京都俳句推敲指導経過とその解説    
磯 野 香 澄
原句行員は皆鉾浴衣下駄の音 寿 一
この原句の場合は言えている様で言えて居ないと言う曖昧な綴りになりました。先ず「鉾浴衣」と言う言葉です。「行員は皆鉾浴衣」とはどう言う事かと言いますと、これは怖いお化けの世界です。行員が鉾浴衣に姿を変えている事になり、下駄の音だけが何処からかからんころんと聞こえてきます。そこで場所をはっきりさせて「鉾浴衣」の鉾を取って「浴衣」にします。

下駄音と浴衣の行内鉾の町
「行内」と「鉾の町」と言う場所が二つになるので「行員」としたい処ですが「音」と「浴衣」の二つが中心になるので一応こうしておいて

鉾町や浴衣の行員下駄の音
上下を入れ替えて「行員」にします。しかしこれではまだ何故「行員」なのかそして下駄の音」が文法的に成立しないので作者の言いたい事が書けて居ません。そこでもっと現実の情景を書く必要があります。

◎鉾町の銀行浴衣と下駄の音
「鉾町の銀行」とはっきり書く事によって誰がと言う事を省略しても銀行員である事が分かります。これで祇園祭りの銀行員も浴衣をきて業務に携わっていると言う事が表現出来て、四条界隈の祭りの昂ぶりの一景が書けました。

トップ  戻る  次へ