遺言は元気なときにしよう!

1.遺言について

「遺言をしよう」なんて、「まだ元気なのに」とお気を悪くされないようにしてくださいね。でも、ご自分の思いや、築いた財産を、自分が亡くなったあとどのように伝えたいかって思うのも自然な感情です。生きているからこそ、伝えたい思いや財産があるのです。それが今、生きている証でもあります。死後はその延長線上にあります。そして、その遺言は、ご自分が元気なときにこそ、正確な意思を伝達できます。死の直前にも遺言は可能です。しかし、そのような状況のとき、充分にご自分の意思を遺言書に表し、伝えられるでしょうか?また法律的に、有効なものが作成されるでしょうか?少し心配になってきます。 このように考えると、遺言は元気なときに、お話のできるときに、また、ご自分で字の書けるときにこそすべきものであると思えてきます。遺言は未成年者であっても、15歳以上になった方はできます。

2.遺言の効力

相続においては原則的に遺言内容が優先します。妻2分の1、子供2分の1などという相続分を考えるのはこの次のお話です。ただ、このような遺言通りの相続を否定するものもあります。それが、「遺留分」です。相続財産についてはその相続人である配偶者(妻又は夫)、直系卑属(息子、娘場合により孫、ひ孫)また場合により直系尊属(親、祖父母等)は、相続財産について固有の侵すことのできない権利を持っています。これが遺留分ですが、遺言内容を実行するのに遺留分権利者の同意や承諾を要するわけではありません。遺言内容を実行する前に、他の相続人または遺留分を持っている権利者とお話し合いをして、スムーズにこれを実行しようとすることもできますが、 話し合いができない等の事情があるときには、遺言で権利を得た者は、単独であるいは遺言執行者と協力の上、この手続をすることができます。遺言で権利を取得した者は、先行的に手続を行うことができ、遺留分権利者は、この後、その遺留分に基づいて減殺(げんさい)請求(遺留分取戻し)をできます。即ち、遺留分を侵している遺言であっても、その結果の相続や遺贈において減殺請求がなければそのまま遺言通りになってしまいます。したがって、遺言書を作成しておくことは、相続させたい相続人あるいは受遺者にとって、この点有利であり、遺言者の意思は生かせると考えられます。また、この遺言が公正証書にでもしてあると、家庭裁判所における検認などの手続も要せず、後の手続も、書類関係にしてもずっと簡単なものになってきます。

3.遺言の方法

遺言書は、法律に定めた方式にのっとって作成しないといけないことになっており、その書き方については、割合厳格に規定されている事柄があります。この規定に反すると、遺言の効力が否定されてしまうことにもなりますので、慎重に遺言をする必要があります。

(1)自筆証書遺言

この遺言の方法は、遺言者が遺言内容全文と日付と氏名を自分自身で書き、これに押印します。印章はご自分の印章であれば、必ずしも実印でなくとも可能です。間違った場合の訂正方法は、その訂正箇所を指示してこれを訂正、変更した旨を記載し、これに対して署名押印し、更にその、訂正した箇所に押印することが必要です。訂正するとなると少し複雑になりますので、間違った場合はできるだけ全部書き直し訂正のない遺言書にする方が無難です。

(2)公正証書遺言

この遺言の方法は、公証人の面前で、証人2名以上の立会のもと、遺言内容を遺言者が述べ、公証人が遺言を筆記して遺言書を作成します。遺言の方法はある程度公証人が指示してくれますので安心ですが、内容については基本的には自分でその意思を言明して表す必要があります。通訳する方がいれば可能ですがこのあたりが、意思のはっきり伝えることのできない、少し病弱になってしまっている方等にとっては、難しいところです。遺言者が病人で入院している場合は、頼めば公証人が出張してくれます。この遺言書を作成するときには、遺言内容や打合の手続などを司法書士や弁護士に頼めばスムーズにまた要点を整理したりしてくれますので安心です。

(3)秘密証書遺言

この遺言の方法は、ご自分の意向により書かれた遺言の内容に対し署名、押印すること。この遺言内容は必ずしも自分で書く必要はありません。この遺言書を封じ、証書に用いた同じ印鑑で封印し、この封書を公証人及び証人2名以上の前に提出し、これは誰(住所、氏名)が筆記した自分の遺言書である旨を申述します。公証人はこの証書を封紙により封じますが、この封紙には証書提出日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者、公証人、証人が署名押印します。尚、この秘密証書による遺言に欠けるところがあった場合にも、自筆証書の遺言の方式に適合していれば、自筆証書遺言として有効になります。

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