償い
1998 8/5
月が、辺りを照らしている。
遠くで、街灯の明かりが光っている。
木の葉が風に吹かれ音を立てている。
草陰からは、虫の鳴き声が・・・。
生き物の気配など一切感じない。
けれども、夜というものはこんなにも騒がしい。
背中に堅い木の幹を感じ、左の手には冷たい土の感触。
そして、身体からは力が抜けていくような感覚。
だんだん、身体が冷えていくのを感じていた。
まだ、夏なのに・・・。
ふと、空を見上げる。
視界の端に木の葉。
月は丸く、銀の光を発している。
空は暗く濃い濃い蒼の色。
時折、雲に月が隠れる。
それでも、月の場所はわかる。
雲を通して銀の光が見える。
今頃、彼女を愛していたことに気付いてしまった自分。
いや、こんな時だからこそ気付いたのかもしれない。
いたずらに彼女を傷つけてしまった。
これは、彼女がその情の深さ故にとった行動だろう。
彼女に愛してるって言ったらどんな顔をしただろう?
この気持ちをそれと知らず、彼女を傷つけた。
これは、その報いかな?
考えてみると、ガキだった。
瞼が重い。
眠くなってきた。
明日、彼女に謝ろう。
それから、彼女に気持ちを伝えよう・・・
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