危険物取扱者
「危」タンクローリについて
「危」マークのついたタンクローリなどはガソリンや軽油などの引火性液体の危険物を移送するもので、これを貯蔵したり取扱ったりするためには消防法で定められる「第4類危険物取扱者」の資格が必要となる。一般にガソリンや重油、軽油、灯油などの第4類(引火性液体)を輸送するための車両である。この運転に必要な資格は、大型車で荷物を運ぶので、大型一種自動車免許、トレーラであればけん引一種も必要である。
さて、タンクローリは危険物の規制に関する政令によって「移動タンク貯蔵所」と定義されている。車両なのに分類上は立派な「移動貯蔵所」なのである。政令によって次のような規定がある。
室 | 第4類 | 数 量 |
1 | ガソリン | 4kl |
2 | ガソリン | 4kl |
3 | ガソリン | 2kl |
4 | 軽 油 | 2kl |
5 | ガソリン | 4kl |
最大積載量16kl |
分 類 | 資 格 | 受験資格 | 無資格者に対して立ち会うことができる危険物の種類 | 危険物保安監督者になれる施設 | |
甲 種 | 消防法で定めるすべての種類の危険物の取り扱い、および取り扱い作業に関する立会いができる。 | 大学、短大、高専において化学に関する学科、課程を修了したもの。乙種の免状交付を受けて2年間以上危険物取扱いの実務経験を有する者。 | すべて | すべて | |
乙 種 | 免状に指定された種類(実際には乙種第4類がほとんど)の取り扱い作業に立ち会うことができる。 | 特になし。 | 該当する種類のみ (例:乙種4類) |
該当する種類のみ (例:乙種4類) |
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丙 種 | 、第4類の中のガソリン、灯油、軽油、第3石油類(重油、潤滑油および引火点130℃以上のもの)、第4石油類および動植物油類の取り扱いができる。 | 立会いはできない、危険物保安監督者にはなれない |
ガソリンスタンドについて
消防法ではガソリンスタンドは、給油取扱所と呼ぶ。ガソリンスタンドには、危険物保安監督者がいなければならない。
危険物保安監督者とは、甲種危険物取扱者または乙種危険物取扱者で6ヶ月以上の実務経験のあるものから選任される。ガソリンスタンドには、必ず保安監督者の氏名が掲載されている。
セルフスタンドについて
平成10年4月から消防法の改正で解禁されたセルフ給油。セルフといえども、無人というわけではない。危険物保安監督者が必ず常駐しているのである。また、有人のスタンドと違い、消防法の規定で給油には常に立会いが必要で、引金がロックできないようになっているため給油中はずっとノズルを握っていなければならない。セルフスタンドではご存知のように1回の給油時間は4分以内、1回の給油量はガソリンの場合100Lまでと消防法で規定されている。1回の給油時間は長時間、燃料タンクの蓋を開けた状態でガソリンが揮発して、引火する危険性を回避するため、1回の給油量制限は、危険物4類の取扱免許を持たない人が、ガソリンでは100L、軽油・灯油では200L以上を1つの容器に入れて保管することが禁止されているからである。さらに法によりセルフスタンドには、監視カメラの設置が義務付けてあったり、ゴミ箱の設置が許されていない。
ガソリンの容器詰め替え
ガソリンの運搬は灯油用の18Lプラスチック容器で運搬はできない。業界の申し合わせにより、ガソリンの詰め替えは、プラスチック容器の場合は最大容量10Lまでで、容器もガソリン用としての性能試験が行われていなければならない。実際には危険物保安技術協会の性能試験確認を受けた22L以下の金属製容器(携行缶)で運搬する。ちなみにセルフスタンドでは性能試験に合格した容器であっても客がガソリンを容器に写すことはできない。危険物取扱いの免許を持っていても、従業員を呼んで入れてもらう必要がある。スタンドによっては容器への詰め替えそのものを行わない場合もあるので注意。
危険物取扱者の資格を得るには
甲種には受験資格があり、皆が皆受けられるものではない。甲種は乙1〜乙6と同等の資格であり、乙種1〜6類を取得すれば、取扱える危険物の内容は甲種と同じである。危険物取扱者の免状としては同等となる。だからといって、乙1〜6免状を甲に切り替えてもらうことはできない。
