■ 日本のODA(政府開発援助)で建設されたコトパンジャン・ダム。(撮影:伊藤孝司さん) |
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私たちの税金が、インドネシアの人たちを苦しめています。
1997年、日本からODA(政府開発援助)約312億円で、日本企業によってインドネシア・コトパンジャンダムが建設されました。そのため、約5000世帯、23000人の家や農地が奪われました。強制移住先は、水も手に入らないほどの不毛な土地です。農業ができなくなり、住民たちは、満足な食事もできない、子供たちは学校をやめざるをえない、などといった生活を強いられています。私たちの税金や郵便貯金などから拠出されたODAが住民のためになるどころか、逆に住民たちを苦しめているのです。 |
利権のためのダム建設−発電量は計画のたった15%
コトパンジャンダムは、インドネシア・スマトラ島中部のほぼ赤道直下にある、高さ58m堤長258mの水力発電ダムで、水没面積は124km2です。これは琵琶湖の面積のおよそ5分の1に相当する広大なものです。
完成後5年以上が経ちますが、発電量は当初計画の15%、フル稼働したのはたったの5日間です。日本とインドネシアの政治家・官僚、ゼネコン・コンサルタント会社の利権のために、架空の電力需要見込みよって建設されたダムだからです。外務省はこんなダムを「環境・人権に配慮したODAのモデルケース」と宣伝しています。 |
豊かな自然を破壊−スマトラ象、スマトラトラ、マレーバクなどが大量死
ダム建設の結果、貯水池内の樹木が腐敗して水質が悪化、魚が大量死するという問題が起きています。浅水域には、ボウフラが大量発生し、マラリアの大流行が懸念されています。水没地から追い出されたスマトラ象、スマトラトラ、マレーバクなどはエサが得られず、多くが殺されてしまいました。 |
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■ 移住地では生活が困難なため、元の村へ
戻った住民たちもいる。(撮影:伊藤孝司さん) |
日本政府・インドネシア政府を相手取って提訴。地元住民8396名と動物たちが原告
2002年9月5日、被害住民3861名は、日本政府・国際協力銀行・国際協力事業団(現在の国際協力機構)・東電設計を相手取り、ダムの撤去と損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。これは歴史上初めて日本のODAの責任を問う裁判です。さらに2003年3月28日、被害住民4535人が追加提訴を行い、原告は合計8396人となりました。これは被害住民のうちの成人の過半数です。またスマトラ象・スマトラ虎・マレーバクなどの個体群を含む自然生態系(インドネシア環境フォーラムWALHIが代表)も原告に加わったことで、この裁判には「自然の権利訴訟」と言う側面も加わりました。 |