第一笑 地面に弱りきった蝉が落ちていた。 僕は蝉を樹につかまらせてあげようと指を蝉に近づけた。 蝉は意外な程しっかりと僕の指につかまった。 僕は蝉の生命力に感動すら覚えた。 しかし、そいつは腹が空いていたのだろうか。 そいつはその空腹を満たすべく、口先を僕の指に突き立てていた。 「うぎゃ〜〜〜!」 その時まで僕は優しかったのかもしれない。 僕はとっさにそいつを指先から振り落としていた。 そいつらの口先は固い木の皮すら容易く貫通するほどである。 幸いにも僕の指に穴は開いていなかった。 もし僕が我慢さえしていれば、 そいつは世界でも希であろう血を吸う蝉となれたのだろうか。 しかし、それは考えたくもない恐ろしい話ではある。