2022 パネルディスカッション

ー ウイズ&ポストコロナ時代における竹文化の方向は?ー



例年、総会を開催する機会を利用して会員のみならず関係者が自由に参加できる情報発表会のようなイベントを開催してきました。しかし、新型コロナ禍に見舞われた一昨年度および昨年度は対面による総会の開催が不可能でしたが、今年度になって公的諸制限が解除されたことから、令和4年度(第47回)総会は久々に令和4年6月3日(金)、ホテルオークラ京都(京都市中京区)において開催することができ、その総会に先立ち、パネルディスカッション(14:30〜16:50)を開催することができ、参加者は74名に達しました。

このパネルディスカッションでは、現在なおも竹文化のみならず竹関連業界等に未曾有の影響を及ぼしている新型コロナの蔓延下に有ることから、「ウイズ&ポストコロナ時代における竹文化の方向は?」をテーマに、次世代を担う若い関係者に提案を求め、互いにディスカッションし、サスティナブルな竹文化の振興発展の道を探ることを目的に開催することにしました。

まず、開会にあたり、本会理事長柴田昌三(京都大学大学院教授・農学博士)が挨拶とともにこのパネルディスカッション(以下:パネルD)の重要性並びにその成果を期待する旨の挨拶によって開幕しました。


柴田理事長の開会の辞


コーディネーターとして石黒周氏、また発表及び質疑に関するコメンテーターとして小林慧人氏を迎え、まず石黒氏が本会の趣旨・目的および進行に関する基本的な方向の説明に基づき、各パネリストを紹介し、各15分程度の発表を促されました。

○コーディネーター 石黒 周氏(Positive Reflection 代表)
○コメンテーター 小林慧人氏 森林総合研究所関西支所任期付研究員・農学博士)

コーディネーター、コメンテーター及び4名のパネリスト

コーディネーター石黒 周氏

コメンテーター小林慧人氏

パネリスト(左から山ア智子氏、真下彰宏氏、大谷悠巴氏、大島大輔氏

パネリスト紹介および発表要旨
山崎智子氏
京都竹工房ゆうすい 主宰

東京での広告制作職を経て京都伝統工芸専門学校(現大学校)竹工芸専攻入学。2007年 同校卒業後、竹定商店さんの一角を借り「京都竹工房ゆうすい」を立ち上げ、卒業生たちと展示会等開催。
グループ展、コラボ企画にも参加。工房を移しながら、現在は京都市上京区(西陣)の築百年越えの京町家の工房において制作活動中。
本年3月、ホテルカンラで行われた「dialogue」に出展。2020年より京都精華大学竹工芸実習アシスタント。

今回の発表テーマ:「生活の中の竹籠〜どう作って、どう販売するか〜」
連絡先:berg_bambus@msn.com


山崎智子氏


真下彰宏氏
長岡銘竹株式会社 代表取締役
竹工芸 竹垣職人/京もの認定工芸士

京都伝統工芸専門校で竹工芸を学び、1998年に長岡銘竹株式会社に入社。2021 年11月より現職。
主な仕事に、桂離宮、京都迎賓館、平安神宮、松花堂庭園などの竹垣製作がある。
2016年からアメリカやイタリアでの竹垣の製作実演やワークショップなど、海外に向けても竹工芸の魅力を発信。
2020年以降のコロナ禍は、学生とコラボした商品開発や新しいデザインの竹垣製作、竹林整備活動や地域イベントへの協力、企業の SDGs 活動としての商品開発など、竹を通じて構築してきた関係を活かして多方面に活動を展開。
職人としての技術の向上はもちろんのこと、竹工芸や竹産業の未来を見据えた、奮闘の様子を伝えたい。
連絡先:info@nagaokameichiku.com


真下彰宏氏


大谷悠巴氏
合同会社 Bamboo Salon

京都大学農学研究科森林科学専攻環境デザイン研究室 2017 年卒。
修士論文テーマは「モウソウチクに関する光合成速度の日変化及び季節変化の特性解析」。
卒業後は会社員をしながら、若手竹笹研究会(竹サロン)に参画。その後、合同会社 Bamboo Salon を共同設立し、現在に至る。
Bamboo Salon では、月に一度、サロン運営(主にオンラインで開催)の他、竹の利活用に関するコンサルティングも行う。
個人としては、学生時代は光合成の研究等を行い、現在は趣味の一環として門松に関する調査・研究を行っている。
今回は、門松について、47 都道府県を周遊した成果などを踏まえお話したい。門松とはというところから始まり、コロナ禍でその文化がどう影響を受けるか、そして今後どうなるのかいうところを、「門松の過去・現在・未来」というテーマとしてお伝えする。
連絡先: salon.de.bamboo@gmail.com


大谷悠巴氏


大島大輔氏
株式会社竹定商店 新規事業開発担当
大学卒業後、実兄が事業承継した京和傘製造元(株)日吉屋に入社。新商品の販路開拓営業をメインに、事業運営全般に従事。
業務拡張に伴う東京営業所設立や運営体制構築を経て統括本部長に就任。竹傘骨の内製化を通し、竹そのものに興味を持ち、2019 年に独立。
事業運営の各種サポートを生業とする傍ら、地元和歌山県での竹林運営を意識し始める。
林内作業に必要な各種資格を取得。竹定商店の外部スタッフとなり、竹コミュニティ事業立上げをサポート。2020 年(株)竹定商店入社 以後現職。
今回は、原竹生産と部材製造を生業とする竹業界の黒子役として、コロナ禍を耐え、そして学んだ事をベースに、ウィズ&アフターコロナの竹業界でどのような役割を担おうと考えているかを発表したい。
連絡先:info@takesada-shoten.co.jp


大島大輔氏

4名のパネリスト全員はスライドによる画像や動画を用いてビジュアルに説明・提案され、会場はこうした次世代を担う若いパネリストがこのコロナ禍の中でも斬新な思考の上に活発な生き方を提案されたことに大きな感動を覚えるほどでした。

一人約15分間の発表でしたが、4名が連続して発表を終え、演壇に揃ってから、小林コメンテーターによって、さらに詳細な討論が展開されました。4名のパネリストはそれぞれ異なる竹分野の世界で活動していますが、キーワード「竹」を通して共通する視点があり、かつ互いに連携することの重要性があることを認識させられるディスカッションでした。

特に、このパネルDはコロナ時代という共通の厳しい時代での竹文化の継承と発展を論じあっているにも関わらず、意外なほど活発な生き方を提案した議論に驚きを感じました。
実は、本パネルDでは参加者の意見や質問などを対面で聞くには時間的に制約されることから、すべての参加者に「質問&感想シート」を配布しておき、パネリストの発表を終えたところで回収する方法をとりました。
このシートによる質問や感想などの収集方法は想像以上に好評で、実に27通のシートが提出されました。したがって、今回はそのうちの数点のみに対応するに留まったことから、今後の課題になりました。

以上、このパネルディスカッション「ウイズ&ポストコロナ時代における竹文化の方向は?」は、参加者に新鮮な情報と活力ある若い次世代が期待できる素晴らしい討論の場であったことを報告します。

パネリストの発表風景


熱心に聞き入る出席者