ぽつぽつと雨が降っている。 僕がT字路を曲がろうとした時ひとつの影が目に入った。 電柱の下に少女が立っていたのだ。 傘もささずに。 影のうすい子だなあ。 「入りなよ。」 僕はその子の頭上に傘をかざした。 その子は無言のままそこに立っている。 しばらくして、雨が当たらないにも関わらず、 その子からは滴が滴っていることに気付いた。 そうか・・・。 「誰か待ってるの?」 その子はこくんと頷いた。 「じゃ、この傘、貸してあげるよ。」 僕はその子に傘を渡して走り出した。 別にその子が恐かったわけじゃない。 意味がないこともわかっていた。 ただ、傘を貸してあげたかったのだ。 次の日、雨もあがり、開いた傘がそこに置いてあった。 昔、この場所で事故があったのを思い出した。 雨の日だったという。 なんとなく、やりきれなかった。