病源菌 第6話
2001 11/14
どうして、私は兵器なんだろう。
なんのために私は生きているんだろう。
私と触れ合った人はみんな死ぬ。
一緒にいた時間が長ければ長いほど・・・。
別れた後の空虚さは大きくなる。
こんなに辛い思いをしてまで生きる意味はあるの?
こんな私でも幸せに死ねる時期はくるの?
私の考えはそこで中断された。
ハッ、ハッ、ハッ。
変な生き物が私の周りを周っている。
近づきも離れもしないで、ぐるぐると。
時には先回りし、時には後ろをついてくる。
お腹が空いてるのかもしれない。
「食べたいのなら、食べてもいいよ。」
その後には死んでしまうかもしれない。
だけど、お腹一杯食べて死ねるならきっと幸せだろう。
私は立ち止まって、その生き物の行動を待った。
なのに、その子は私を置いてどこかへ歩いていく。
私はその子の後を追いかけていた。
その子は私のことが気になるのか時折、振り返る。
しばらく歩くと大きな建物が見えた。
建物につくと、その子は「わんっ」と大きな声を出した。
「やれやれ、今度は人間を拾ってきたか」
「しかも、研究所が躍起になって探しておる実験体とはなあ」
それは、変な乗り物に乗ったお爺さんだった。
手で輪を回して進むのであまり機能的な乗り物とは言えない。
「ひとつ聞きたいことがあるんじゃが」
「お前さんの住んでた街に隕石が落ちなかったかね?」
「どうして、そんなこと知ってるの?」
「なに、つまらん想像じゃて」
「確証が欲しかったのでな」
「お前さんのウイルスがわしを殺さんという確証がな」
「?」
「何もわからんといった顔じゃな」
「ようするに、お前さんに近寄っても平気ということじゃ」
そう言って、お爺さんは私に近寄った。
「平気? お爺さんは死なないの?」
「まあ、大丈夫じゃろう」
「死んでもこの歳じゃからな、別に悔いはないわい」
ぽんぽんと私の頭に軽く手を当てて、お爺さんは笑った。
お爺さんの笑顔が嬉しかった。
私もお爺さんにつられて笑っていた。
また、人と接することができるのが嬉しかった。
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