ジェネレーション・ギャップ-6-
2001 3/5


船に乗せられた少女は球状の建物まで連れてこられていた。

「この先にニュージェネレーションの党首がいます。」
「ですが、貴方を通すわけにはいきません。」
「貴方には私と闘ってもらいます。」

「どうして闘わないといけないの?」

「あの方のためです。」

「私は貴方とは闘えない。」

「それなら、貴方が死ぬだけのことです。」

冷たい、抑揚のない声が少女の耳に届いた。
それは感情を押し殺しているかのようにも聞こえた。
青年の目から冷ややかな光が洩れた。

「私は・・・。」

生きていてもいいんだろうか?
そんな問いが少女の頭の中をかすめた。
この人を殺してまで生きる価値があるだろうか?
少女の考えはそこで中断された。
青年の力が少女の身体を吹き飛ばしていた。
勢いよく少女は壁に叩き付けられる。
少女はぐったりとして動かない。

「ふふ、ふふふ。」

ぐったりとした少女から笑い声が洩れる。

「ふふふふ。」

ゆらりと少女が立ち上がった。
まるで幽霊や死霊であるかのように。
その瞳からは金の光が溢れ出していた。
背筋に寒気が走る程の衝撃。
青年の身体は確かに少女から危険を感じ取っていた。

反射的に青年は少女を攻撃していた。
力が少女を突き抜け壁を吹き飛ばした。
しかし、そこに少女の姿はなかった。

「ねえ、知ってる?」
「人の身体は電気信号で動くって。」

青年の背後から少女の声が聞こえた。
青年が振り返ると、そこには確かに少女がいた。

「もし、その信号を意図的に操作できたらどうなると思う?」

また少女の姿が青年の目の前からかき消える。
するりと青年の首に手が巻き付いた。
後ろから少女が青年に抱き着いていた。

「時間が止まったかのように思えるの。」

少女が青年の耳に囁いた。
青年は感じていた。
少女がさっきまでの少女ではないことを。
するりと少女の手が青年の首を離れた。

「さようなら。」

青年の身体に球状の何かが重なった。
次の瞬間には青年の身体は一瞬で燃え尽きていた。
少女はがっくりと地面に膝をついていた。
それは少女の意思ではなかった。
第二の人格とでも言うべき彼女の自己防衛本能が働いてのことだった。
それでも、その間の記憶は少女にしっかりと焼き付いている。
金色の光の消えた少女の瞳からは涙が溢れていた。


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