乙種第4類の試験は、筆記試験のみで(1)「基礎物理学・化学」(10問)、(2)「危険物の性質、火災予防、消火」(10問)、(3)「法令」(15問)の計35問で、解答は2時間で、4者択一のマークシート方式である。60%以上の正解が必要(3科目のうちひとつでも60%を切ると不合格)。ただし乙種免許は、1つの類に合格すると、他の乙種を受験する場合には「基礎物理学・化学」、「法令」が免除されるので、危険物の性質、火災予防、消火の10問のうち6問正当すればOKである。よって、乙種の免許をひとつでも取得すれば、他の乙種免許取得は比較的容易で全類制覇も夢ではない。
類 | 名 称 | 性 状 | 一般的性状 | 物質例 |
第1類 | 酸化性固体 | 固 体 | それ自身は燃焼しないが、他の物質を参加させる酸素を多量に含んだ固体。マッチ、花火などの材料。 | 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウムなど |
第2類 | 可燃性固体 | 固 体 | 火災によって着火しやすい固体。比較的低温で引火しやすく燃焼速度が速い。マッチの原料。 | イオウ、鉄粉、赤リンなど |
第3類 | 自然発火性物質、禁水性物質 | 固 体 液 体 |
空気に曝されると自然には発火したり、水と接触して発火し可燃性ガスを発生する。 | カリウム、ナトリウム、黄リンなど |
第4類 | 引火性液体 | 液 体 | 20℃で液体(または40℃で液状になる)で引火性のあるもの。 | ガソリン、灯油、軽油、重油など |
第5類 | 自己反応性物質 | 固 体 液 体 |
加熱などにより多量の発熱、爆発するもの。ダイナマイト。セルロイド。 | 過酸化ベンゾイル、ピクリン酸、TNTなど |
第6類 | 酸化性液体 | 液 体 | それ自身は燃焼しないが、他の可燃性の燃焼を促進する性質を有する液体。漂白剤。 | 過酸化水素、硝酸、過塩素酸など |
通行禁止項目 (全面通行禁止) |
火薬類および火薬類以外の爆発性物質 | 火薬 | アジ化鉛などの起爆薬 | ||
ニトログリセリンなどの硝酸エステル類、煙火(玩具煙火を除く) | |||||
火薬類以外の爆発性物質 | ニトロメタンなどの爆発性物質 | ||||
毒物・劇物およびその他の有毒物質 | 毒物 | 四アルキル鉛、シアン化水素、ホスゲンなど | |||
劇物 | クロルビウリンなど | ||||
毒物・劇物以外の有毒物質 | 二酸化窒素など | ||||
水または空気と作用して発火性を有する物質 | 塩化アセチレンなど | ||||
通行制限品目 (右記の数量以下でも、軽自動車および三輪以下の車輌に積載した場合は通行禁止) |
火薬類および玩具煙火 (火薬類取締法) |
火薬 | 黒色火薬その他火薬 | 10kgを超えるもの。 | |
爆薬 | ダイナマイトその他爆薬 | 爆薬5kgを超えるもの。 | |||
火工品 | 工業用雷管その他火工品、玩具煙火 | ||||
高圧ガス (高圧ガス保安法) |
可燃性ガスおよび毒性ガス | LPガス、アセチレン | 標準状態でガス容積60m3を超えるもの。液化ガスで600kgを超えるもの。 | ||
酸素 | 酸素 | ||||
不活性ガス | 炭酸ガス、塩化ビニル、その他高圧ガス | 標準状態でガス容積90m3を超えるもの。液化ガスで1,800Lを超えるもの。 | |||
毒物または劇物 (毒物及び劇物取締法) |
毒物 | 液状の無機シアン化合物製剤、フッ化水素およびフッ化水素を含有する製剤、アンモニアを含有する製剤(約10%以下)、?フッ化水素酸、ジメチル硫酸、臭素、塩化チオニル(400kg未満を除く) | 1,000kgを超えるもの | ||
劇物 | |||||
第1〜6類 (消防法別表) |
ガソリン、ガーバイト、灯油、その他消防法上の危険物 | 消防法別表の数量を越えるもの | |||
腐食性を有する物質 | ナトリウムアミドなどの腐食性を有する物質 | 200kgを超えるもの | |||
マッチ | マッチ | 50kgを超えるもの |