病源菌 第4話
2000 12/13
人が倒れていく。
ぱたぱたと。
おもしろいように。
望んで人を死なせたいと思ったことはなかった。
その日、その時までは。
街に貼り紙が貼られていた。
貼り紙に写っていたのは私の顔。
何が書いてあるかはわからないけどいい気はしなかった。
だから、私はその街を離れることにした。
「お嬢ちゃん、どこにいくんだい?」
車を私の横につけた男の人が話し掛けてきた。
「人のいないところまで。」
「乗りなよ。」
「俺の家は郊外にあるんだ。」
「で、でも。」
「そんなに近づかなかったら問題ないんだろ?」
「乗りなよ。」
男の人はにっと笑った。
私は男の人の強引さに負けてしまっていた。
ふと気がつけば私は誰かの家の中にいた。
私の身体には毛布が掛けられていた。
「ここは?」
「俺の家。」
「随分とお疲れだったみたいだね。」
「あんなところで寝させるのもなんだからついつい運んじまったよ。」
「どうして?」
「そんな顔するなよ。」
「俺はもう生きることなんかに興味ないんだ。」
私は何も言えなかった。
男の人も何も言わなかった。
でも、私達がそうしている時間もそうは長くなかった。
いつのまにか表にはたくさんの人が集まっていた。
「どうやら、君の賞金目当てのやつらみたいだな。」
「賞金?」
「知らなかったのかい?」
「君を生きたまま捕らえたら研究所から金が貰えるのさ。」
「私、あそこには戻りたくない。」
男の人の目がまっすぐに私を捕らえていた。
どこか、寂しそうな目だった。
「君は裏口から逃げるといい。」
「どうせ、俺の生きてられる時間は残り少ないんだし。」
男の人はそう言って飛び出していった。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。
何かの音が何度か聞こえ、男の人が地面に倒れた。
地面には血が拡がっていった。
「うわああああっ!」
何かが私の身体を突き破って広がっていくように感じた。
男の人は死んだ。
私のせいだ。
私は男の人の血に濡れた赤い布を私の髪に結び付けていた。
どうしてみんな私をほっておいてくれないんだろう。
私に関わるから命を落とすのに。
どうしてそれがわからないんだろう。
・・・私はどうしてこんな風に育ったんだろう。
悲しくて涙が止まらなかった。
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