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一審破棄、「実質無罪」を勝ち取る 人道的行為と教会活動を認める 「原判決を破棄し、罰金30万円とする」 三月二五日、青柳行信さんの控訴審判決は、清田賢裁判長(坂井智裁判長の 退職に伴って代続)のこの言葉で始まった、その瞬間、歓呼の声と拍手のな か、いさ代さんのおえつがはっきり聞こえた。 前日、私は[ふるさとの家」で本田哲郎神父に、「罰金でしょうね」と言い ながら、不安な気持ちで福岡地裁に到着した、テレビカメラが私たちを待ち受 けていたので、ひょっとしたら、かなりの減刑になるのではという予感がしま した。 判決では、まず青柳さんがペルー人の就労あっせんの違法性の認識があり、 就労資格のない人がいたことも知っていたこと、寄付金ではなくあんせんの対 価的なものであったこと、最低生活を保障した憲法二五条に違反せず、原判決 に対する事実誤認も、法令適用の誤りもないと断定した。 いったい、これは何やろ。どうして罰金にしたのか、といぶかりながら、次 の言葉(「量刑不当」)に耳を傾けた。 一、青柳さんのペルー人就労斡旋の動機、目的は社会的弱者を擁護し正義を実 現するための教会活助であり、宗教的理念に基づく人道的見地から、ペルー人 らの生活安定と福祉の実現に助カする意図であると認める。 カトリック教会としても、正義を実現する見地から、貧困者など社会的弱者 の擁護を強く推進すぺきものであるとする理念を支持、信奉する教会関係者が 存在し、青柳さんもその一員である。 二、生活に困窮するペルー人の生活費や帰国費用などを調達するため就労する ことによって円滑な出国を促す効果をもたらした。青柳さんは実質的、現実的 に入管行政の遂行に貫献した。 三、アミスタドアソシアシオン名義の預金は将来、ベルー人など援助組織の運 営に備えたものである。個人資産形式で保管されていたものも、ペルー人援助 活動に当てられる可能性を多分に残す性質のものであった。 四、青柳さんは、中学校の教師として二十年余、まじめに生活してきた。利益 のみを追求する、不法あっせん業者とは一線を画し、別の評価をすべきであ り、罰金刑にすることが相当と認める。 前半で原(一審)判決を承認しながら、後半で青柳さんは正義のために働く 教会活動の一員であり、悪質業者と一線を画する人道的活動であったことを認 めた。この点、外国人支授活動に携わっている教会関係者や市民団体にとって 大変評価できるものであり、勇気を与えるものであった。 「許さない会」では、事前の話し合いで、超過滞在者とそれに関わる人々を 厳しく取り締まる法律が存在し、司法の現状から罰金なら[実質勝訴」[実質 無罪」と判断し、控訴しないことを決めていた。罰金なら教員免許法との関運 で青柳さんの身分保障−職場復帰に有利な道を開くと見ていたからである。 福岡高裁は四月八日、[懲役刑から罰金刑になった点で量刑に不満だし、情 状面(量刑不当部分)での指摘にも間題が多い」(江川功・次席検事)としな がら上告を断念した。これで、九三年九月に青柳さんが逮捕されてから、四年 七カ月ぷりに決着したことになる。坂井裁判長の良心的な判断を引き出した青 柳さんの純粋さをはじめ、弁護団の献身的な努力と弁護側証人の協カ、毎回、 傍聴席を埋めつくした支援者などの熱意の賜物ではなかったか。 しかし、青柳さんとその家族は、これで[解放される」ことがなく、「判決 磯定」を待ちこがれていたもの(「明治学園」)がいたことは、無念だ。(大 阪正平協山本保) 六年の月日を経て 青柳いさ代 「原判決を破棄する。…あっせん業者の所為とは一線を画す…」 三月二五目、この判決を聞いたときは、体中の力が抜けてレまいました。六 年前の思いがけない突然の強制捜査から始まりましたが、全国の方々のご支 援、祈り、現場での取り組みの中でこの日の判決を閾い取りました。心よりお 礼申し上げます。真っ暗な闇の中で、ひとすじの光りに包まれた感じでした。 この間、経済的にもずっと支え続けて下さいましたこと、重ねてお礼申し上げ ます。 この出来事に合わせて起こってきた、青柳の職場からの解雇問題。まだまだ これからの感もあります。が、主の道を生きてまいりたいと思います。皆様、 心よりの愛と祈りのうちに感謝をおくります。ありがとうごさいます。 支援の皆様へ 一九九三年九月八日、福岡県警が私の自宅を強制捜査し、同月二七日逮捕さ れた。一一五日間、福岡拘置所に勾留。一九九八年三月二五日、控訴審判決。 一審破棄、罰金三〇万円。「実質無罪」刑事弾圧を跳ね返す。 弁護団、「許さない会」、支授者の皆様の「血が滲む」連帯。