★文屋式目★

歌仙「涼庭の巻」    7月12日首 8月30日満尾
                    (初折表六句)

石塀の隙間に覗く夏の庭        香緒   
   金魚勇んで落とす金いろ     褄黄   
照り返す甍炙られ雲逃げて       虚蝉   
   井戸は静まり声が遠のく     香    
萩の茎月光つたひ鈴が鳴る       褄   月  
   夜露零れて錆びる小刀      虚     
                    (初折裏十二句) 
稲を刈るエンジン空に響く青      香  
   揺れたる穂先少しはぢらひ    褄   恋
眼を伏せてしなだれかかる髪なぞり   虚   恋
   ひそかな想ひ鏡映して      香   恋
ダリの毛物のつしのつしと逃避行    褄
   落ち行く寓居イスカンダルへ   虚
月涼しファン黒々と風に群れ      香   月
   きばりて屁ひる老ばなな売り   褄
裏声で値切るおばさん唾飛ばし     虚
   目にもワイパー必要かしら    香
かなだらひ底に積もるは花骸      褄
    雨に打たれて芽吹く山繭    虚
                    (名残表十二句)
菜の花のはるか彼方に海が見ゆ     香
   ズボンの裂け目吹き抜けて風   虚
もくもくと旨し煙の魚類たち      褄
   味覚の分子いまはいづこに    香  
蝉時雨汗を拭ひてハイヌーン      虚 
   銃筒磨くうすものの僧      褄 
たどり行くけもの道這ふ山みみず    香 
   身をくねらせて慕ひ追へども   虚   恋
そのときの声が声呼び一になる     褄   恋
   祈り届けとうごめく胎内     香  
初潮の高き波浴び月露は        虚   月
   木管激し蔓珠沙華刺す      褄 
                   (名残裏六句)
夕霧の奥の舞台の人影の        香  
   かがり火まとふ紅葉揺らぎて   虚
居酒するガード下にて車輌飲む     褄     
   轟音消えて語り再開       香    
春雨の絶へて蕾の笑みこぼれ      虚   花   
   まぼろし捜す子らの遠足     褄   挙句