京都俳句推敲指導経過とその解説    
磯 野 香 澄
原句梅雨晴間見下すトンビ比叡に舞ふ 寿 一
この原句は文法的に言うとどうなるかと言いますと『比叡に舞う鳶を作者が見下ろしている』事になりますのでそこで一旦きちっと写生にします。

比叡に舞う鳶が一羽の梅雨晴れ間
これで梅雨の晴れ間の景色が写生できました。しかしこれでは作者の情感が書けていないので思いをにじみ出すにはどうすればよいかと言う事です。そこで

梅雨晴れ間一羽の鳶が比叡に舞う
もう一度原句と同じく「梅雨晴れ間」を上五にして「鳶が一羽」もひっくり返して「一羽の鳶が」とします。これでだいたいまとまってきたのですが、しかしこれではまだ読み手を情感の中に引き込む力がありません。では後どうすれば良いか、出来上がりを見れば簡単、気付くには大変と言う一字違いが大違いと言う詰めの段階です。

◎梅雨晴れ間トンビが一羽比叡に舞い
「比叡に舞う」を「比叡に舞い」とする事により、これで読み手も作者と同じ情感に浸って風景を見ています。「舞う」と「舞い」の様に一字違うだけで「う」では鳶が勝手に舞っているだけですが、「舞い」では作者の心の中に鳶がいます。

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