SOHO社会保険入門 その1

はじめに

一口にSOHOといっても,SOとHOではかなり違います。
で,SOの方はともかく,HOの方になると社会保険にはまったく縁がないように 思われ勝ちですが,どっこいそうとばかりは言えません。では,どんなところで, あるいはどんな状態で関わりができてくるのでしょうか。そこらあたりから, ぼちぼちと述べていくことにします。

社会保険とは

通常,社会保険といわれるのは厚生年金と健康保険のことです。
雇用保険(失業保険とは昔の法律による制度の呼び方です)と労災保険のことを含めて呼ぶ 場合もあります。
ふつう自営業者は,国民健康保険,国民年金にはいる場合が多いのですが, ごく小規模な事業でも税務対策などで法人化してしまう例はよくあります。
事業を法人化すると,常時従業員を使用する者は社会保険が強制適用される ようになり(健康保険法13条,厚生年金保険法6条)ます。この場合の従業員 には代表取締役も含まれます。まれに代表取締役が非常勤という例もないこと はないですが,それで常時使用される従業員が一人もいないのでは会社が機能 しませんから,法人=社会保険強制適用と考えて間違いありません。
ただ,法人化すれば強制適用になるからといって,役所が手続きをして,保険証 を送ってくれるわけではありません。
手続きは自分でしなければならないのです。
(つづく)

SOHO社会保険入門 その2

社会保険の適用

前回述べたように,法人=社会保険強制適用となるのですが,株式の店頭公開あるいは 上場を目的としているベンチャー企業と異なりSOHOの場合,いきなり法人化する 事は少ないと思います。
個人事業の場合は,従業員5人以上(業種による除外あり) が強制適用の対象となりますが,それ以下でも任意で加入する事は出来ます(任意包 括加入)。ただし,法人と異なりいずれの場合も事業主は加入できません。
ただ,最近よく新聞紙上を賑わしているとおり,社会保険料はかなり高額(給与を もとにして算出した標準報酬月額のおよそ13%ずつを事業主と被保険者それぞれで 負担)なので,強制適用事業でない場合は費用の負担を十分考慮してからでも遅くは ありません。

SOHO社会保険入門 その3

労働保険

普通,社会保険とは健康保険,厚生年金,国民健康保険,国民年金などを言い, 雇用保険,労災保険のことは労働保険と言います。雇用保険は昔の失業保険の事です。 もう20年以上も前に今の名称に代わったのですが,いまだに失業保険のほうが 通りがいいようです。
前回述べてきたように,社会保険は法人事業所は例外なく強制適用ですが, 5人未満の個人事業は任意適用と言う扱いになっていました。ですから,SOHOが ちょっと規模を拡大して個人事業のまま人を雇ってもすぐに適用と言う問題は 起こりませんでした。しかし,労働保険はごく一部の例外(農・水産業など)を除き 当然に適用を受けます。
忙しいときに友人に仕事を手伝ってもらうと言った場合, 人を雇ったという感覚は乏しいのですが,実質的に使用従属関係があり賃金が支払 われているものは労基法上の労働者とみなされます。
労災保険は労基法等により 使用者に課せられている無過失保証責任を肩代わりするものであり,その事業を開始 した日(労働者を雇用した日)に保険関係は成立しています。 でも,手続きは必要です。
つづく

SOHO社会保険入門その4

最初の手続き

労働保険には成立届,健康保険・厚生年金には新規適用審査が必要です。
労働保険のほうは比較的簡単に手続きできます。京都府の場合は職安の窓口へいくと「雇用保険の事務手続き」という小冊子が置いてあります(なければ窓口へ申し出るとくれます)。 この冊子は労働保険の成立届から,雇用保険の運用手続きまでが詳しく書かれていますし,離職票の書き方なども記載されてますから,持っていると大変重宝します。
これを見て手続きをするのが一番手っ取り早く,かつ安上がりです。
社会保険のほうはちょっと面倒で,法人の場合は登記簿謄本,定款,直近の決算における貸借対照表損益計算書,賃金台帳,労働者名簿,出勤簿などを揃えて審査を受けなければなりません。
つづく

SOHO社会保険入門その5

社会保険の審査

労働保険は割と簡単に手続きが出来ますが,保険料の納付の方法がちょっと厄介です。
労働保険料の納付は概算納付・確定申告という方式になってますので労働保険関係が成立後50日以内に概算保険料を納入しなければなりません。概算保険料は成立の日以後その年度中(3月31日まで)に支払われる予定の賃金の総額から算定します。翌年度はこの概算保険料を精算して不足分があれば納付します。同時に当該年度についての保険料を概算計算して納付します。前年度の精算の結果,超過分があれば充当出来ます。
これらの手続き(年度更新といいます)は毎年5月20日までに行わなければなりません。なお,年度途中で支払賃金が著しく増加した場合(賃金見込み額の2倍を越えて増加し,それに基づく概算保険料と申告納付済み保険料の差が13万円以上となった時は必ず)増加概算保険料申告書を提出し,保険料を納付しておかなければなりません。
これを怠ると翌年度の年度更新の際に納付すべき保険料が過大なものとなってしまいます。
つづく

SOHO社会保険入門 その6

社会保険には審査がある

前にも述べたように社会保険のほうはちょっと厄介です。必要な書類を揃えて審査を受ける事が必要です。
法人の場合は登記簿謄本,定款,直近の決算における貸借対照表,損益計算書,賃金台帳,労働者名簿,出勤簿などを 事前にそろえておかなければなりません。
個人事業の場合も登記簿謄本の代わりに住民票謄本,決算書類の代わりに 所得税確定申告所の写し等の書類をそろえる事が必要です。
それから,通常の資格取得の際に必要な取得届け,扶養異動届,それに伴う諸証明,年金手帳なども揃えておきます。 なお,個人事業の場合は前にも書きましたように,事業主本人は社会保険の適用を受けられません。
必要な書類の準備が出来たらどうするかなのですが,面倒な事に府県単位で扱いが違うのです。
京都の場合ですと,一番最初にしなければならないのは審査の予約です。前もって,事業所の所在地を受け持っている 社会保険事務所へ電話を入れて審査日時を予約し,その日までに書類一式を揃えておいて当日持参して審査を受ける というようになります。大阪,兵庫などそれぞれの地域で異なる取り扱いをする場合が殆どです。 まず,社会保険事務所へ電話を入れて手順を確認する事からはじめて下さい。
つづく

SOHO社会保険入門 その7

(久しぶりなのに最終回)

先行き不安の社会保険に加入しても・・・・。 バブル全盛の頃には良くあったのが,国の制度は当てにならないからといって,社会保険,特に国民年金に 入らないという人。まあ,社会保険の場合は,会社が保険料半分払ってくれてるわけですから入らなければ 大損なのですが,プー系フリーターには手取りが減るので嫌がる傾向が強かったりしました。
経済一流,政治三流などといわれた時代はそれなりに納得できない事もなかったのですが。時は流れ,株価は 2万円台などは夢のまた夢,銀行を筆頭にバブルの後始末を国に泣き付いて経済三流どころか四流,五流の実態 が明らかになった今でもそんな人がいるのには正直驚きます。
それで,どうするのかというと,国民年金に入る代わりに民間生保の個人年金に入って安心してる人がいる というのですから・・・。
国民年金のほうも,あまり先行きが明確になってないので万全とは言えないのがちょっと情けないですが。 でも,もうちょっと良くこの制度を知ると,入ってたほうが良かったと思うんですけどね。 別に私,国からお金貰って宣伝してるわけではありませんが。
終わり