特種用途自動車


特種用途自動車とは
自動車の用途は、自動車の構造や装置により、乗用、乗合、貨物、特種の4用途に区分されている。特種用途自動車(いわゆる8ナンバー車)とは、特種な用途に応じた設備を有する自動車であって、車体の形状として、キャンピング車、救急車等78種類の車体形状があり、その構造要件は、自動車交通局長通達で定められている。
具体的には、パトカーや消防車などの緊急車、街宣車、キャンピングカーなど140種類がある。貨物車でも、特殊な貨物を積むために専用の荷台を装備しているものは8ナンバーとなる。
特種用途自動車には道路維持作業用自動車、医療防疫用自動車、寝台自動車、放送宣伝用自動車、霊柩自動車、冷蔵冷凍自動車、護送自動車、タンク自動車、散水自動車、工作自動車、架線修理自動車、起重機自動車、移動郵便自動車、移動無線車、ふん尿自動車、路上試験用自動車及び教習用自動車、クレーン用台車、活魚運搬車、空港作業者、血液輸送車、高所作業車、コンクリートミキー車、採血車、写真撮影車、照明車、給水車、現金輸送車などがある。

特種用途自動車の保有車両数の推移
特種用途自動車の保有車両数は、平成3年3月末に79万台であったものが、平成12年3月末には139万台となり、10年間で約1.8倍に増加している。特に事務室車、キャンピング車、放送宣伝車の増加が著しい。
  平成3年3月末(指数) 平成12年3月末(指数)
キャンピング車 29,353(1.0) 331,935(11.3)
放送宣伝車 4,622(1.0) 65,583(14.2)
事務室車 184(1.0) 20,560(111.7)
上記以外の車体の形状 756.603(1.0) 967,958(1.3)
特種用途自動車総計 790,762(1.0) 1,386,036(1.8)

特種用途自動車(8ナンバー)の車種別保有台数(1999年3月末)
普通車 小型車 大型特殊 合計台数
1,097,813 208,672 318,627 1,625,112

分類項目 車両の種類 車種の例
使用目的 専ら緊急の用に供するための自動車
(13車体形状)
救急車、消防車、警察車、臓器移植用緊急輸送車、保線作業車、検察庁車、緊急警備車、防衛庁車、電波監視車、公共応急作業車、護送車、血液輸送車、交通事故調査用緊急車
法令等で特定した事業を遂行するための自動車
(13車体形状)
給水車、医療防疫車、採血車、軌道兼用車、図書館車、郵便車、移動電話車、路上試験車、教習車、霊柩車、広報車、放送中継車、理容・美容車
特種な目的に専ら使用するための上記以外の自動車
(52車体形状)
車体の形状 特種な物品を運搬するための特種な物品積載設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車
(15車体形状)
粉粒体運搬車、タンク車、現金輸送車、アスファルト運搬車、コンクリートミキサー車、冷蔵冷凍車、活魚運搬車、保温車、販売車、散水車、塵芥車、糞尿車、ボートトレーラ、オートバイトレーラ、スノーモービルトレーラ
患者、車椅子利用者等を輸送するための特種な乗車設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車
(2車体形状)
患者輸送車、車いす移動車
特種な作業を行うための特種な設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車
(32車体形状)
消毒車、寝具乾燥車、入浴車、ボイラー車、検査測定車、穴堀建柱車、ウインチ車、クレーン車、くい打車、コンクリート作業車、コンベア車、道路作業車、梯子車、ポンプ車、コンプレッサー車、農業作業車、クレーン用台車、空港作業車、構内作業車、工作車、工業作業車、レッカー車、写真撮影車、事務室車、加工車、食堂車、清掃車、電気作業車、電源車、照明車、架線修理車、高所作業車
キャンプ又は宣伝活動を行うための特種な設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車
(3車体形状)
キャンピング車、放送宣伝車、キャンピングトレーラ

構造要件の原則
■特種な設備が占有する面積要件
特種な設備の占有する面積が、1u以上(軽自動車は0.6u以上)あり、かつ、運転者席(運転者席と並列の座席を含む。)より後方に備えた特種な設備の占有する面積が、運転者席を除く客室の床面積、物品積載設備の床面積及び特種な設備の占有する面積の合計面積の2分の1を超えていること。
■特種な設備の車体等への固定方法
特種な設備は、ボルト、リベット又は溶接により確実に車体に固定されていること。(両面テープ、針金等による特種な設備の設置は、ここでいう「固定」には該当しない。)

