代行運転について


【代行運転とは】
自動車運転代行業とは、他人に代わって自動車を運転する役務を提供する営業で、(1)主として酔客等に代わって自動車を運転する役務を提供するものであること、(2)当該自動車に酔客等を乗車させるものであること、(3)常態として、当該自動車に業務用自動車が随伴するものであることのいずれにも該当するものをいう。

【代行運転の需要】
平成15年6月に施行された改正道路交通法によって、飲酒運転に対する罰則が強化されたことから、運転代行の利用客は前年の2〜3倍に増加しているという。不景気に悩むタクシー業界とは対称的に売り上げを10%ほど伸ばしている。運転代行業は、これまでは特に法規制がなかったために、タクシー業界のように認可を受ける必要もなく、比較的簡単に開業することができた。しかし、市場が拡大し利用者が増加し続ける中で、客待ちの違法駐車や、代行業者用の車に客を乗せる、いわゆる「白タク」行為が目立つようになった。また、任意保険への未加入、交通事故の多発、不明瞭な料金設定によるトラブルなども問題となり、ついに法規制の枠がはめられることになった。

【自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律】
平成14年6月1日の道路交通法改正、及び新法の制定、運転代行適正化法に伴い、代行運転は公安委員会・国土交通省からの認定事業となった。適正化法は、客とのトラブルを解消するため暴力団の排除や保険加入を義務化、運転代行業を初めて規制したものである。業者は事業所を管轄する警察署に申請、都道府県公安委員会が運輸支局と審査して認定する。全国運転代行協会は法施行前に比較して業者は3分の1ぐらいに減り、健全な業者だけが生き残るであろうと予測していたが、むしろ法施行前の1.5倍に増加した。増加の原因のひとつに「代行業は自家用車一台あれば開業できる。不況で新しい職や副業として始める人が多いからではないか」とみている。新規の認定業者には夫婦で一台だけでの営業も多い。

【道路交通法改正】
平成16年6月以降は、二種免許を持っていなければ、客の車は運転できなくなる。「運転代行業法」が改正道路交通法と同時期に施行されたことにより、運転代行業者は必要な条件をクリアして、各都道府県公安委員会の認定を受けることが必要になった。「二種免許非保有者の運転禁止」により運転代行業でも、ドライバーに対してタクシー業者と同様に「二種免許」を取得している必要が生じた。業界の当初の予想に反し、業者数は倍増している。 ところが現状では、代行ドライバーの大半は、昼間は他の仕事をするアルバイト・ドライバーであるために、二種免許を取得させることは事実上不可能であり認定業者は減少するとの見方もあるという。過去5年間の1億走行キロ当たりの交通死亡事故件数は、タクシー事業に比較して約2〜5倍高くなっている。平成15年9月現在、運転代行業の従業員数のうち二種免許を取得している者の割合は約10〜25%である。第二種免許の義務付けについては、法律公布後、施行まで一定の猶予期間(3年程度を予定)が設けられる予定だ。

【ステッカー表示】
公安委員会の認定を受けた業者は、随伴用車に認定業者を示すペイントを表示するほか、実車時は利用者の車にも代行運転中を示すマグネット式のステッカーを装着しなければならないなどが新たに定められた。また、認定を受けた自動車運転代行業者は、随伴用自動車(客の車に随伴する業者の車)の運転席および助手席の側面に公安委員会の認定番号、事業者名称、代行随伴用自動車である旨の表示をしなければならない。

【代行運転中の事故やトラブル】
相手車がある場合はその過失割合に応じて、対人・対物賠償の他、客の車の修理と、慰謝料や治療費等の賠償をするシステムを導入している(代行受託保険)。適正法により代行業者には代行運転中の事故の損害を賠償するため、保険への加入を義務付けるほか、利用料金を営業所に掲示することも義務付けている。運転代行業の保険に加入している運転代行業者の割合は、平成11年度で70%程度である。道路交通法令違反に占める最高速度違反、駐停車違反等の割合は、タクシー事業、バス事業、トラック事業等に比較して高い傾向にある。
代行運転業者は、車の保有者である依頼者から依頼を受け、有償で車を運行させているので、原則として運行支配・利益があると考えられる。
よって運行供用者責任(自賠法3条)に基づき、事故が生じた場合は下記の場合も原則として運行供用者として損害賠償責任を負うことになる。

代行運転中に依頼者自身が事故により負傷したり死亡した場合も、タクシーと同様に依頼者は、代行運転業者に対して、有償で運転を任せている関係にあり、代行運転業者側に、「直接的・顕在的・具体的」な運行支配・利益があるものとして、依頼者の他人性が肯定される結果、代行運転業者の責任が認められる。(最高裁平成9年10月31日判例)。

AB間移送
場  所
飲食店など 店の駐車場 客の自宅 別の場所
代行運転   BC間移送  
タクシー類似行為 AB間移送  
  CD間移送
用いる車両 代行車 客の車両 代行車

本来、運転代行とは、駐車場(B)から自宅(C)までを、客を客自身の自家用車に乗せて移動するサービス形態(BC間移送)であり、駐車場とは別の場所(A)から運転代行を依頼し、自家用車のある駐車場(B)までの比較的短い距離を運転代行会社の車に乗って移動する行為はAB間移送といい、これは「タクシー類似行為であり違法である。通常の運転代行業では、車のキーを業者が預かり、代行車で駐車場まで客の車を取りに行き、そこから飲食店に戻った後に、客の車も客を乗せて移送する形にるが、利用者の中には、飲食店(A)からそのまま業者の車に同乗して、自家用車(B)まで移動することを希望する場合が多い。また、自宅(C)に戻ったあと、別の場所(D)まで代行車に乗せてもらうの(CD間移送)はタクシー行為であり、違法。さらには、車に乗って来ていない客を業者の車に乗せて店(A)から自宅(C)まで送るAC間移送は、「白タク」行為となり違法である。