マガジン えきまえ&メイプル (97/秋) ビジュアルソースは、「ファンカデリック」。ただ無惨な今を描きたかった。それといろんな事件が混ぜ混ぜに。ふたつの作品をひとつに構成しなおしました。

虫鳴くうちに

季節の虜になる人だな。
かわいそうに、秋になったら枯れている。
紅葉している。
風に吹かれている。

それから、虫に鳴かれている。
見物されている。
じわじわと、葉は、根の方向へ降りていっている。
ということは、土を恋しく思い地面のほうへ
だんだん沈んでいっている。

それはそれで自然なことで
とやかく言われることでもない。

季節の虜は、それはそれでいいことだし、
反発してもしようがない。

虫は虫で、遠いところでは鳴かない。
ごくごく近い、枕のそばで、おいおいと
チリリと鳴いているだけ。

滅んでも
壊れても
根に、どっぷりと沈んでも
それはそれで。

紅葉同士で、世界ユニット世界ユニット、単純な、一本道の、直立で、

ばらばらで、生きて死んで
ばらばらで、散って、それからひとつところに
平らになって
また、虫に鳴かれて

遠い上空、澄んだ秋晴れにジェット雲が、ラインを描いていく。

紅葉同士で、恥ずかしがって
虚無を、すねたり、てれたり

チリリ、
チリリン、
もう少しオクターブを上げて
キリリン
ピュリリン
やってるうちに

もっともっと綺麗な夕焼けだろ。

とらわれたい
抱かれたい。

滅んでも
壊れても
とらわれたい、抱かれたい。

土の温みで
土の腕で、抱かれたい抱かれたい。

ああ
なんとも抱かれたい

虫鳴くうちに
絞められるように。

照る道に、ひとり。
影だけが揺れている。
鼻で唄っている。
かなしい風景。

斜めから、青草のけはい
刺すように。
その人の眼に平行に。
双眼に平行に、茎が線を引く。

そこで埋まるのは、よくない。
こんなところで胴を土に埋めて、首だけ出して
へらへらするなんて、そりゃもう
無様だと思うよ。

語りかけるものもいない。
光り?
そこで、ちゃらちゃらとしゃべっているのは、
風?
小馬鹿にするように
巻いているやつは

兵士というのは、名ばかりで、
それは単なる光景で
兵士というほかない、みすぼらしさで
首まで埋まって
それで、時代遅れのアフロヘアで。
じつに、上手に、よく通る声で
がなってる

 「わたひたちのこうぼうはむざんをきわめどこからがほんとうのたたかい
であるのかわからなくなりわたひはもちをたべしのぎながらそんざいをかけ
ぶきをみがきそれからかわをわたりすうにんをしさつしすうにんにあざわら
われにげるようにこのようにして埋まっている」

生き埋めの兵士の回りに
フォークダンスの集団が現れたのは、そのときだ。

 「なんでや!!」

それは翳る、それは翳る。
描かれた、贋の光景ではなく、うつつの血のでる無惨さで起こっている
できごとなのだ。

死んだらしまいの物語ではなく
死んでも続く、血のでる

ポルカ、クラリネット、カネタイコ

それでも、青草は真面目に
兵士へ繊細な茎の影を刺している。

勝機は、きっとある。

踊るやつらを、笑い返すことだって
ふりしぼってできるだろう。
だけど、この光景はあまりにも
はまっている。
実際、兵士は、穴にはまっている。
首から上以外は、呼吸すらしていない。

血だけが、何度も何度も循環し

その血もまた
笑いながら流れている。