「忘れない、絶対忘れないよ。」 そいつが別れ際にそう言った。 今思えば、なんて感動的な言葉だろう。 いろんな気持ちが混ざって、溢れて、涙をこぼした。 ・・・あの時は子どもだったからね。 それから数年経って、 街中で彼女を連れたそいつにばったりと会った。 「久しぶり。」 「誰?」 ・・・あっさり人のこと忘れてやんの。 「知り合い?」 「ただの、元恋人です。」 ちょっと頭にきてたので、 彼女の問いにしれっと嘘をついた。 「あなたってそういう人だったの!?」 彼女の怒声が辺りに響いた。 それがきっかけで二人は大喧嘩を始めたわけだけど、 さっさと帰ったので後の話は知らない。 きっと別れちゃっただろうなあ。 ・・・でも、あんな事を言っておきながら、 あっさりと人のことを忘れた報いだよ。