絶え間無い「 祈り」と「抗議」の声、皆様、ひとりひとりの行動の力で、私と私の家族は「 立って」これまレた。これまでの日々、私以上に、私と私の家族のことを「自 分のこと」として心を配って「痛み」を共に担ってくださり「生命」をいただ きました。 四月二日、明治学園から「解雇決定」通知書が届く。喜びと苦しみ悲しみ、 死と復活がつづく。これからも、よろしくお願いし致します。心からの「あり がとうございます」の感謝のうちに…。 1998年4月24日 青柳行信 ------------------------------------------------ 明治学園不当解雇撤回闘争に全力集中を! 団交開催の合意 明治学園は、一九九八年三月二七日開催された中央労働委員会の再審査申立 の調査の席上において、中労委使用者側委員の説得により、これまで固執レて きた「団交出席確認文書の提出」や「交渉要員三名以内」を撤回して、ようや く五名以内の交渉要員による団体交渉に応じる旨の表明をしました。しかし、 相変わらず団交開催のための窓口の設置については従前どおり拒否し、期日の 折衝にも応じないという頑なな態度をとり続け、とりあえず第一回目だけは中 労委を介して期目を設定する、ということで合意し、後日の中労委を介しての 日程詞整により、団体交渉を四月一五目労使双方五名以内の交渉要員により開 催する合意がようやく成立しました。 私たちは、この団交開催の合意成立が第一審破棄の控訴審判決後であること を踏まえ、明治学園もこれまでの頑な対応を反省し少しは柔軟になるのではな いかと淡い期待を抱きました。 突然の解雇通知 ところが、明治学園は突然四月一〇日付けで青柳さん宅に以下の解雇通知を ファックスで送りつけてきたのです。 「さて。この度、福岡高等裁判所は、貴殿の刑事事件に対して有罪の判決を 言い渡し、判決が確定しました。これに伴い、学園の決定をご通知申し上げま す、貴殿が逮捕・勾留後、刑事訴追刑を受け、出入国管理・難民翻定法違反〈 不法就労助長罪〉という日本国の国益・公益を侵害する犯罪行為で有罪判決を 受けた事実は、著しい秩序違反行為であります。しかも、当学園の中学校教諭 をして、有罪判決に対して反省さえない貴殿の態度は、大変遺憾であり、生徒 を教え導く教育者として、その適格性を欠くものであります。また、貴殿の犯 罪行為は生徒に悪影響を与え、保護者の信頼をも失わしめ、学園は著しく名誉 ・信用を失墜しました。これによって、学園の経営上、教育上に被った損害が 多大であることは、今更、申し上げるまでもありません。 従って、学園は貴殿に対し、下記のとおり決定いたしました。 1、平成一〇年四月一一日をもって休職を解き、同日付をもって就業規則一九 条に基づき解雇とします。よって、貴殿は当学園の教職員たる地位を失ったの で、同日以降、当学園の施設構内に立ち入ることを厳禁します、…以下、略… 」 形式団交に終始 私たちは、団交開催直前に解雇通知を送り付けてくる明治学園の非常識、非 道、違法、不当な仕打ちを追及するため、四月一五日予定されていた団体交渉 に臨みましたが、学園側は、団体父渉で誠実に協議する姿勢など毛頭ありませ んでした。 学園側は、理事長はおろか理事長事務代行の鶴野校長も出席せず、柴山校長 とお馴染みの門前防衛隊であるシスター松宮及びシスター笠原の三名のみの出 席でした。私たちが「学園の意思決走権限をもつ理事長及び解雇にともなう諸 手続き等の事務的な問題があるので、事務長の出席」を求めても、「学園側の 出席者は、学園がきめること」「理事長及び事務長の出席は必要はない」とい う態度でした。内容に入っても、「すでに、解雇については学園が決定したこ とで協議の余地はない。」と繰り返すのみで、話し合いによる解決の姿勢は皆 無でした。また、私たちが、退職金規定の開示を求めても「すでに、奥様に渡 している筈」といって、規定の開示すら拒否しました。 青柳さんは、この団交の席で「解雇に合意できない」旨表明し、学園側から 一方的に振り込まれた解雇予告手当金の返却を申し入れましたが、学園側はこ の返却の申し入れを拒否しました。そこで、青柳さんは「未払い給与の一部と して仮に受け取る」旨表明し、被申請人柴山校長に右旨の仮受金領収書を手交 し、柴山校長はこの仮受金領収書を受領し、理事長に渡すことを約束した。 学園側の不誠実な対応の結果、団交終了予定時間になったため、私たちは次 回の団交の開催のための窓口の設置を求めましたが、学園側はこれを拒否し、 次回の期日設定についても「必要ない」といって、午後三時になると逃げるよ うに帰ってしまいました。 -------------------------------