ジェネレーションギャップ-5-
2001 3/3
少女は男の出ていった扉を見つめていた。
いつまでも、ぼーっとしてたって仕方ない。
私は、私にできる何かをしよう。
少女はそう考えると、勢いよく立ち上がった。
その頃、基地の近くでは一隻の艇が滞空していた。
そして、艇から辺りに声が響き渡った。
それは小さな子供の声のように聞こえた。
「オールドジェネレーションの諸君、こんにちは。」
「そこに僕達の仲間を殺してくれた奴がいると思うんだけど。」
「そいつを僕達に引き渡してくれないかな?」
「そしたら君達のことは見逃してあげるからさ。」
「もちろん、君達が抵抗しない限りはね。」
「30分だけ待つよ。」
「30分経ってもそいつが出てこないようなら・・・。」
「わかるよね?」
少年の声が低く変化した。
「それじゃ、よろしく頼んだよ。」
最後は明るい声で少年は通信を終了した。
ぷつっという音と共に少年の声は聞こえなくなった。
基地の中は蜂の巣を突ついたような騒ぎになっていた。
しかし、それは少女にとっては蚊帳の外の出来事のようだった。
少女は冷静に考えていた。
慌てふためく人々を尻目に。
あの人達が捜しているのは私のことだ。
私が出ていかなかったらここにいる人達は・・・。
「あの、外に出るにはどこに行けばいいですか?」
少女は手近な人に声を掛けていた。
「外? 何言ってんだ、今はそんな時じゃねーだろ?」
あたふたと男は何処かに走っていく。
「あの、外に行くには・・・。」
誰もが忙しそうに何処かに駆けていき、少女の言葉に耳を貸さなかった。
「君、こんな時に何処に行こうってんだい?」
必死に人を引き止めようとする少女に誰かが声をかけた。
少女の前には例の男が立っていた。
「私、外に行かないといけないんです。」
「あの人達が捜しているのは私のことだから。」
「君のような少女がどうやって、ニュージェネレーションを?」
男の口は当然の疑問を発していた。
「・・・私もニュージェネレーションだから。」
俯いた少女の口から小さな声が漏れた。
その声ははっきりと男の耳に届いていた。
「だからって、君が出て行く必要はない。」
「どうせ、あいつらもこっちの正確な位置までは掴めてないんだ。」
噴き出すように男の口から言葉が飛び出していた。
男の言葉は少女には心底嬉しかった。
だからこそ、少女は決心していた。
この場所を離れることを。
「やっぱり、行かせてください。」
「ここにいるとみんなに迷惑がかかるから。」
男は何も言わなかった。
いや、何も言えなかったのだろう。
俯いた男の指は、ひとつの方向を指差していた。
少女に男の顔は見えない。
少女は男にぺこっとお辞儀をした。
恐らく、男にはそれは見えていないだろう。
それでも、少女はそうせずにはいられなかった。
そして、少女はその道を歩き出していた。
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