【8ナンバーの長所と短所】
8ナンバー車は、乗用車等と比べ、税・保険料が安い(東京都の場合4,300tのキャンピング車を新規購入した場合の諸費用が40万円程度安い)
8ナンバー車の現行の構造要件が抽象的である。
例えばライトバンなら、サイズによって1または4ナンバーになるが、キャンピングカーに改造すると特種用途となって8ナンバーになる。8ナンバーではベース車両(改造する前の車両)が普通車の場合、1ナンバー、3ナンバーに限らずキャンピングカーなら維持費などは同じになる。車検は原則として2年毎(タンクローリーは1年毎)になるため、場合によっては1ナンバー、3ナンバーよりも8ナンバーで登録した方が得な場合が生じる。
実際に8ナンバーを取得するにはキャンピングカー(車検証上は「キャンピング車」)に整備したり、荷室に大口径のスピーカーを積んで「放送宣伝車」、机とパソコンを装備して「事務室車」などに改造すれば8ナンバーが取得できる。8ナンバーの構造用件が改正になり、平成15年4月よりはキャンピング車の登録は、一部の車両を除き登録が不可になった

「8ナンバー狩り」について
数年前からのRV車ブームが続き、排気量の大きい車の比率が年々高まってきている。ところが、環境への配慮を迫られる結果、排気量の大きい車を減らすため、税金を高くしてきた。これに対して3ナンバー(普通乗用車)から8ナンバー(特殊用途車種)に改造し、税金を軽くする対策を取るユーザーが増えてきた。つまりRV車など今まで乗用車として車検登録していた車を、特殊用途(キャンピングカー・放送宣伝車・事務室車)に改造し、8ナンバーとして車検を通す合法的な税金逃れである。しかも修理工場などで特殊用途に改造し、車検が通った後に元の乗用車の仕様に戻し乗る場合があるが、これは立派な犯罪行為である。このような現状を保険会社も黙認するわけにはいかず、8ナンバーの車両については引き受けを制限し契約前に綿密な調査をしたり、8ナンバーの車を扱わないという保険会社も現れているという。警察と陸運支局は合同で、「8ナンバー検問」を行っている。つまり8ナンバー車を検問で止めて、設備が搭載していなければ反則金を課すものである。


架線修理車
8ナンバーの普通のトラックに車台を取り付け、線路上を走るようにしたもの。


タンクローリについて

「危」マークのついたタンクローリなどはガソリンや軽油などの引火性液体の危険物を移送するもので、これを貯蔵したり取扱ったりするためには消防法で定められる「第4類危険物取扱者」の資格が必要となる。一般にガソリンや重油、軽油、灯油などの第4類(引火性液体)を輸送するための車両である。この運転に必要な資格は、大型車で荷物を運ぶので、大型一種自動車免許、トレーラであればけん引一種も必要である。


さて、タンクローリは危険物の規制に関する政令によって「移動タンク貯蔵所」と定義されている。車両なのに分類上は立派な「移動貯蔵所」なのである。政令によって次のような規定がある。

最大積載量 13,600kg (例)
第4類 数 量
1 ガソリン 4kl
2 ガソリン 4kl
3 ガソリン 2kl
4 軽 油 2kl
5 ガソリン 4kl
最大積載量16kl

危険物について
分 類 資 格 受験資格
甲 種 消防法で定めるすべての種類の危険物の取り扱い、および取り扱い作業に関する立会いができる。 大学、短大、高専において化学に関する学科、課程を修了したもの。乙種の免状交付を受けて2年間以上危険物取扱いの実務経験を有する者。
乙 種 免状に指定された種類(実際には乙種第4類がほとんど)の取り扱い作業に立ち会うことができる。 特になし。
丙 種 、第4類の中のガソリン、灯油、軽油、第3石油類(重油、潤滑油および引火点130℃以上のもの)、第4石油類および動植物油類の取り扱いができる。

