンが限定免許として区分された。
吊り上げ荷重5t以上の床上操作式クレーンについては、床上操作式クレーン運転技能講習修了者であれば運転することができる。
対 象 吊り上げ荷重が5t以上の床上運転式クレーン
この免許で、床上運転式ならびに床上操作式クレーンであれば、吊り上げ荷重能力に関係なく運転ができるが、クレーンや移動式クレーンは運転できない。5t未満のクレーンは、運転方式に関係なく運転できる。(移動式クレーンおよびデリックを除く)
吊り上げ荷重が5t以上の床上操作式クレーン
5t未満のクレーンは、運転方式に関係なく運転できる。(移動式クレーンおよびデリックを除く。
天井クレーンを例にすれば、ガーダと平行にメッセンジャワイヤ等を取り付け、これより押しボタンスイッチをつり下げた方式のもの、または、ガーダの一端より押しボタンスイッチをつり下げたものなどがあり、このような方式のクレーンは、運転する者がクレーンの走行時には荷とともに移動しなければならないが、横行時には荷の移動に関係なく一定の位置で操作が出来る。
天井クレーンを例にすれば、トロリより押しボタンスイッチをつり下げた方式のもので、走行時、横行時とも荷が移動するのと一緒に運転する者がついていかなければならない方式のもの。


クレーン等運転資格のまとめ
資 格 指定教習機関 分 類 吊上荷重
運転免許 免許を要する国家資格であり、安全衛生技術センターの行う学科・実技試験に合格する必要がある。労働局長指定の教習所(クレーン学校)で実技教習を修了し、実技試験免除で安全衛生技術センターの行う学科試験に合格する方法もある。 免許は現所地の労働局へ申請する。 クレーン運転士 5t以上
クレーン運転士(床上運転式限定)
移動式クレーン運転士
デリック運転士
揚貨装置運転士
技能講習 労働局長から指定を受けた教育機関(教習所)では技能講習が施行できる。 小型移動式クレーン 1t以上5t未満
床上操作式クレーン 5t以上
玉掛 1t以上
特別教育 労働局長から指定を受けた教育機関(教習所)では特別教育が施行できる。 小型移動式クレーン 0.5t以上1t未満
クレーン運転の業務に係る特別教育 0.5t以上5t未満
デリック運転の業務に係る特別教育 0.5t以上5t未満
跨線テルハ 5t以上
玉掛 0.5t以上1t未満

クレーン運転士試験
クレーンや移動式クレーンは免許を要する国家資格であり、安全衛生技術センターの行う学科・実技試験に合格する必要がある。労働局長指定の教習所(クレーン学校)で実技教習を修了し、実技試験免除で安全衛生技術センターの行う学科試験に合格するか、センターの行う学科試験に合格し1年以内にセンターの実技試験に合格するか、指定 教習所で実技教習を行う方法などがある。 免許は現所地の労働局へ申請する。