ジェネレーションギャップ-2-
2000 11/1


広大な土地に吹きすさぶ風が少年に吹き付けている。
少年はクレーターを眺めていた。
ウィルスが世界に散って何週間後かにできたという巨大なクレーター。
それはウィルス感染者がその力を発揮しはじめたころと重なる。
クレーターの直径は約1キロメートル。
持てる力をすべて出し切ったとしてもそこまでの力は出せない。
そう少年が感じる程の力。

「力の暴走による自滅・・・か?」

今のニュージェネレーションにはそれだけの力を扱える者はいない。
まして、それだけの力を持つ人間が目立たないわけがない。
だからこそ、少年はそう結論を出さざるを得なかった。



「おー、こんなところにもいやがるぜ。」

「こいつら、どこにでも繁殖するからなあ。」

「そりゃ、言えてる。」

男二人の嫌らしい笑い声が辺りに木霊した。
その笑い声は家の中にいた少女の耳にも届いた。

「あなた達は隠れてて。」

少女は子ども達を家に残し、家の外に出ていた。
うまくいけば自分の身だけですべてがすむかもしれないからだ。
いや、そうさせるつもりだった。

「あなた達、こんなところにも何かよう?」

二人の男を前にして少女は叫んでいた。
もちろん、それは男達の注意を自分に引き付けるために他ならない。

「おー、奇麗な姉ちゃんだねえ。」

「何かようはないんじゃないの?」

「あんたらは俺達の奴隷なんだからさ。」

「ほんとは狩りにきたんだけどさ。」

「あんた奇麗だから特別に連れてかえってやるよ。」

男の手が少女の腕を掴んだ。

「いやっ、離して!」

少女は男の腕を振り払おうとした。
しかし、男の手はがっちりと少女を捕らえていた。

「お姉ちゃんを離せ〜!」

家から飛び出した幼女が、男の手に噛みついていた。

「この餓鬼っ!」

幼女は弾かれ吹き飛ばされる。
その勢いで幼女は地面を2転、3転と転がった。
少女は吹き飛ばされた幼女に急いで駆け寄った。

「お姉ちゃん、大丈夫だった?」

幼女は自分が傷ついてなお、少女の事を気遣っていた。
少女は胸の中が熱くなるのを感じていた。

「私は、大丈夫。」

「大丈夫だよ。」

少女は優しく幼女に微笑んだ。
それを聞いて安心したのか幼女の身体から力が抜けた。
気絶したのだ。
幼女が気絶したことを確認すると、少女は男達の方を振り返った。
その瞳は金色に輝いていた。
誰しもウィルスが活動すると身体に変化が起こる。
ウィルスが発光現象を起こすのだ。

「許さない。」

「ユルサナイ!!」

少女は叫んだ。
さらに瞳から洩れる光が強くなる。
少女の怒りがウィルスの活動を活発にさせていた。

「こいつ、ニュージェネレーション!?」

「なんで、こんなところに!?」

「二人がかりなら負けるはず・・・がっ!!」

刹那、男の身体には電流が走っていた。
電流を受けた男の身体は炭の塊と化していた。

「う、うわーーーーー!」

男は少女に敵わないことを感じ取ると逃げだそうとした。
しかし、少女はそれをさせなかった。
挙げた手を少女は振り下ろした。
少女の手に導かれるように雷が男の身体を貫いていた。
少女の身体から光がふっと消える。
それとともに、少女は力が抜けるかのように地面に膝をついていた。
振り返った少女が見たものは、恐怖に凍り付いた子ども達の顔。

「あ・・・。」

少女は何か言おうと子ども達に手を伸ばす。

「うわーーーーっ!」
「きゃーーーーっ!」

子ども達から悲鳴があがった。
それは人を一瞬で殺してしまう力への恐怖。
ニュージェネレーションへの恐怖だった。

「みんな、ごめんね。」

少女は寂しげに笑った。
思い出深い家を背に少女は歩き出していた。
行くあてなんてどこにもない。
それでも、少女は歩き始めていた。
自分の居場所を見つけるために。


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