甲種には受験資格があり、皆が皆受けられるものではない。乙1〜乙6まですべてを取得すれば、取扱える危険物の内容は甲種と全く同じであるので、免状としては同等となる。ただし、だからといって、乙1〜6免状を甲に切り替えてもらうことはできない。乙種第4類の試験は、筆記試験のみで(1)「基礎物理学・化学」(10問)、(2)「危険物の性質、火災予防、消火」(10問)、(3)「法令」(15問)の計35問で、解答は2時間で、4者択一のマークシート方式。60%以上の正解が必要(3科目のうちひとつでも60%を切ると不合格)。ただし乙種免許は、1つの類に合格すると、他の乙種を受験する場合には「基礎物理学・化学」、「法令」が免除されるので、比較的乙種全制覇は夢ではない。

名 称 性 状 一般的性状 物質例
第1類 酸化性固体 固 体 それ自身は燃焼しないが、他の物質を参加させる酸素を多量に含んだ固体。マッチ、花火などの材料。 塩素酸カリウム
第2類 可燃性固体 固 体 火災によって着火しやすい固体。比較的低温で引火しやすく燃焼速度が速い。マッチの原料。 硫黄、鉄粉
第3類 自然発火性物質、禁水性物質 固 体
液 体
空気に曝されると自然には発火したり、水と接触して発火し可燃性ガスを発生する。 カリウム
第4類 引火性液体 液 体 20℃で液体(または40℃で液状になる)で引火性のあるもの。 ガソリン、灯油、軽油、重油
第5類 自己反応性物質 固 体
液 体
加熱などにより多量の発熱、爆発するもの。ダイナマイト。セルロイド。 過酸化ベンゾイル
第6類 酸化性液体 液 体 それ自身は燃焼しないが、他の可燃性の燃焼を促進する性質を有する液体。漂白剤。 過酸化水素

長大トンネルなどにおける危険物積載車両の通行規制について
道路法第46条第3項の規定等により、水底トンネルや全長1km以上の長大トンネルにおいては、危険物を積載する車両の通行は禁止または制限されている。このようなトンネルは、全国で24箇所ある。

通行禁止項目(全面通行禁止) 火薬類および火薬類以外の爆発性物質 火薬 アジ化鉛などの起爆薬  
ニトログリセリンなどの硝酸エステル類、煙火(玩具煙火を除く)  
火薬類以外の爆発性物質 ニトロメタンなどの爆発性物質  
毒物・劇物およびその他の有毒物質 毒物 四アルキル鉛、シアン化水素、ホスゲンなど  
劇物 クロルビウリンなど  
毒物・劇物以外の有毒物質 二酸化窒素など  
水または空気と作用して発火性を有する物質 塩化アセチレンなど  
通行制限品目(右記の数量以下でも、軽自動車および三輪以下の車輌に積載した場合は通行禁止) 火薬類および玩具煙火
(火薬類取締法)
火薬 黒色火薬その他火薬 10kgを超えるもの。
爆薬 ダイナマイトその他爆薬 爆薬5kgを超えるもの。
火工品 工業用雷管その他火工品、玩具煙火  
高圧ガス
(高圧ガス保安法)
可燃性ガスおよび毒性ガス LPガス、アセチレン 標準状態でガス容積60m3を超えるもの。液化ガスで600kgを超えるもの。
酸素 酸素  
不活性ガス 炭酸ガス、塩化ビニル、その他高圧ガス 標準状態でガス容積90m3を超えるもの。液化ガスで1,800Lを超えるもの。
毒物または劇物
(毒物及び劇物取締法)
毒物 液状の無機シアン化合物製剤、フッ化水素およびフッ化水素を含有する製剤、アンモニアを含有する製剤(約10%以下)、?フッ化水素酸、ジメチル硫酸、臭素、塩化チオニル(400kg未満を除く) 1,000kgを超えるもの
劇物  
第1〜6類
(消防法別表)
ガソリン、ガーバイト、灯油、その他消防法上の危険物 消防法別表の数量を越えるもの
腐食性を有する物質 ナトリウムアミドなどの腐食性を有する物質 200kgを超えるもの
マッチ マッチ 50kgを超えるもの