口腔機能訓練を取り入れたオーラルディスキネシア症例

 

      ○横田誠、岩崎香代、林 甫

 

      京都府 

1. 緒言 

 オーラルディスキネシア(以下ODと略す)は、顔面の下部に出現する持続的不随意運動である。その発症は脳神経系の異常や薬物の作用に加え、不適合な義歯などの顎口腔系からの異常な感覚が誘因として関与すると言われている。この異常な感覚を取り除くためには、義歯による疼痛や違和感の除去、適切な咬合高径や明確な咬頭嵌合位の付与が重要であるが、口部の不随意な動きが、義歯作成や修正時の的確な操作を妨げ、ODの治療をいっそう困難にしている。

 また、在宅医療の中で、うつ的状態の独居老人のOD症例は、社会性に乏しく、いっそう重症となるため、生活の活性化や、意欲の向上を目指したアプローチが必要である。

2.方法

 本症例の患者は84歳の女性で、摂食・発音障害が主訴であるが、舌を含む口部の不随意運動を伴っているため、治療用義歯による補綴治療と同時に訪問歯科衛生士による、患者さんが楽しく行えて、喜びが得られることにより自信がつき意欲へとつながるような方法を加味した、顎口腔機能訓練とを行った。

3.結果および考察

 初診時、ODにより義歯作成や修正は困難であったが、機能訓練により舌の不随意運動は徐々に軽減し、義歯の作成および装着・調整が可能になった。音声や言語に障害が認められていたが、発語も明瞭化した。

 本症例は、歯科領域の障害の改善で、周囲とのコミュニケ−ションも回復し、患者の自立支援に大きく寄与したことから、口腔機能訓練と適正な義歯装着による相乗効果は大きいと考えられ、訪問歯科衛生士とのチームアプローチの重要性を痛感した症例を報告する。